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悪と正義は入り込む 1

 一瞬で終わったアレクサンダーとの試合。決着が着くと同時に、教師が入ってきて、倒れた彼の容態を見る。彼は最大限、彼を気絶させるだけにしようと魔法を使った。それは彼にとっては難しいことではなかったのだ。その場を支配して、環境が味方に付いている状態であれば、相手を傷つけずに気絶させるだけという魔法も使うことができた。風の魔気を使って、衝撃波を作る。体にそれをぶつけながら、対象が気絶した理由は、風の魔気の圧の大きな変化であった。衝撃波が体に当てると同時に、風の魔気を相手の体から遠ざけたのだ。風の魔気は、彼が元の世界の科学の空気と似ている部分が多くある。その性質がこの世界にも適応されているのかは、今でもわからないが、風の魔気を遠ざけたのは正解だったかもしれない。


 この世界の人々は魔気が体を流れて、それが体を動かすエネルギーの一つになっている。生物はどの魔気が欠けても生きていけないのだ。風の魔気が一瞬、体に取り込めなくなった彼は体が一瞬で酸欠のような状態になり、気絶したのだ。そして、魔気は全ての空間に平等にあろうとする作用で、すぐに魔気は元に戻った。だから、アレクサンダーは気絶で済んだのだ。そのまま、魔気がない場所に止まり続けていれば、彼は死んでいただろう。


 勝負が終わった後、彼は小鳥の方へと歩いていく。そこにはベルシャインやベアトリス、ファベルもいた。この勝負の結果にベルシャインとファベルは心底安心していた。誰の死なないという決着が着いたのだ。さらにどちらも大怪我をしていない。これは、一番望んでいた結果だ。ファベルも同じ理由で安心していた。ベアトリスはこの結果を信じ切っていたようで、安堵ではなく、彼の勝利を喜んでいた。


 そして、小鳥は彼の勝利を信じていたし、彼が本当に勝ったことにも喜んでいた。


「お兄ちゃんはやっぱり凄いね!」


 彼女がそういいながら、抱き着いてくる。彼は片足を後ろに出して、倒れそうになるのを防いでいた。そして、彼女の背中側に手をまわして、彼女が自分から手を放しても勢いよく落ちないように軽く力を込めた。小鳥は彼が自分を優しく抱き留めてくれたことが嬉しくて、笑ってしまった。


「そんなに、俺が勝ったのが嬉しかったのか? 小鳥が嬉しそうだと、俺も嬉しいよ」


 彼は小鳥以外にはしない、優しい笑みで彼女に笑いかけた。小鳥はその顔に少し照れているが、それでも彼らか視線を逸らすことはなかった。そして、彼は小鳥を優しく地面に降ろす。


「さすがですわね。小鳥の義兄なのだから、これくらいは当然なのかもしれませんが、ご苦労様でしたわ!」


 ベアトリスは彼の近くに来て、そういった。上から目線の言葉でも、龍樹は気にしていない。彼女が褒めていようが、貶していようが、彼は自分には関係ないのだ、彼の行動原理は単純で、小鳥がどう感じるかだけだった。


「ここにいても、しょうがない。もう行こう」


 珍しく龍樹がそういって、訓練棟から離れていった。




「あらあら、かわいい顔が台無しよ。どうしたの、暗い顔して」


「あ、フェナーシャさん」


 背の高い桃色髪の女子生徒が、背の小さな幼い顔をした男子生徒にそう声をかけた。


「フェナーシャさんなんて、他人行儀な呼び方しないで? いつもみたいに呼んでいいのよ?」


「ふぇ、フェナねぇ。少し気になる噂があって。最近、王子様と一緒に来た編入生が、いろいろやってくれてるみたいなんだけど、少しやりすぎかなって。魔法を自在に操って、犯罪者組織を壊滅させて、ストルエン家の令嬢を助けて、騎士志望筆頭との決闘に勝った、なんて、少し名を売りすぎてると思うんだけど」


「ペトリスは、変なことを考えているのね。ああ、悩んでいる顔もかわいいわ!」


 フェナーシャは、ペトリスの頭に手をやって優しく撫でる。彼女の口の端からよだれが垂れそうになっているが、ペトリスは大して気にしていない。


「それで、その人たちをどうしたらいいのかしら?」


「わかんない。僕の味方になるかどうかもわからないし、敵じゃないかもしれないし。ただ、最近目立ってるなって思っただけ」


「そうなの。……大丈夫よ。ペトリスは可愛いから、きっとその人たちが敵になるわけないわ。かわいいに勝ることなんてないからね」


「うん。それにフェナ姉たちもいるし。心強いよ」


「もう、かわいいわぁ。ほんと、なでなでしちゃう!」


 彼女はペトリスをぎゅっと抱いて、彼を豊かな胸に押し付ける。さすがにペトリスも恥ずかしく、顔を赤く染めていたが、彼女の腕から抜け出すことはしなかった。そして、彼らが騒いでいると、他の女子生徒も集まってくる。集まってくる生徒は全員が、見た目はフェナーシャとは違うのだが、似たような姉のような雰囲気を持っていた。

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