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どこにでもそれはあって 1

 少しアクシデントもあったが、中級の魔法の授業は滞りなく終わった。終わればすぐにファベルが迎えに来る。迎えに来るというか、授業は受けずともすぐに二人を助けられる位置にいるのだ。小鳥はそういうことは知らないというか、知ろうとしない。反対に龍樹は小鳥に危害を加えるようなものがいないかと、あたりを警戒しているため、彼女には気が付いていた。龍樹はある程度はファベルのことを信用しているため、彼女が隠れていることはあまり気にしていない。


「それでは――」


 行きましょうかとファベルが続けようとしたところで、彼女は何かに気が付いたようだった。


「あの、すみません。先ほどはもらってありがとうございました。その、本当に」


 小鳥以外の人をあまり覚える気のない彼であっても、さすがに先ほどの相手を忘れるようなことはなかった。


「気にするなといったはずだが」


「いや、その、それでも、何かお礼みたいな、何かありませんか」


「……必要ないな。とにかく、俺のためにやったことだ。感謝するのは勝手だが、それを俺に押し付けないでくれ」


 彼は女子生徒がイラつくように言葉を選んで、答えた。女子生徒は一瞬、顔をゆがめたが、すぐにその意図を理解したのか、それともイラっとしたからなのか、すぐに頭を下げて、校舎方へと歩いて行った。


「お兄ちゃん、いいの?」


「まぁ、よくないと思うけど、仕方ないよ」


「んー、そっか」


 小鳥は特に何も考えていない風な返事をした。彼女は龍樹の手を引いて、ファベルの腕に自身の腕を絡めて、校舎の方へと移動していく。ファベルは少し困ったような顔をしているが、嫌そうではなく、むしろ嬉しそうにしていた。




 学園の授業も終わり放課後になった。学園内には、龍樹たちのいた世界のような形の部活は存在しない。同じ趣味の人たちが集まったり、同じものを志す者が集まったりして活動しているようだが、正式な部活のような活動ではない。龍樹の知っている言葉の中ではサークル活動というのが、一番近いだろう。だから、龍樹も小鳥も放課後になればやることはなくなる。ベルシャイン、ベアトリスと合流して図書館に行ったり、他の施設を見たりして過ごしていた。放課後になれば、ベアトリスは小鳥と手を繋いで行動していた。その様子をベルシャインと龍樹が微笑ましい目で見ている。そして、その集団をやはり他の生徒が遠目から見ている。


 図書館で過ごしているい間に、下校時刻となる。この学園でも夕暮れになれば、校舎に残ることができないようになっており、ベルシャインやベアトリスであろうともその規則を破って学園内にいることはできない。


 夕暮れの中を五人で歩いていく。王宮へは学園からすぐに行けるようになっている。正確には町の中のようなレンガや石が並べられたような道はないが、あぜ道のようなものが王宮から直接伸びているのだ。彼らはそこを通って、王宮へと戻った。


 そのまま、ファベルを除く四人は食事を取り、自室に戻る。それが学園が始まってからの彼らの日常になっていた。ベルシャインは最初ほどではないにしても、龍樹と接するときは緊張している。ベアトリスはいつでも大声を出しているわけではないということもわかった。というか、基本的には大人しいというか、お淑やかというべきだろうか。しかし、最初に会った時の騒がしさがないというわけではなく、昼食時にはうるさくしゃべっているときもあった。


「お兄ちゃん、明日も学校あるよね」


 ベッドに寝転がりながら、彼女はそんなことを訊いた。



「ああ、あるな。どうかしたか? 行きたくなくなったとか」


「ううん、逆。元の世界にいたときは学校なっていきたくなかったなって思って。でも、今はベアトリスもいるし、お兄ちゃんとも一緒だし、楽しいなって」


「そっか。それならよかった」


 彼女が学園に行きたくないといえば、彼は王様にでも掛け合って、学園へ行かないようにしようと考えていた。しかし、彼の目から見ても、彼女は楽しそうだったので、そんなことはないとは思っていたが、もしかしたらそう思っている可能性は少なくはなかった。彼女は元の世界でも楽しくなくとも楽しくしているように見えるようにしていた。特に学校ではそうしていていたようだ。だから、今回もそう思っているのかと思ったのだ。だが、やはり彼女は学園生活を楽しんでいるようで安心した。


 小鳥は奇異の視線には慣れたのか、最初の頃より学園生活を楽しんでいるように見えた。しかし、悪意の視線には気が付いていないようだ。彼女に攻撃が来る前に何とかしてやりたいとは思うのだが、ただ敵意を持っているというだけで人を攻撃していては、きりがないのだ。それくらいは元の世界で学習していた。

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