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ベルシャインの強引な婚約者 2

「二人とも朝から、すまなかった。おそらく、これからも会う可能性があるだろうから、改めて、紹介しよう。彼女はベアトリス・ゴールドローズ。ゴールドローズ宰相の娘だ。ベルシャインの婚約者でもあるのだが、落ち着きが足りないんだ」


 王様は彼女に圧をかけるように見つめる。そういう表情の王様を二人は見たことがなかった。それは気安さがあるからこそ、彼も叱ったり責めたりすることができるのだろう。彼女の裏表のなさは先ほど見てしまったため、その部分が好印象なのだろうか。今も、騒いだことを反省しているのか、俯いて落ち込んでいる。王様の言葉が終わると、彼女はゆっくりと顔を上げた。先ほどとは違い、八の字に眉が印象的だ。


「ごめんなさい。騒ぎすぎましたわ。王子のことが心配で……」


 龍樹はその心は自分のことのようにわかる。心配してしまうと周りが見えなくなるのは、彼も同じだ。小鳥を常にといっていいほど、小鳥が心配なのだから。


「で、でも、王子を渡さないというのは――」


「そ、そこまでにしてください、ベアトリス。今代の聖女様は私のことを好いているわけではありませんよ。それに、必ず聖女様と王子が結婚するわけではありませんでしょう。そういう話が多いというだけです。だから、落ち着きましょう」


 何度かベルシャインとあって話したはずだが、今の彼は間違いなくベアトリスに振り回されていた。前に見た何かの見えない仮面をつけているような彼ではなく、それが素であるような気がしていた。素直な反応をする彼女であるからこそ、彼の素を引き出せているのだろうか。小鳥も今は彼女のことを警戒せずに、朝食を食べている。ただ、空腹を感じていただけかもしれないが。


「そうはいっても、いつかは王子のことを好きになるかもしれませんもの。その時になって、わたくしが捨てられるなんて嫌ですわ! だから、これからも努力をします!」


「あ、うん。それがいいと思うよ……。でも、僕はベアトリスを捨てたりしないよ。君だけだからね、僕のことを好きになってくれたのは」


 周りに人がいても構わず、イチャイチャしている二人を放っておいて、龍樹は小鳥と同じように朝食を食べ始めた。王様も額に手を当てて、二人がどうなるのか、と心配であった。二人とも腹黒く、お互いに利用しようとしているだけの関係でないというのはよかったとは思うが、どうしても二人を見ていると心配になる。


 ベルシャインとベアトリスは、幼馴染といっていい関係だろう。王族ではあるものの、王宮や王様と共に働く人には子供がいる人も少なくない。そのため、王子と幼いころから付き合いのある子どもも少なくはなかった。もちろん、男子だけなんてことはなく、女子もいた。その中の一人がベアトリスだ。ベルシャインは王族であるせいか、自身の権力を狙って話しかけてきている人がわかった。子供でも親に言われて、自分と仲良くしているというのもわかってしまう。しかし、彼にはそれを突き放すことはできなかった。その女子たちともお見合いの話もあり、何度か茶会をしていたが、彼を見て彼を好きになる人はいない。あくまで彼の権力が目的だった。そんななか、ベアトリスだけは違った。最初から。そう最初からだ。彼が王子でなくとも、ベルシャインがベルシャインである限り、好意を寄せ続けていたのだ。しかし、彼女は幼いながらも想っている心は言わずにいた。そして、彼女との茶会を行えば、ベアトリスは他の女子とは違う反応をした。好意的ではあったが、そこには遠慮というか、恥じらいというか、体を寄せてきたり、無理に笑って見せたりせず、目を合わせればすぐにそらして頬を赤くする。その他との反応のせいで、彼女が自分のことが本気で好きなのだと気が付いてしまった。好かれていると気が付いてしまえば、彼自身も相手のことを好きになるのに時間はかからなかった。それから、何年か経ってから、彼女を婚約者として選んだのだ。王子ではなく、ベルシャインを好きになってくれた彼女を捨てるなんてことはないし、ベアトリスに嫌われても彼女のことを嫌いになることはできないだろう。


 そんな混沌とした朝食が終わった。結局は、ベルシャインとベアトリスも一緒に朝食をとっていた。ベアトリスは食事中は一切喋らなかった。しゃべらなければ、しっかりとした王子の婚約者に見えた。食事するための所作も綺麗で、食器も少しも音が出ていない。それが彼女が努力しているというのが嘘ではないというのがわかったのだが、その努力が彼女を肯定しているのか、普段のお喋りというかうるさいのはどうにかならなかったのかとは思う。だが、多少かかわった程度ではあるが、既にする策ないベアトリスにはかなり違和感があるなとも思った。

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