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魔法の実技 4

 龍樹と小鳥は、魔法の実技の授業を中心に講義を受けていた。座学はほとんどなく、座学で知ることができる知識なら、図書館でも独学でえることができると考えていた。実技となれば、独学で学ぶというのは難しい。特に魔法は彼らの世界にはなかったものだ。この世界の常識が彼らにはないといっていいだろう。そういう理由はなくはないが、二人の中で魔法を習う一番の理由は単純に憧れだったからだ。


 そして、今日も二人は魔法の中級の授業に出ていた。前の初歩の二つ先の授業になる。初歩の次は初級、中級、上級とあり、その上から、各属性の授業がある。龍樹の実力であれば、上級や各属性の授業に出てもいいのだが、彼にとっては自分のことより小鳥のことが優先される。そのため、彼女に合わせて中級の授業に出ている。


 何度か中級の授業に出て、二人に奇異の視線を向ける者も少なくなっていた。関わらなければ、被害はないとかんがえていれば、彼らに悪口や危害を加えるようなことを言う者は一人もいなかった。視線が少なくなっているからこそ、自分に向いている視線が奇異のものではなく、敵意から視線をぶつけてきている人がいるのもわかっていた。この授業の中にも一人、こっそりと視界の端に二人を捕らえて、見てきている者がいた。見た目には周りの生徒と変わらないようにも見えるが、犯罪者に関わりのある者でないとは言い切れない。


「お兄ちゃん! 私もこれくらいできるようになったよ!」


 彼女は中級魔法用の的を狙って、魔法を詠唱していた。龍樹は超能力があるため、彼の魔法の扱い方と比べても意味はないが、彼女の上達ぶりには目を見張るものがあった。彼女の魔法をうまく使っており、既に上級の授業を受けてもついていけるだけの実力があった。


 イメージして魔法が発動できるとなれば、龍樹や小鳥がいた世界から着た者たちの方が有利であることは間違いない。想像するためには、想像の元となるものが現実に必要になる。つまりは、火を見たことのない人は火を想像することができないというわけだ。だが、反対に様々なものを見たことがあるとなれば、その想像の幅は広がっていく。小鳥の中にある記憶には、この世界で生きている人以上に想像するための材料が入っているというわけだ。となれば、中級だろうが上級だろうが、イメージするという点だけで考えれば、簡単なことではあった。彼女が知るべきは各魔気がどのような特性を持っているかだろう。それがわかれば、イメージからどの魔気が必要か考えることができ、それができれば、理論上は魔気の特性の中ではあるが、どんな魔法でも使うことができるという話になるだろう。


 龍樹は義妹の実力を考えながらも、小鳥のかわいくはしゃぐ姿を見て癒されていた。


「なっ、くっ」


 龍樹の耳にはそんな声がいきなり聞こえた。その方に注意を向けると、女子生徒の一人が魔法を失敗したようで爆発しようとしていた。しかし、二つ目の魔法使って、その失敗で暴発しようとしている魔法を抑え込もうとしているようだが、焦ってその魔法も不安定になっていた。彼の目から見てもそれは一目瞭然でわかることだが、彼女の方を見ていなければ、それに気が付けるはずもない。教師は他の者に教えているし、彼女の友達のような者も近くにはいない。


 不安定で失敗した魔法がどのような結果を招くのかを龍樹は知らないが、大方爆発したり、あたりに衝撃波が広がるようなものだと予想した。だとすれば、その被害が小鳥に行く可能性もあるかもしれないと思えば、既に彼の体は動いていた。


 彼は女子生徒の方へと歩いていく。彼が移動したのを見て、小鳥もその背中に着いていく。女子生徒は二人が近づいてくるのが視界に入り、さらに焦っていた。そんな彼女に声もかけずに風の魔法で彼女の前にある魔気の塊をかき消した。不安定に見えたからこそ、風の魔気で魔法に込められた魔気を分散させたのだ。その魔法を安定した魔法にぶつけても意味はないだろうが、安定していない魔法となれば簡単にかき消すことができた。目の前で起きたことに彼女はついていけていなかった。自分の魔法が目の前で消滅したのだ。しかし、すぐにはっとして、龍樹の顔を見上げた。


「あ、ありがとう、ございます。すす、すみません、お手を、煩わせてしまって……」


 彼女はどんな処罰になるのか、と思いながら、びくびくと肩を震わせていた。


「いや、気にするな。俺のためにやったことだ」


 龍樹はそれだけ言うと、その場から離れて、再び先ほどの的のある位置に戻っていった。


 残された女子生徒は緊張が解けて、その場にぺたんと座ってしまった。今、起きた全てのことに理解が追いついていないのだ。

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