魔法の実技 3
小鳥と龍樹の実力は学園にいるほとんどの人が知っていた。そして、その中には小鳥が聖女様としてこの世界に召喚されたのではないかという噂も生まれていた。ベルシャインとベアトリスに守られていて、この国の人のようには見えない見た目。伝承の中では、聖女の付き人は何かに長けているというものもある。そして、この世界の誰も勝てないほどの魔法を使いこなしている点で、龍樹が付き人であると考えるのも不思議ではないだろう。
そして、この学園も完全に安全な場所とは言えない。いえるわけがなかった。市民の暮らす街が犯罪者組織が蔓延っているのだから、学園にその手が伸びていないはずがない。この学園への入学は身元がはっきりしていて犯罪の履歴がないことである。最後の面接で、その人格に問題がないかを見る。それで、あとは簡単に入学できるのだ。犯罪者であっても、それを隠して入るのは難しくないのだ。犯罪もばれていなければ、その履歴に残らない。面接もその時だけいい子の答えを返していれば、それで合格。学園の教師の中にすら、犯罪者の息のかかったものがいるのだから、面接ですらその意味をなしていないこともある。そうなれば、生徒として犯罪者を学園内に入れることも難しくはない。
学園内の犯罪者組織の息のかかったものは既に、聖女である小鳥たちがどこにいて、何をしているのかを把握してしまっていた。学園内の聖女様がいるという噂は彼らにとっては真実だということはわかっている。そして、犯罪者にとって、聖女とその付き人は絶対に排除しなくてはいけないものなのだ。
「聖女の血があれば、邪神も生き返るって言ってたけど、どうするかな」
「なになに? どうしたのバル~?」
「何ぶつぶつ言ってんの?」
「いっつもなんか考えているよねぇ~」
女子生徒を侍らせたベルシャインや龍樹よりは格好良くないはずの男子が聖女を攫うためにどうしたらいいかと考えていた。彼は、ギブラッドのメンバー。
「いや、別にね、どうでもいいことさ。そういえば、なんか編入してきたやつがいるって聞いたんだけど、何か知らない? なんか、凄い目立ってるみたいなんだけど」
彼の周りにいる女子生徒はそれぞれ何かを考えるような仕草をしていたが、特に何も考えてはいなかった。そして、彼もそれを理解していた。だから、特に彼女たちが有益な答えを出すとは思っていない。どうせ、殺すだけなのだ。彼女たちに思い入れも何もない。ただただ一緒に過ごしているだけだ。
「噂では聖女って言われてるよねぇ。あとは付き人の男に人はめちゃ強いらしいよ~」
彼もそれは知っているが、知っていることは告げずに、彼女の言葉に優しくそっかぁと返して、頭を撫でてやった。それが他の女子生徒が羨ましそうに見ているのを察して、他の者の頭も撫でてやった。それだけで、彼は自身の周りの女子との関係を維持ている。彼女たちも本気で好かれていると思っているわけではないからこそ、彼の女好きを受け入れているわけだ。要は今をの楽しく生きていたいだけだった。
「とりあえずは、情報が集まるまでは、放っておくか……。文句言われてから動くことにしよう」
彼の独り言は日常の中に溶けていて、周りに女子生徒は何も言わない。彼が何か考えてい、何かしようとしているのはわかるが、自分たちは彼の考え事に関係ないと思っているのだ。だから、最初から彼が何を考えていようが関係なかった。
「聖女様、ね。それって本当?」
「あくまで噂。本当に編入組がそうだって証拠はないよ。だけど、その能力はかなり高いみたいだし、信憑性はありそうだって話」
男子生徒が二人、剣を軽く素振りしながら、そんな話をしていた。片方は剣を振るってもぶれることがないほど、剣の扱いに慣れているが、もう一人の聖女の話をした人は剣を振り上げるときにかなりぶれていた。
「なるほど。まぁ、あんまり近づきたくはないよね。面倒くさそうだし」
「それもそうだな。俺たちはあくまで噂っていいながら楽しむ方がいいからな」
「……そこ二人、喋る余裕があるなら、もっと体動かせ!」
その講義を行っていた教師が彼らを失跡して、二人はさらにまじめに武器を振るった。
小鳥たちが学園に編入して、しばらく、二人も学園に慣れ始め、既にベルシャインやベアトリスとは別の授業を受けていた。授業以外では一緒にいることが多いが、それ以外では離れることも多くなった。しかし、ベアトリスが小鳥と一緒にいたいと考えていることが多く、五人全員が揃わなくとも小鳥と龍樹と誰かというような行動の仕方をしていた。小鳥と龍樹が二人きりという状況には中々ならず、彼らに手を出せるものはいなかったのだ。




