無関心は蔓延るばかり 4
フリューは不良たちに苦戦していた。確かに彼女の使っている道具はかなり役には立っている。しかし、彼女はその道具を使いこなしてはいなかった。手に入れてから、十日と経過しておらず、彼女はその道具の使い方を熟知しているわけではなかった。あくまで、無尽蔵に魔法を使い続けることができるというだけで、脅威である道具だ。彼女はそれを使えば、それなりに戦えると考えていたし、その道具を今日初めて使ったわけではない。何度か試したが、無尽蔵に魔法が使えるという点にしか意識していなかったのだ。そのため、彼女は道具を使う練習はしていなかった。
「しぶてぇー! でも、そろそろ息切れだろ」
不良の一人が、大声でそんなことを言った。実際にはフリュは息切れをしているわけではないが、明らかに追い詰められている。その状況を見ているからこそ、敵は彼女に余裕を見せていた。
「……あぁ、そうだ。どうせなら命を助けてやるから、ちょっとヤらせろよ」
一人の言葉に周りの不良生徒がゲラゲラと下品な笑い声をあげた。そして、フリューはその条件をのむはずもなかった。こんな性根の腐った奴らに少しも、粒子一つも触れされるものか。そこまで自分は堕ちていない。
(ですが、決定打がありませんね。このまま、戦っていても一人で戦っている私が押し切られるかもしれませんし……)
彼女は不良生徒が下品に笑っている間に、思考を巡らせる。だが、どうしても相手に止めを刺すほどの何かが足りない。道具を使って強力な水の魔法でも使うことができればいいのだが、十日で強力な魔法をイメージできる訓練ができるはずもない。彼女には魔法の才能はない。魔法に関して、彼女は授業も基礎と初級の魔法の授業しか受けていないのだ。彼女は商家の娘で商売についても学んでいたし、審美眼も鍛えてきたはずだったが、あまりにも魅力的な性能のせいで、彼女は今使っている道具があれば戦えると考え、目が曇っていたのを自覚する。
しかし、反省だけしていてもどうしようもない。この状況を切り抜ける方法を考えなくてはいけない。ハルエラが来てくれたら、安心して戦うことができるのだが、それは自分にとって都合がよすぎるだろうか。
「おい、ついに不良たちが聖女様たちに攻撃してるって」
「あいつら、やばいな。身の程知らずすぎだろ」
男子生徒が廊下でそんなことを話していた。彼らとすれ違う者たちがその会話を聞いていたが、わざわざ不良たちと敵対して聖女たちを守るようなことはない。結局はこの国では自分を守るのは国ではなく、自分の力だ。だから、彼らは敵わない相手だと考えれば、手助けなんて自殺行為をすることはない。
しかし、それが友だとすればどうだろうか。友情はなくとも、恩という繋がりでフリューは行動を起こした。彼女と深い友情を結ぶハルエラは、彼女を助けるために敵を素早く倒した。この学園では小鳥や龍樹と縁が結ばれた人は少ない。そして、その二人の男子生徒の雑談を聞いていた、彼らと縁が作られた生徒が一人。彼らの言葉を聞くと同時に、その生徒の中で自身の友人が頭に思い浮かぶ。そして、自分を倒したあの男の顔も思い浮かんだ。
彼は落ち込んでいたはずだった。だが、思考の中に焦りが生まれ、自分が言ってもどうすることもできない。どうせ、自分を倒した男がどうにかするだろう。そう思っているはずなのに、そわそわしていた。焦りから勝手に体が動き出す。思考は体に追いつかないまま、自分がどうせ力になれないと思いながらも、どうしても彼の元に行かなくてはいけない気がしていた。
アレクサンダーは廊下を走る。戦うつもりもなく、訓練すらサポっていた彼だが、腰にはいつも剣が収まっていた。龍樹と戦ったあの日以降、剣を抜いたことはない。剣を腰に括り付けるのもやめようかと思ったが、それでは落ち着かなかった。それだけ剣と共にあったことがわかったが、負け犬の自分でも剣を持つだけは許してほしいと誰かに願いながら、毎日腰に括り付けていた。
廊下を取っていると、少女が不良生徒五人に襲われているのを見つけた。水の魔法を使っているようだが、致命傷を与えているわけではなく、明らかに少しずつ少女が押されている。五人を相手に一人で勝てるわけがないと、彼はそう思った。
(あれは、さすがに見逃せないか。女子を男子で囲むなんて、卑劣なことは許せないから)
それは、彼が両親から子供のころから教えられてきたことだった。騎士に憧れる前から、自ら人を助けるようにと言われてきたのだ。彼の正義感があまりに強いのは、その教えが彼の根本にあり、自身の正しさを信じてきたからだった。思い込みが激しいともいえるその性質のせいで、龍樹と喧嘩になった。
(どれだけ、落ち込んでいても。役に立たないと思っていても。ああいうのは見過ごせないか……)




