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無関心は蔓延るばかり 5

 アレクサンダーは父を思い出していた。彼は幼い頃に父のような騎士になりたいと思って、父に訓練してもらっていたが、父のような剣術を覚えることができなかったのだ。そして、剣に自信がないことを父に伝えたときに言われた言葉を今、思い出していた。


「アレク、自信がないなら、俺を信じてみろ。誰に剣を習ってるのか、わかってるだろ、アレク」


 なんとも偉そうな父親だと思ったが、実際に騎士団のトップだ。


(えらい人に教わった剣術。今では、自流の剣でもあるが。それでも、根本にあるのは父から習った剣だ。父の剣術を信じればいいのを忘れていたんだな)


 彼は廊下を走りながら、剣を抜く。一階の廊下に剣先があたり、カン、カンという音が響く。その音が、周りの生徒に彼の存在を知らせて、道を開けていく。




「あーあ、大人しくしてれば、痛くしなかったかもしれないのになぁ。お前は、痛めつけられて、俺たちの道具になって、人生終わりなんだよ!」


 不良生徒の一人が言い放つ。すでにフリューは壁際に追い込まれていて、逃げる場所などなかった。相手がじりじりと近づいてくるのを見て、自身の足を少しだけ後ろに下げたが、踵が壁に当たった。既に背中に壁が触れるのを感じているため、それ以上下がれないことはわかっていたが、それでも一対五で追い詰められれば、体や足を後ろに下げようとしてしまう。壁に追い詰められても、敵は彼女に近づいていく。そして、彼の手が届く距離で、敵は彼女に手をゆっくりと近づけていく。彼女は焦りと恐怖から、魔法を使うためのイメージができない。下卑た笑い声を彼女に訊かせながら、男たちは彼女に腕に手を伸ばした。


 その手が彼女の腕を掴む寸前、不良生徒の一人が軽く声を出した。何かに驚いたかのような小さな悲鳴だ。他の不良生徒が、声のした方に視線を向けた。フリューの手を掴もうとした敵もその手が止まり、悲鳴がした方に視線を向けた。そして、フリューも視線を向ける一人となった。そこにいる全員が悲鳴が下方向に視線を向けていた。そこには一人の、剣を得構えていた男子生徒と目の前に倒れている男子生徒がいた。不良生徒もフリューも今の状況をうまく呑み込めない。片手で持つには剣身が長い剣を片手で持っている彼は猫背で倒れた相手を見下ろしていた。彼は自身に視線が集まっているのに気が付くと、視線を返す。そこには力や威圧感などなく、ただただ視線を返しているだけだった。彼が剣を持ち上げて、剣先を彼らに向けた。何も言わず、剣を持ち上げて振り下ろす。彼の近くにいた不良生徒の腕の辺りに剣先がかすり、その部分に血が滲む。


 彼の持つ剣は実は切れ味がいいわけではない。彼の剣は切る剣ではなく、叩き折る剣だ。重さも相まって、刃を鋭くするよりも、刃を落とした方が破壊力がある。だから、彼が愛用している剣には刃が着いていないのだ。だが、その剣先はとがっているため、その部分が触れれば、多少は切れはする。その部分が不良生徒の腕に掠った。スパッと切れているため、痛みはなく、多少熱を感じるだけだろう。だが、傷を認識した不良生徒は腕を抑えて痛みを抑えるようにしていた。不良生徒とは言え、

犯罪者組織のように本当に血を見たことがあるとか、人と死合ったことがあるわけではないのだ。所詮は子供の喧嘩なのだ。


「なんだ、お前。俺たちに喧嘩を――」


 不良生徒の一人が彼に不用意に近づいた。剣を持つ男子生徒の胸倉でも掴もうとしていたのか、腕を伸ばした瞬間に彼は剣先が地面に向いていた剣を斜め上に切り上げた。剣が相手の伸ばした腕を思い切り上に打ち上げる。あまりの痛みに敵は腕を抑えてしゃがみこんでしまった。目には涙を浮かべて、本島なら今にも泣き叫びたいほどの痛みを感じているのだろう。それもそのはずで、今の殴打でその生徒の腕の骨が折れたのだ。その痛みに薬もなく、実戦経験のないものが耐えられるはずもない。彼はしゃがんでいたがっている生徒の隣をゆっくりと歩いて素通りする。残り三人がようやく彼が脅威だと理解して、彼の方に向いた。フリューの腕を掴もうとしていた生徒も、彼の方に体を向けていた。


「お前が何でここにいるんだ。それに剣を振るうのをやめたって聞いたが?」


「さあな、俺自身もなんでここにいるのかは知らない。だが、剣を振るうのをやめたわけじゃなかったみたいだ。剣を手に慣らすのに少し付き合ってもらおうか!」


 彼は両手剣を片手で軽々と持ち、剣先を三人の不良生徒に向けた。彼の言葉に不良生徒たちも体を固くする。だが、不良生徒たちはこのまま引き下がることはできない。

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