都合など知らずに 4
ベルシャインが戦った翌日の早朝。いつもの食事室ではない部屋に騎士団長と副団長、王と王子がその部屋にいた。その部屋は装飾品は一切ない簡素な部屋で、部屋の中央には大きな四角いテーブルがあった。その上にはこの国の地図があった。その地図に載っているのは店の名前ではなく、犯罪組織が拠点にしているであろう場所にその名前が書かれていた。それ以外には冒険者のギルドや商人組合、治癒師が拠点にしている場所が記されていた。治癒師はその名前の通り、人を癒す職業で龍樹たちの世界でいう医者に当たる。医者と同じで、全ての病気を瞬時に治せるわけではない。治癒師の魔気を患者の魔気に混ぜて、患者の悪い部分を魔気の流れに混ぜて体外に放出したり、自己治癒能力を高めて外傷を治すというのが主な仕事だ。
「こんな早朝にお越しいただき感謝いたします」
「いや、構わない。私も騎士たちが協力してくれるかどうかはすぐにでも知りたいところだったからな」
「そうでしたか。それでは早速ですが、一部の騎士は協力を申し出てくれました。私や副団長は殲滅するとなれば、参加させていただきます。しかし、全ての騎士が前向きというわけではありません。やる気のある者はせいぜい十人以下でしょうね。作戦が何度となく失敗してしまっていますから、士気も上がらないようです」
騎士団長はため息をつきたいところを王の前だからとこらえた。やる気のないものが戦いに出ても無駄に死ぬだけだと彼は知っている。もはや、騎士とは呼べないだろう。毎日訓練はしているようだが、将来への不安がまとわりついていて、結局は強くなっているわけではない。やる気のある者の理由としてはあまり前向きなものではない。家族や友達が被害にあったからという理由で、殺さず捕縛するという任務であっても、数人は殺すことは簡単に予想できた。本当に正義のために行動しようとしているのは、団長、副団長を含めて、おそらくゼロ人だろう。そして、そんな状況であることを王に話すと、王は机に手をついて頭を悩ませていた。しかし、ベルシャインが彼の後ろから出てきて、騎士たちと向かうあう。
「団長の予想でいいですが、騎士は全部で何名集まりそうですか」
「それは、おそらく三十人集まれば、多い方だと思います。実際には二十人以下でしょう」
「そうですか。騎士は十数名いれば、何とかなると思いますが。どうしますか、父上?」
王は顔だけを上げて、彼の方へ視線を向けた。彼の視線には絶望が含まれているようで、それは騎士たちがもう積極的に国を守ろうとしてくれなくなったことが原因だった。そして、騎士たちのやる気をそいだのは、彼が犯罪たちに何度も騎士を向かわせたことにある。自分のしたことが間違っていたのだと突きつけられているように感じていた。
「昨日、言った通りです。ダークスターンの一部を排除するのにコスタたち、荒くれ者の力を使うのです。彼らは彼らは他の組織に手を貸していても、結局は自分たちの組織内に別のものを崇めているものがいるのを快く思っているはずがない。だから、こちらからその者たちを教えてやるのです。混乱しているところで、騎士たちに取り押さえてもらうのがいいでしょう」
「……それは本当に失敗しないのか。私には成功する未来は見えない」
「口をはさんですみませんが、あれらの協力して戦うなんて私は無理です。そういう作戦なら、私は参加できません」
副団長が王子の意見に口を出す。騎士たちは犯罪者を嫌っているというか、恨んでいる者すらいるというのに、彼らと協力してくださいなんていってもいうことを聞くはずがないのだ。
「そうでしょうね。ふぅ、一度落ち着いて、考え直しましょうか」
昨日、王と話していた時はこの作戦も使えるかもしれないと思っていたが、騎士たちのことを視野に入れれば、簡単にその作戦が使えないものだと理解してしまった。騎士たちの協力を得られなければ、そもそも組織を壊滅させるどころか反撃にあって終わりだろう。組織に対して、少人数で行動しても意味がない。
ベルシャインの一言で、騎士たちは失礼しますと言い、部屋の外に出て行った。王の顔色が昨日よりも悪くなっているのをベルシャインはわかっていた。父をこのまま消耗させるわけにはいかないとは思うものの、使える手札が少なすぎて動くのも難しい。
(やはり、あの二人の協力は必須、というわけか)
彼の手札ではなく、場に出ているカードといえる聖女と付き人。彼らの力を借りることができれば、それなりに戦うことができるだろう。聖女様が声をかければ、騎士たちはやる気を出す可能性の方が高いだろうし、付き人の強さを見れば、多少は士気が上がるかもしれない。だが、彼は二人に関わることができない。王に進言しようにも、王は二人から協力を得ることに消極的だ。
(お手上げ、ってところかな……)




