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都合など知らずに 3

「誰も聖女様には伝えていないな」


 食事をする部屋にベルシャインに加勢に来た騎士数名と、彼らを呼んだメイドの一人。そして、王子と王がその場にそろっていた。王以外の者は立ったままで、騎士たちは直立で立っていた。メイドの一人は前で手を組んでいるが、自分がその場にそぐわないと感じているためか、視線を上げたり下げたりしていた。


「ほとんど間を開けずに攻めに来るとは。とにかく、ベルシャインが無事でよかったが、お前は自分の命を軽々しく扱うな。怪しいものがいるのなら、他の騎士に報告するんだ。王子が殺されることがどれだけの損失になるかわかっていないわけではないだろう?」


 王は言葉こそ落ち着いたものだが、その心は激怒していた。自身の息子が危険を顧みずに、暗殺者に手を出したのだ。心配もあるし、自らの責任についても理解していないということになる。彼をそうやって育てたつもりはないが、聖女様が来てから、やはり張り切っている節がある。今も冷静に振舞っているように見えるが、聖女様とその付き人のために活躍しようと考えているのかもしれない。


「はい、申し訳ありませんでした。ですが、あそこで騎士を呼ぶとすれば、その間に聖女様の部屋への侵入をするしていたかもしれません。いくら付き人が強いとはいえ、彼らが死ぬこと、いや傷つくことを許せるはずがありません。だから、私が戦いました。それは理解してくれるでしょうか、父上」


「ああ、わかってはいるが、自らの命を危険に晒すようなことはするな。聖女様や付き人は大切だが、それと同等にお前も大切なんだ」


 ベルシャインはそれ以上は意見をしなかった。親子の喧嘩を見せる場所ではないのだ。それ以上に、警戒しなければいけないことが起きてしまっているのだから。


「はぁ、ベルシャインのことはとりあえず置いておく。騎士たちに来てもらったのは、この暗殺者を送り込んでくる組織を壊滅させようと思う。聖女様の付き人も気が気でない様子だからな。聖女様を守るために、睡眠時間も削っているようだ。日に日に顔色が悪くなっているのだ。彼を助けたいと思うのだが、騎士たちは協力してくれるだろうか」


 王は重々しくそこにいる騎士たちにそう伝えた。今、その場にいる騎士はあくまで副団長である。組織の壊滅となると、副団長だけの判断で決めることはできない。それは王も理解しているはずだが、彼も焦っているのだろう。


「申し訳ありませんが、私の判断だけで決めるわけにはまいりません。団長と共に協議して決めさせていただきます」


「……ああ、そうか。そうだったな。すまない、無理を言ったな。では、明日、報告を待っているよ。こんな時間に呼び出してすまなかった」


「はい、失礼します」


 騎士たちがその部屋を出て行った。部屋の扉の横に立っているメイドは、騎士たちがその部屋から去っていくのを見ていた。自分も早くそこから立ち去りたいと思っているのだ。それもそのはずで、彼女はメイドとしての歴は短くはないが、王宮でいえば、新人なのだ。王様や王子様の近くにいると緊張してしまう。


「君も今日あったことは口外することを禁じる。君も退室を許可するよ」


 メイドは綺麗に一礼して部屋からすぐに出て行った。


「はぁ、思った以上に状況が早いな。ベルシャインはこれを予想していたか」


「いえ、暗殺者が返ってこない時点でもっと慎重に行動するかと思っていたのですが、そうではなかった。おそらく、相手は荒くれ者の犯罪組織、ダークスターでしょう。カルトやギブラッドは、もっと慎重に行動するでしょうから」


「カルトの指示でダークスターが躍起になって行動しているということか」


「それもダークスターの一部でしょう。組織の一部を削ることができるというのなら、悪い結果にはならないとは思います。それに、ダークスターは荒くれ者というだけではないようですから、カルトに引っ張られている連中を排除するのには手を貸してくれるかもしれません。それに一度だけ、話したことがありますが、あの組織のリーダーであるコスタという人は、受けた恩は返す人ではあります。一度だけではありますが、それでも彼らへの抑止力を持つというのは悪い話ではないと考えられますね」


 彼の言葉に王はうーんとうなりながら、考えをまとめようとしていた。どちらにしろ、暗殺者がもっと頻繁に来られたら対応も大変になっていくだろう。騎士たちも人間だ。疲弊し続けてしまえば、騎士たちも無駄に犠牲になる可能性もある。ならば、やはり、ここで叩いておくべきだろう。


 王はそこまで考えたが、自分一人で何かできる状況ではないため、結論を出すことはできない。結局は騎士たちが共に行動してくれるのを願うしかないのだ。

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