学園に行けるのか? 3
そして、いよいよ小鳥と龍樹が学園へ行くことになった。小鳥と龍樹には学園の制服が支給されて、二人ともそれを着ていた。二人の元の世界の時から着ていた制服よりも派手な制服で、二人にとってはそれがコスプレに見えて仕方ない。この学園であれば、その制服が普通なのかもしれないが、彼らの自分の持っている感覚は変えられない。二人は少しばかり、恥ずかしさを感じながらも、元の世界では絶対にしないコスプレに小鳥は舞い上がっている。
「お兄ちゃん、これ、かわいいね」
「あー、そうだな。小鳥は似合ってるけど、それにはあんまりな。コスプレに見えて仕方ない」
龍樹に関しては今までの落ち着いた色の制服の方が似合っていたが、学園にはそれを着ていけと言われて、拒否することはできない。学園に通うのに制服を着るということ自体には抵抗はないどころか、制服でないと落ち着かない。
「えー、お兄ちゃんも似合ってるよ。格好いいもん」
「そうか、ありがとな」
彼は自分にその制服が似合ってないという自覚はあるが、小鳥がほめてくれたのだから、それを否定することはしない。
二人がそうして支度をしていると、部屋の扉がノックされた。
「ご準備いただけたでしょうか? そろそろ学園に行く時間です」
ファベルの声がして、そんな時間かと思い、ファベルの言葉に返事をした。そのまま自室の扉を開けて廊下に出ると、そこには全く予想していない服装のファベルがいたのだ。彼女はいつものメイド服姿ではなく、小鳥と同じ制服を着ていた。龍樹が見間違いかと思って、二度見するほど予想外の出来事だ。ファベルも彼が二度見しているのはわかっていたが、気にしないふりをして二人を先導しようとしていて、龍樹は彼女のいうことに従おうとしたのだが、そこは小鳥が空気を読まずにファベルにその格好について訊いてしまった。
「これはお二人をフォローしてほしいと言われましたので、そのためですね。メイド服では目立ってしまいますから、できれば目立たないようにということでしたから」
彼女は淡々と答えているつもりだったが、その口調は早口で、さらに話していることも少しおかしい。だが、小鳥はその返事で満足したようで、それ以上は追及しなかった。
「私たちのフォローなんですね。あ、ありがとうございます。その、それと、よろしくお願いします」
小鳥がファベルに軽く頭を下げたのを見て、龍樹もそれを真似するように彼女に頭を下げた。
「ふふ、恐縮です。では、学園へ参りましょう」
彼女は二人の前を歩き、二人を先導していく。
王宮から出るところにベアトリスとファベルがいた。二人も学園の制服を着ている。ベアトリスはあまり派手な服を着ていなかったため、赤色の制服で少し印象が変わる。落ち着いた色のドレスを着ていた時よりも攻撃的というか、周りを威圧しているような印象を受けるのだ。背丈は低いはずなのに、彼女には貫禄というか、多少近寄りがたい雰囲気を放っている。ベルシャインも多少印象が変わって、彼の場合は雰囲気が柔らかくなっているように感じた。
「来ましたわね、小鳥! って、あら、誰かと思えばファベルですわね。その服、一緒に行くんですの?」
「はい、私も聖女様たちのお手伝いをさせていただきます」
「そ。まぁ、二人を守るための人数は多い方がいいに決まってますわ。ファベルもよろしくね」
「はい、こちらこそ」
ファベルは軽く一礼すると龍樹たちの後ろへと回った。先導するのはファベルとベルシャインの役目であると考えて後ろに下がったのだ。
「では、私たちが案内するよ。聖女様、付き人様」
ベルシャインが、そういったのだが、龍樹は付き人様というのが自分のことだとわかるのに少し時間がかかった。彼が歩き出そうとしたところで、それが自分のことを指しているのだと気が付いて、ベルシャインに声をかけた。
「ベルシャイン、俺のことは龍樹、でいい。もうあんたは敵じゃないんだろ。ていうか、素を見ちゃったしな。あれを見れば、あんたが悪い奴じゃないって思ったんだ。だから、適当に、な。まぁ、小鳥に何かしたら許さねぇけどな」
最後のは冗談とも本気ともとれる言葉でベルシャインは苦笑いしているが、それでも彼が自分に名前で呼ぶことを許してれるとは思わなかった。あれだけ敵意があったはずなのに、今の彼からはそういう気は一切感じない。それに素を見せた覚えはなく、彼自身には困惑も残っていた。
「えと、学園はこっちです」
ベルシャイン自身も彼らの前でどう振舞えばいいのかわからず、変な雰囲気のまま彼らを案内することになった。




