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力任せな悪 5

 彼の懇願には言葉を返さず、コスタのことを冷たい目で見降ろす。彼はそれを勝手に案内したら助けると解釈して、まだ武士である自分の仲間に声を荒げて呼んだ。早くしなければ、自分が死ぬと思っているのだから、当然だ。


「おい、早く捕まえたあいつのところに案内しろ! 早くするんだ!」


「は、はい!」


 茫然としていた男は声をかけられて、我に返った。すぐに彼のいうことを聞いて、龍樹を連れて案内する。コスタに肩を貸しているせいで、歩く速度はどうしても遅くなる。それでも、彼は手助けするようなことはしない。結局は自業自得といえるだろう。最初から龍樹たちに関わらなければ、こんなことにはならなかったのだから。




 しばらく、歩いていると、他の建物とは対して変わらない建物の前で立ち止まった。変わらないというよりは目立たないという方が正しいだろう。他の建物には屋根やドアに多少色がついているが、コスタたちの立ち止まったと建物にはそういったものはなく、そこから入ることができるというのはぱっと見ただけではわからない。


「こ、ここだ」


 コスタは既に虫の息で外に出した声も力がない。そもそも、止血してないのだから、彼の体力がなくなっているのは当たり前のことだろう。龍樹はコスタたちが扉を開ける前に、勝手に扉を開けて中に入った。


 建物の中には十人以上の人がいて、その人たちの視線が一斉に彼に向いた。最初は誰かが入ってきたということで向いた視線だが、徐々にそこに疑念が入っていく。全ての視線に、疑問が入ったところで、後ろから腹に穴を開けているコスタが入ってきていた。その瞬間、龍樹がコスタにそんな仕打ちをしたのだと理解して、部屋の中で戦闘態勢をとった。一部の人は既に彼に飛びかかっている。


「や、やめろ……」


 力のない声では興奮している者たちは止まらない。龍樹に向けて、ナイフが突き出されたが、全くその刃は彼に届くこともない。彼は風の塊を相手の顎のあたりにぶつけた。その瞬間に、その人物の首から、骨の折れる嫌な音がして地面に付した。その行動不能の瀕死にさせられたのだ。コスタの目の前でまた一人、犠牲者が出た。コスタは彼の強さを理解しているのに、犠牲者を出すことを止められない。


 仲間の一人がやられたことで、他の者たちの怒りが募る。彼に向かって魔法を放つものもいた。しかし、その全てが彼には届かない。先ほどと同じように、建物の中にいた人たちは彼の強さに怖気づいた。その間にコスタが、彼の近くで囁く。


「地下だ。捕らえた奴は……」


 彼の示す通りの場所に彼は移動する。地下に続く階段は床にカモフラージュされた真四角の扉を持ち上げることで開いた。彼は無警戒にその階段を下りていく。その後ろにコスタたちがついていく。


 階段を下りていくにつれて、あたりは暗くなっていく。彼は火の魔気を使って、自身の周囲に火を灯し、明かりを確保する。階段を降り切ったところには、簡易的な折が立てつけられてあった。その奥には、顔の一部がはれ上がったベルシャインが横たわっている。ベルシャインは人が入って生きたことに気が付いて、身を起こした。二日ほどしか経過していないはずなのに、彼はやつれているように見えた。顔も服もぼろぼろだからそう見えるのかもしれない。彼は風の魔気を刃にして、檻を切り裂いた。切り落とされた折がカランと音がした。


「早くでろ。家に帰るぞ」


 ベルシャインはのそりと起きて、去っていく彼の後ろについていく。龍樹のここでの用事はそれだけで、他の者たちには興味もなかった。だが、コスタが彼に弱い力でしがみつく。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。助けてくれるんだろ……?」


 龍樹は彼の手を振り払い、先ほどと同じような冷たい視線を浴びせる。その視線には助ける必要がどこにあると問いかけているようで、コスタは再び彼にしがみつくことはできなかった。だが、コスタをこの建物まで連れてきた男はそういうわけにはいかなかった。


「おいおい、待ってくれよ。兄さんを治してくれるんだろ? そう約束しただろ!」


 龍樹は心底面倒くさそうに、その男と目を合わせた。


「助けるなんて言ってねぇよ。勝手にそっちが勘違いしたんだろ? ははは」


 乾いた笑いが地下に響いて、男はキレて、彼に襲い掛かる。だが、彼をどうにかできるはずもなく、ただただ風の塊をぶつけられて、牢屋の奥の壁にぶっ飛ばされて、地面に落ちて、動かなくなった。


「悪いことはしないことだな。来世では、もっとましに生きろよ」


 彼はそれだけ言うと、その場を後にした。ダークスターの誰もが彼に逆らうことはできなかった。

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