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ベルシャインの強引な婚約者 5

 その後、楽しくおしゃべりをしていると、ファベルがテーブルに近寄ってきた。


「昼食ができたようです。今日はサンティアン王もご一緒したいとのことですが、どういたしますか」


「ああ、一緒に食べることにする」


「承知しました。では、お部屋へ案内いたします」


 片付けはしなくていいのかと、龍樹と小鳥は思ったが、彼らが立ち上がり部屋を出るころにはすでに他のメイドがそのテーブルの上を片しているのが見えて、この王宮のメイドは仕事が早すぎるなと思っていた。




「……どうぞ」


 三人が部屋に入るとすでに王様がそこにいた。


「やあ、すまないね」


 その言葉が意味することが何かは予想がついたのは龍樹とファベルだけだが、二人は何も言わなかった。小鳥とベアトリスは、この部屋まで来てもらってありがとうという意味に捕らえて、小鳥はいつも来ているのになと不思議に思ったが、特に気にすることもなく、席に着いた。ベアトリスは朝と同じように、龍樹たちと反対の席に着いた。


「あの、ベルシャイン王子は……」


「あ、ああ、それはその訳があって。あれは、いつもは同席させてないんだ。すまないね」


「そうですか」


 心なしか少し寂しそうな顔をしているが、それでも彼女はすぐにいつもの自信のある顔に戻った。しかし、小鳥にも彼女の表情の変化を読む程度には仲が良くなっていて、彼女の寂しそうな顔を見てしまっていた。その原因は小鳥でも理解できるものだった。いや、小鳥は龍樹よりも彼女の心を理解しているかもしれない。せっかくの食事に龍樹が隣にいなければ、寂しいと思うのは当然だろう。だから、彼女は少しだけ勇気を出して、王様に話しかけた。


「お、王様。その、王子様、一緒に食べてもいいよ。じゃ、じゃなくて、一緒に食べよう、せっかく、ベアトリスもいるから……」


 王様の顔を見ることは未だできていない。しかし、彼女は王様の方を見て、自らの意思を示したのだ。それも自分のためではなく、人のために。彼女だって、怖いだろうに。龍樹はその言葉に驚いた。彼女は男相手にそういうことを言うとは思っていなかったのだ。彼女がベアトリスのためにそう言ったのはわからないでもないが、彼女は友達を優先するようなことは今の今までしたことはなかったのだ。そもそも、彼女にベアトリス程度でも仲の良い友達はいなかったのかもしれないが。


「ほ、本当にいいのか?」


 彼女の言葉に驚いているのは龍樹だけではなかった。王様もまさか、小鳥がそういうことを言うとは思わなかった。小鳥は離さないわけではないが、こういうことは龍樹が仲介して、彼女の許可させるというのが二人とのコミュニケーションだと思っていた。


「は、はい。王子様も一緒に、ベアトリスも一緒に」


「わかった。ありがとう、聖女様」


 王様は今まで見たことなくらいに笑っていた。王様であるが、それ以前にベルシャインの父でもある。できれば一緒に食事したかったのかもしれない。それにベルシャインが誘拐されたこともあるのかもしれない。一緒にいることができるなら、一緒にいたいと思っているのかもしれない。


 その中で一番、感動していたのはベアトリスだった。明らかに彼女は自分のために、喋るのが苦手だということは聞いていたのに、それでも勇気を出してそう言ってくれたのだ。ベアトリス自身は自分が人に親切というか、人助けをするのは当たり前だと思っている。それは将来、国を背負うことになるからだ。だが、彼女は人から心を遣われることには慣れていなかった。メイドにされてもそれが仕事だからかもしれないと思ってしまうが、彼女は仕事でそうしているわけではない。その優しさが、ベアトリスの心にも伝わってくる。初めての経験といえるかもしれない。友達という関係で、その優しさを受けることが、その気遣いがとても嬉しかったのだ。目に涙が浮かぶほどに。


「……ありがとう。その、小鳥って呼んでのいいかしら……?」


 珍しく遠慮がちに彼女がそう話す。小鳥はそのしおらしさが、少し面白くて笑ってしまう。だが、彼女にはなぜ小鳥が笑っているのかわからず、首を傾げていた。


「うん。大丈夫だよ。ベアトリス。これからもよろしくねっ」


 こちらも珍しく、小鳥のテンションが高い。この世界にきての始めての友達だからだろうか。それともベアトリスと友達になれたことが嬉しいのだろうか。


 二人は反対の性格といっていいだろう。小鳥は引っ込み思案で、人見知り。ベアトリスは、自信があって堂々としている。だが、だからこそ、お互いに波長が合うというか、相性がいいのだろう。


 龍樹は小鳥とベアトリスが友達になったことが嬉しくて、にっこりと笑っていた。

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