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ベルシャインの強引な婚約者 3

 朝食を終えて、ベルシャインは自分の仕事をしに部屋を出て行った。ベアトリスもそれにくっつていくのかと思ったが、彼女は龍樹と小鳥に興味があるようで、彼にはついていかず、小鳥の方をじっと見ていた。王様も二人に彼女のことを任せようとしているようで、さっさと退席していった。


「それで、これからどうするんですの? 聖女様が何をしているのか、気になりますわ。今日はご一緒させていただきます」


 もはや、二人の許可は求めずとも今日一日は一緒にいるつもりのようで、龍樹たちも彼女の言うことに従うしかない。彼女のいうことに反論すれば、より面倒くさいことになるのは、朝食の時にわかっていた。その部屋から出るときにはファベルが扉を開けてくれたのだが、彼女も二人には申し訳なさそうな顔をしていた。


「講師のセレナルは今日は来られないようです。今日はどうされますか」


「いつも通りに図書館に、と言いたいところだけど、どうする小鳥」


 龍樹は小鳥の顔を見て問うた。今日も図書館でもいいが、おそらくベアトリスがいると静かに読書とはいかないだろう。最初こそ読書になるだろうが、ベアトリスが飽きてくれば、おそらく別の場所に連れ出されることになるだろう。さらに、ベアトリスは小鳥に興味があると言っていたので、彼女が行くという場所にはついてくるだろうと思って彼女に託したのだが、小鳥は頭にはてなを浮かべている。なぜそんなことを訊くのかといっているようで、彼女は既に図書館に行く気だった。


 というわけで、三人は図書館にきた。ここには龍樹と小鳥にとっては珍しい本ばかりで読むのが楽しいのだが、ベアトリスにとっては当たり前の知識ばかりであり、さらにこの図書館は彼女が知識を得るために通っていた場所でもある。つまりは彼らが読んでいる本は彼女がすでに読んでしまっているもので、彼女にとってはこの場所は既につまらない場所になってしまっている。しかし、彼女は自らついていくと言ったため、二人の行く場所、やることに口を出す気はなかった。しかし、それでも退屈ということには変わりない。二人の読書を邪魔するのは悪いと思う心はあるため、彼女は勉強以外ではこの図書館を使ったことはなかったと考えを変えた。つまりは、勉強にあった書物以外は手に取ることすらなかったのだ。彼女はあまり立ち入らない場所へと足を延ばしてその棚を見ていた。その場所には娯楽用の物語が描かれた本が並んでいた。基本的には伝承や昔話を元に今の時代に合うように改変されたものだ。彼女はそのうちの一冊を手に取った。歴代聖女の一人の活躍を元にした物語だ。彼女はそれを呼んだことはあったが、それでも好きな物語の一つだった。魔獣を退け、国を救って王子様と結婚する。要約すればそういう物語だが、彼女はその本の筆者の文章の書き方というか、心情を細かく書いている部分が好きだった。何度読んでも今の自分と重なる部分もある。自分は聖女でなくとも、王子様を愛しているのは間違いない。しかし、その物語には聖女と王子の恋路を邪魔するものもいる。それが王子の婚約者だ。聖女と王子の仲に嫉妬して、様々な意地悪をしてしまう。当時の王子様も聖女様も婚約者の邪魔を告発して、最後には婚約者は婚約を破棄された上に、この国から追放されるというシナリオだ。今の立場は婚約者と同じだ。しかし、彼女はもし聖女に嫉妬しても、聖女様に意地悪をするのではなく、努力によって彼女と対等に戦うべきだったのだ。その結果に敗れたとしても、正々堂々戦った後なら、その後の人生だって得るものが沢山あるはずだ。彼女の過去はその努力と想いで成り立っているといっても過言ではない。だから、もし小鳥と戦うことになったとしても、意地悪なんてしないし、彼女が困っていれば助けることすらするだろう。それもできない小さな器では王妃になることはできないだろう。それ以上の困難がその先に訪れる可能性の方が高いのだから。


 彼女は既に本に書かれた文章を読んではいなかった。この物語は好きだったが、どうしてもこの婚約者だけは好きになれなかった。この物語の聖女とは反対に、立ち位置こそ同じだが、祖の想いも信念も全く反対にあるのだ。物語的にもその婚約者は嫌な敵として描かれているのだから、努力の人である彼女が好きになることはないだろうが、それでもその婚約者だけは気に食わなかった。彼女は本を閉じて、棚に戻した。そのまま、二人の座っていた席まで戻ろうとした。


 彼女は席に戻る前に、ベアトリスは龍樹に会った。二人が自分を探していたと知り、彼女は謝った。せっかくついてきているのに、二人に迷惑をかけるというのは無礼だっただろう。しかし、二人は特に自分を責めることはなかった。

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