無関心は蔓延るばかり 2
「ちょっと待ってもらおうか」
フリューはその声と共に、その日が来たのだと理解した。それを理解した理由は、明らかに不良生徒とわかる人たちが自分の周りに出てきたからだ。その数は五人。もし、囲まれているのが龍樹だとすれば、その数は大した数ではなかっただろう。だが、フリューであれば、二人でも相手にするには大変な数だ。それを上回る五人を相手にしなくてはいけない。
「いつものことですが、寄ってたかって、一人相手に大人数。少しは遠慮なさってほしいものですね」
彼女は自身のピンチを自覚していても、落ち着いていた。今、彼女は一人だ。ハルエラとは違う授業に出ていて、彼女の助けを期待することはできないだろう。もし来るとしても、時間が経ってからになる。
「いつ来るのかと思い、ずっと準備をしておりました。私はストルエン家の娘です。それが何を意味するのか、貴方たちでもわかるでしょう?」
彼女はポケットに手を入れた。手をポケットから出すと、その手には何かが握られていた。それは小さな水色の棒に見えた。しかし、それは棒状の透明な入れ物に水色の何かが入っている。フリュー以外はそれが何かはわからない。
彼女はそれの中に自身の魔気を流し込む。すると、彼女の魔気に反応して、淡く光った。そして、彼女の周りには水の球が、いくつも現れていた。彼女は持っている物は使用者の魔気に反応して、水の魔法を際限なく使用できるというものであった。それがどれだけ強力なのかはこの世界に住む人ならすぐに理解できただろう。イメージ通りの魔法を使えなくとも、魔法をどれだけ使用しても自身の死に直結しないというのは、この世界ではありえないことだった。その常識を打ち破るその道具はもちろん、この世界には二つとないものだ。彼女はそれを両親からレンタルしたのだった。
「はっ。その程度の水の魔法がどうした? オラ! やっちまおうぜ!」
彼女の持つ道具の効力を知っているわけもない不良たちは彼女に向かって駆け出していた。
「悪いね。あんたをあのお嬢さんのところにやるわけにはいかないのさ」
彼女の前に不良女子生徒が立っていた。その数はフリューを攻撃している数と同じ五人。彼女の言葉でフリューが攻撃されていることを今の言葉で知り、彼女の表情に心配と焦りが浮かんだ。額にジワリと嫌な汗が浮かぶのを感じ、それに引っ張られるようにフリューがいじめられている様子が浮かんでしまうが、彼女はそんな簡単にやられる人ではないことは知っている。つまりは、すぐに助けに行けば、まだ助けられる可能性が高いということだ。彼女は不良女子を無視して、フリューがいるであろう場所に駆け出そうとした。しかし、不良生徒は五人いて、彼女を囲んでいるのだ。
「だから、行かせないって言ってんじゃん! ここで大人しくしてんなら、あんたには手を出したりしない。それは約束するよ。でも、あんたが少しでも抵抗するなら、あんたにも痛い目にあってもらわないといけなくなるな」
不良女子は慈悲でも見せたかったのか、そんなことを言っているが、ハルエラにその言葉は既に届かない。彼女は相手の言葉を聞き終わる前に、戦闘を開始していた。彼女は不良の一人に走って距離を詰め、すぐに一人との距離を縮めた。近づかれた不良生徒は、彼女の勢いに不意を突かれて、思わず後ろに重心を下げた。その隙を見逃さず、彼女は相手の体に体当たりした。重心が後ろにある状態で、正面から体でぶつかられた生徒は当たり前のように後ろに倒れた。
「土よ。クレイバインド」
彼女はそう呟くと、倒れた相手の体に土が巻き付く。だが、ただの土だと不良生徒はもがいて、抜けようとした。相手のあがきによって、土は崩れ、拘束が解けようとした。だが、すぐにその土が冷たく硬くなった。感触も土のものではなくなっていた。相手を拘束しているのは土だったはずなのに、いつの間にか金属になっていたのだ。
「なんだこれ」
それは彼女の強力な超能力だ。使用者を問わず、魔法で操ったり、出現させたものを他の物質に変換する力。魔法から物質に変換するという性質上、注入された魔気とは関係なく、壊されるまで存在し続ける。その代わり、物質にしたものは魔気でのコントロールはできなくなってしまう。だが、そのデメリットを考えても、明らかに強力な超能力だった。
不良生徒が混乱している間に、他の不良生徒が我に返り、ハルエラに向かっていく。男子の不良生徒とは違い、女子生徒は魔法を使用する。彼女に向けて、魔法を詠唱して魔法を放つ。しかし、彼女にそれが届くことはない。彼女に向けて放たれた魔法は全て、彼女に届く前に風に変換されていた。彼女にと到達するときには彼女の髪や服を揺らすだけのそよ風になっていた。




