悪ぶる奴はどこにでもいる 1
ストルエン家と知りながら、彼女に脅迫じみたことをしていた集団は、当たり前だが、あまり頭がいいわけではない。そして、ストルエン家のフリューに対して、不躾な態度を取るということは、他の王族や権力のある者に対しても、関係なく詰め寄るような集団だ。そして、彼らは聖女の付き人のしたことの噂が気に食わなかった。
「なぁ、あいつら気に食わねぇんだけど。ちょっとやっちまおうぜ。痛い目見して、やるぜ!」
「ちょっと落ち着きなさいよ。そんな勢いでやったって、意味ないって。それでやられたんでしょ?」
「馬鹿なんだよ、こいつ」
人気の少ない学園の敷地の中では治安の悪い方である場所で、頭の悪そうな学生がそこにたむろしていた。毎日、授業も受けずにくだらないことに時間を費やして、人生の時間を無駄にしている集団。どこに世界にもどんな場所にも一定以上はいるようなそんな不良集団。授業も受けていないのだから、まともに魔法を使うこともできず、喧嘩をするにしても、格闘術を習っているわけでもない男子たちは町で仕入れた刃物を持っていたり、格闘術をしている人のまねをするだけのなんちゃって格闘術で喧嘩を売るような人たちだ。
しかしながら、仲間のことは信頼しているし、他の一般の生徒に比べて、その友情は厚い。その力をもっといい方向に使うことができれば、彼らはこの国でも活躍できそうなものだが、彼らにその気は全くない。ちなみに、彼らをこの場所に入学させている人たちは犯罪者ではなく、この国でまっとうに働いている人たちだ。犯罪者集団の手の者はこういったすぐに注意されるようなことは基本的にはしないのだ。
「馬鹿ってなんだよ、ふざけんな。ってかよ、聖女を人質にして、あいつ殴ればよくね」
「馬鹿のくせに頭いいじゃん。で、どうやって攫うんだよ」
彼には皮肉は通じず、彼はそこにいる五人にひそひそと小さな声で、作戦を告げた。その作戦は、龍樹や小鳥、ベルシャインにベアトリス、ファベルには通用することはないような杜撰な計画だった。しかし、馬鹿どもが集まれば、その作戦に皆がいいねと賛同する。
要するに、馬鹿なのは全員だった。
作戦の決行はその日の放課後だ。わざわざ五人全員が揃っているところでやるというのだから、かなり頭の悪い作戦だろう。そして、まずは一人が遠くで、騒ぎを起こす。それを確認するために人が一人減る。そして、それを繰り返して、聖女が一人になったところで攫う。そんな作戦だ。だが、彼らが騒ぎを起こしたところで、誰もその場所に動くものは一人もいなかった。作戦が失敗に終わり、作戦を考えた、一番の馬鹿な男が激高する。そして、作戦も無視して、龍樹の前に出た。彼をとめるために前に出た他の者も彼の前に出てしまえば、彼に敵意を向けていた。
「お前、俺のこと、覚えてねぇとはいわねぇよな!」
龍樹の前に立って、そういったが、龍樹は思い出そうともしない。それよりも、今は彼らの怒声が小鳥を怖がらせていることが問題だった。
「うるさい奴だ。さっさとどこかに消えろ。小鳥の視界に入るな、小鳥に声を聴かせるな」
その態度は彼を怒らせる。さらに彼は詰め寄ろうとしたのだが、それをベルシャインに止められた。それがさらに彼をイラつかせる。
「おうじさまぁ、邪魔だ、どけよ!」
彼はベルシャインを突飛ばそうとしたのだが、その腕が彼に触れることはなかった。彼の手は男子生徒によって止められていた。
「こんなところで喧嘩か。俺がいくらでも相手になってやるが、どうする?」
その男子生徒は、無理やり不良を振り向かせて、睨みを聞かせてそういった。その顔を見た瞬間、不良たちの目には恐怖が浮かんでいた。そして、何も言わずにその場を去っていった。
「ベルシャイン王子、大丈夫でしたか」
赤色の髪に、髪より赤い朱色の瞳。切れ長の目は、怖いと感じるほどだ。身長も龍樹と同等か少し高いくらい。見た目にはベルシャインと同じくらいの体格に見える。その切れ長の瞳がベルシャインに向けられたかと思うと、次には小鳥と龍樹の方へと向いた。中々、圧を感じる目ではあるが、龍樹はその視線に敵意は感じなかった。小鳥は既に視線を下に下げていた。相手の足の辺りを見るのが精一杯で、それは彼が怖いからではなく、単純に男性と目を合わせることができないからだ。
彼は目を閉じると、その場に膝をついて、小鳥の前に跪いた。
「お初にお目にかかります。俺はアレクサンダー・ペトロと申します。騎士を目指しております故、以後、お見知り置きを」
「彼はこの国の騎士団の隊長の息子なんだ。剣の実力も申し分なしで、剣の才能がある。二人のことも守ってくれることになると思うから、彼のことは覚えていてほしい」
アレクサンダーは顔を上げると、龍樹と目を合わせた。跪いていたのは小鳥にだけで、龍樹にではなかった。その瞳に敵意のようなものが含まれていた。




