表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/179

始まりの末 1

 結局、コスタを助けられることもなく、衰弱していく自らの体を感じながら、死んでいく。死への恐怖を感じながら朽ちていった。龍樹たちはそんなことは知らず、建物を出て、王宮へと戻っていく。ベルシャインは彼に何か話すわけでもなく、自身の行動を短絡的だったと反省する。結果的に彼に助け出してもらうことになってしまったのだ。あれだけ関わらないことを約束しておいて、この様だ。もはや、彼に頭は上がらない。




「へぇ、コスタが死んだって?」


「これで、俺たちも稼げるようになるな」


 龍樹たちが王宮に戻ったころ、冒険者ギルドではコスタがリーダーであるダークスターの壊滅が噂になっていた。かなり信憑性が高い噂としてギルドの中で広がっている。それもそのはずで、謎の魔術師の戦いを見ていたものが数名いるのだ。その中に、龍樹の忠告した冒険者もいる。彼が心配で、彼についていったのだ。そこで見たのは、魔法使いとは思えない魔法の使い方をして、冒険者たちでも実力ですら敵わない相手を圧倒していたのだ。その興奮は誰かに話したいという欲に抗えないのも仕方がないだろう。


 そして、コスタたちがいなくなるという言ことは、冒険者にとってはかなり助かることである。コスタが率いていたダークスターという組織は冒険者たちから、金を巻き上げていた。護衛と称して冒険者たちについていき、護衛量として報酬の六割以上を持っていく。さらには冒険者になりたての新人を食い物にして、助けたから報酬の九割が自分のものだと言い、金銭を奪い取っていたのだ。玄人冒険者も彼らに逆らうことはできず、その状況が続いていた。だからこそ、コスタが死んだといわれれば、喜び以外の感情は出てこないのだろう。




「ダークスターのリーダー、コスタが亡くなったようです。暗殺は失敗に終わりました。教祖様、いかがいたしますか」


 町の広場の片隅、黒いローブのフードは三角形でそんな服を着た人と、その隣には白いローブを着た男が目の辺りを隠すようにフードを被っていた。二人は小さな声で会話していた。


「ああ、うん。ダークスターにも信仰者はいたよね。こっちに取り込もう。勝手に恩をかんじてくれるなら、操りやすくなるし。お願いね。僕は屋台でもめぐってくるからさ」


「仰せのままに。教祖様」


 黒いローブの者は建物の影を渡って白いローブの近くから離れていく。黒いローブがいなくなるのと同時に、白いローブも動き出す。それから白いローブを脱いで、それを白いローブの下にあった肩掛けバッグの中に綺麗に畳んでしまった。ローブの下に来ていたのは、そこらを歩く待ち人と大して変わらない服装だ。中途半端な丈の、紺色のズボンに、手首より多少短い袖の薄緑の服。その服の上から、緑色のベストのようなものを着ている。ベストには袖がなく、前を止めるためのボタンなどもついていないシンプルなものだ。


 彼は露店が出ている通りに着き、その通りを移動しながら辺りを見ていた。彼は教祖と呼ばれていたが、白いローブを着ていない彼を誰もカルトの教祖だとは認識できない。彼に不躾に視線を送るものも一人もおらず、彼を忌避するものもいない。露店の一つ、肉を串にさして焼いている店の匂いにつられて、彼はその露店の前に立った。


「いらっしゃい! 何本注文してくれるんだい?」


 露店で肉を焼く店主が彼にそう声をかけた。彼は迷っている様子で焼いている肉を見ていた。その中の一本を指さした。


「それ、僕にくれない?」


「おう!」


「どうもありがとう!」


 彼はにこにこと満面の笑みで店主の出した串を一本受け取った。その笑顔を見て、店主も白い歯を出して豪快に笑った。


「お題はいらん。もってけ!」


「ありがと! また寄るよ」


 彼はそう言って、屋台から離れて、肉を食べていた。


「さあて、面倒なことにならないといいんだけど。ま、この世界は僕の味方だし、きっとコスタを倒した人も僕の味方になってくれるかな。なってくれないと、排除されちゃうから、どっちでもいいかぁ。それよりも、今日もいい天気だ」


 彼は食べ終わった串を適当に地面に捨てた。串が小さくカラリと音をてて、地面に落ちて転がった。それを見ていた通行人が串を拾いあげて彼の肩に触れた。


「ごみはちゃんと持って帰った方がいいですよ」


「えー、めんどいなぁ。じゃあ、君が捨ててくれないかな」


「……そうですね。私が捨てときますよ」


「じゃあ、よろしくー」


 この国に彼の敵はいない。なぜなら、彼に関われば、彼の味方になってしまうから。この国の外に出たことはない彼だが、少なくとも彼はこの国の中では敵ができることはない。どんなわがままも通る。さらに、彼に敵意がある人物もいつの間にか、《《いなくなっている》》。それがさらに彼の味方を増やす。彼自身は何もしていないのだから、能天気の毎日を過ごすことができるのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ