表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/179

魔法の実技 1

 午後の授業も座学がほとんどだったが、この日最後の授業は実技の授業だった。それも魔法の基礎の授業だ。まだ、専門の属性を学ぶことができる知識がない人たちが受ける講義ではあるが、この授業には入学して三年や四年でも受ける人も少なくはない。ちなみに、この学園には最大で十二年いることができる。その後には学園を卒業した証のバッチをもらって卒業となる。


「では、魔法の、初歩の知識の講義を始めます」


 この授業の講師はセレナル先生ではなかった。実は龍樹や小鳥たちはこの授業を受ける必要がなかった。龍樹や小鳥はセレナルに魔法の基礎をすでに教わっているし、ベルシャインやベアトリスは既に受けた講義。ファベルに関してはこの学園にいる間に受けた講義である。しかし、実技の授業がどのようなものが知るには最適な授業だった。強力な魔法も使わなければ、魔法を失敗しても大きな被害が出ることもない。教師も初歩ということで、難しいことするわけでもない。簡単に火や水、風や土を起こすのが基本だ。


 学園の外、的が十ほど横に並べられた一角があり、教師が十分ほど話したのち、その場所に生徒たちは連れてこられていた。


「それでは、各属性を出現させて魔法を的に当ててください。うまくいかない人は無理に魔法を使わないように。また、体に不調があるものは魔法を使うのをやめてください。先ほどの言いましたが、体内の魔気を消費して魔法は使われます。人は体内の魔気がなくなれば、死に至る。不調の状態で、魔気が消費されれば、その不調が悪化する可能性が高いのです。魔法を使う機会はこれっきりではありません。講義外でもお教えしますから、無理は禁物です。いいですね」


 生徒たちは教師の話をあまり聞いていない。すでに掌の上で火や水、土や風を起こしている。最初は数名が的を狙って魔法を使っているだけだが、徐々にその人数が増えていく。その様子を龍樹たちはただただ見つめていた。


「お二人には退屈な授業でしたね。すでに魔法を使いこなしている龍樹には必要のないことでした」


「いや、大丈夫だ。しかし、この年になるまで魔法を使わないというのは少し不思議だな。子供のころなら、魔法を連発して死にかけるくらいはありそうだが」


「そうですね。今でもそういうことはよく起きています。ここで学んでいる人はそういう経験があって、魔法を怖がって使ってこなかった人たちです。魔法は苦手でも、使わないとこの世界では生きてはいけませんから」


 確かに魔法は全員が使えるという前提であらゆるものが作られるということだ。龍樹の世界にも全員が使えるという前提で作られているシステムが沢山あった。それの知識が少しあれば簡単に使えるが、少しもそれを知らなければ全く使うことができないのだ。それを考えれば、この世界で魔法を最初に学ぶことができたのはよかったことだろうか。


「お兄ちゃん。私も的に当ててみたい」


「ああ、わかった。じゃあ、並ぼう」


 龍樹と小鳥が動くと他の三人も一緒に動く。そして、注目されやすい五人が動けば、周りの視線が動く。彼らが的に魔法を使うために移動しているのは他の生徒も簡単に気が付くことで、面倒事に巻き込まれたくない生徒たちは彼らのために道を開けて、順番を譲った。そのまま他の列のそそくさと移動して、彼らを避ける。


「……?」


 小鳥以外は今移動した生徒がどういうことを考えているのかある程度は理解していた。しかし、それに何か言うことはなく、小鳥を的の前に移動させた。


「水よ。アクアボールっ!」


 彼女が魔法名を唱えると、彼女の前に水の球が出現した。それは真っすぐ的に向かって進んだ。彼女のイメージ通りに的の中央にヒットする。龍樹のように魔法を使いこなしているわけではないが、彼女も魔法をしっかりと使えていた。まだまだ、強い魔法が使えるほどの実力はないが、魔法への興味がある限りはその技術は上達するだろう。


「お、小鳥、凄いな。ちゃんと的に当たったな」


 龍樹は彼女の頭にポンと手を置いた。彼女は褒められて、嬉しそうにしていた。


「お兄ちゃんもやって、やって!」


 小鳥がはしゃいで、龍樹にも的当てを頼んだ。彼は小鳥に頼まれれば、何でもするため、彼も的の前に立った。彼は掌を的の方へと向けて、掌よりも少し小さな土の塊が出現した。それを的にぶつけた。的からはバンっというような音がしただけで、的を破壊することはなかった。それを他の生徒が見ていた。


「なんだ、あれ。王子様と一緒にいる割には、魔法は初心者だね」


「あれで、注目集めて、恥ずかしくないのかな」


 そこかしこで、彼を馬鹿にするようなことを小さな声で話していた。しかし、その声は彼らにも届いていた。ベルシャインは周りを睨んでいたし、ベアトリスに至っては今にも走りだして、全員に危害を加えようとしているように見えた。そして、さすがに小鳥も声が聞こえてしまえば、どういう意味で何を言われているのかわかっていた。そして、龍樹の本気の魔法を見たことはないが、セレナルの魔法の実技を見ていれば、今の実力があの程度ではないことは理解していた。そして、何より、自慢の義兄が馬鹿にされていることが気に食わなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ