肩を並べるなら 2
ベルシャインが立ち上がり、ベアトリスも彼の近くに移動する。分かれて行動するよりもお互いに背中を守るように連携した方がいいと考えたのだ。しかし、ベアトリスが背後に回っても、彼女の視線は今はベルシャインと同じ場所に向いている。
剣使い二人と斧使いの前に短剣使いが、短剣を手の中でくるりと回して握り直していた。ここからは奇襲をするつもりがないということなのかもしれないが、乱戦になってまた姿を消すかもしれない。さらに、影を薄くして気配を感じにくくできるということなら、複数人との戦いでは警戒しなくてはいけないだろう。警戒するだけでどうにかなるのかといわれれば、ベルシャインにもベアトリスにもそれを確実に感知できる手段はなかった。彼らはしっかりとした戦闘の訓練を受けているわけではないのだ。ベルシャインは騎士団の訓練場で、独りで剣術の訓練をしているだけであり、実戦の数はほとんどない。ベアトリスに関しては、魔法の授業を受けてはいるが、実戦の経験はない。授業以外の知識は独学で本を読み、多少検証しただけだ。つまりは、彼らは戦いに関しては不良たちの実戦経験というか、喧嘩だろうが、それでも戦闘慣れという点では彼らの方が上になるだろう。
不良たちが距離を詰めてくる。ベルシャインが両手で剣を握り、構えた。ベアトリスは魔法の詠唱をしようと思ったが、効果的な魔法を使おうと思い、すぐには魔法の詠唱を始めなかった。それは大きな隙になっていた。短剣使いが剣使いと斧使いを置いて、一瞬で距離を詰めてきた。ベルシャインに向かって、短剣二本を上から振り下ろす。雑な攻撃ではあるが、その攻撃を防がなければ、攻撃が当たってしまうため、彼は剣の面でガードした。敵は剣の面に力をかけて、自分の体をふわりと持ち上げた。そのまま空中で前転するように、彼の剣を超えた。その勢いを利用して、さらに空中で回転して、短剣をベアトリスに向けて振り下ろした。ベルシャインは驚いて対応が遅れた。そのまま攻撃を受ければ、彼女が攻撃を受けるのを防ぐことはできない。彼は焦り始めたが、そこからは彼女を守るための手段はないことも理解していた。
ベアトリスは相手の動きを冷静に見ることができていた。自分でも驚くほど冷静に、相手が近づいてきているのを見ていた。彼女は相手が剣を超えたところで、ポケットに手を入れて、ハンカチを取り出した。その行動は彼女以外には見えていないだろうが、もし見えていたなら、ここでハンカチを取り出す意味がわからなかっただろう。彼女はそれを取り出すのと同時に、掌の中でぎゅっと握った。彼女は相手が短剣を振り下ろしてくるところにハンカチの端を握り、左右にぎゅっと引っ張る。ハンカチは細長く広げられている。短剣使いはそのハンカチを短剣で切ることができる算段だったため、短剣はそのまま振り下ろされた。ベアトリスはただのハンカチで、その短剣を受け止めていた。短剣使いは何が起こっているのか理解できない。彼の予想を超える現象が目の前で起こっていたのだ。短剣をすぐにひっこめることができずに、そのまま地面に降りてしまった。ベアトリスは棒のようになった短剣を受け止めたハンカチを手に持って、短剣使いの顎のあたりを殴りつけた。女子とはいえ、彼女は本も持てない非力な女子ではない。おそらく、そこらの女子よりも力はある方だろう。その腕力で、短剣を受け止めたハンカチを握りこんで、油断しているところに衝撃を与えたのだ。相手は、瞳をゆらりと揺らして、焦点が合わなくなって、地面に膝をついた。敵は焦点が合わずとも膝をついたことに気が付いた敵が立ち上がろうとしたが、その前にベアトリスの蹴りが敵の顔面に入り、敵は鼻血を出して、後ろに倒れた。彼女のスカートがひらりと揺れて、相手は立ち上がることができなくなっていた。
彼女のハンカチが、形を維持しなくなり、ふぁさりと彼女の手にかかる。そのハンカチを軽く畳んで、ポケットにつっこんだ。今のハンカチを棒状に固めたのは超能力だ。ベルシャインは彼女の超能力を知っていたが、まさかとっさに使えるとは思っていなかった。彼女の超能力は硬度を操る能力。掌に収まるものと自身の体の硬度を自在に操ることができるもので、彼女はハンカチを握ったときに彼女の超能力の影響が出始めて、棒のようにまっすぐに伸ばして短剣を受け止めた時にはその硬度は短剣を受け止める以上の硬度になっていた。彼女は自身の体の硬度を操作しなかったのは、着ている服までは固くできないからだ。
一人、倒したが、二人が体勢を整えるような時間はなく、敵が近づいてきていた。




