表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/179

都合など知らずに 1

 ベルシャインが王様と話している時には、小鳥と龍樹は既に就寝の準備をしていた。いつものように風呂に入って、着替えて布団の中に入る。龍樹もそろそろ限界を迎えているようで、ベッドに寝転ぶだけで瞼は重くなってしまう。だが、彼はそれに抵抗して、小鳥を守るために眠るという選択を放棄する。上半身だけ起こして、小鳥の頭を撫でていた。小鳥はその温かい手に気持ちよさを覚えるが、それよりも彼がしっかり眠っていないことの方が心配だった。


「お兄ちゃん、私のために起きてくれてるのは嬉しいんだけど、お兄ちゃんも寝よう? ぼろぼろのお兄ちゃんをこれ以上見たくないよ」


「ああ、わかってる。でも、わかってくれ。俺にとっては俺のことより、小鳥のことの方が大事なんだ。俺が寝こけている間に、小鳥に何かされたとなれば、俺は自分を許せない」


「お兄ちゃん……。よしよし」


 彼の言葉は確かにそれだけ自分を気にかけてくれているということだ。それは確かに嬉しいことだった。しかし、自分のことを考えてくれるというのなら、彼も自身の隊長を少しは気にしてほしいと小鳥は考えていた。しかし、言葉ではどうすることもできない。だから、彼女は龍樹の頭を撫でた。自分がしてくれて嬉しかったことをそのまま、龍樹にした。龍樹は最初こそ困惑していたものの、彼女の手から優しさが伝わってくるようで嬉しくなった。そして、なぜかそれに安心を覚えた。上半身を起こしていても、安心のせいで体から緊張が抜けてしまった。瞼だけではなく、体も重くなっているうで、彼の体が自身の意思とは別に、ベッドに横たわる。そのまま、数秒すらも待たずに、彼は眠りについた。彼が眠ったのを確認して、小鳥も彼の隣で眠りについた。




 ベルシャインは騎士の訓練所で自身の体と技術を鍛え終わった。汗を拭いて、訓練場内の簡易的なシャワーを使って、汗を流した。正体を隠して、町に視察に行ったときに、多少、犯罪者の行動が目に着くようになってから鍛え始めた。それが約三年前のこと。それから、犯罪者たちの行動は町で過ごす市民たちの目にも映るようになった。王は様々な方法で犯罪者をどうにかしようしていたが、犯罪者は減ることはなかった。それどころか、刺激したせいか、より活発に行動している組織も増えていき、現在では犯罪組織がはびこってしまった。彼らにとっては行動しやすい国になっってしまっているのだろう。


 現状が全くいいとは思えないが、それに対抗できるだけの戦力も作戦もない。無策で彼らに挑むのは無謀であり、この国を完全に乗っ取らせてしまう結果を招きかねない。


 ベルシャインは着替えを済ませて、訓練場を出た。騎士団長は聖女様の部屋の前で門番をしているので、副団長に挨拶をして訓練場を出た。


 訓練場を出た彼は、王宮に戻ろうとしていた。訓練場から王宮まではそこまでの距離はないが、一度外に出て王宮へと向かわなくてはいけない。彼は考え事をしながら、歩いていた。いつもそうしているが、前を見ていないというわけではなかった。


 彼の視界で影が動いた。彼は見間違いだと思ったが、それを確認しないわけにはいかない。ここは王宮だ。見間違いと片付けて、後々に大事件になりかねない場所。当たり前だが、彼もそれを理解しているため、その影が動いたと思われる場所だ。


 彼は何かが動いた場所へと警戒しながら近づいていく。大きさ的には虫や獣ではないのは確かだ。少なくとも人の一部に見える影だった。彼が近づいていくと、影が彼に気が付いたのか、影がしっかりと動いた。彼もそれを見ていて、自身の見たものが見間違いではないと知る。彼は剣を抜いて、影に近づいて行った。


 影の頭の部分が動いて、目が出現した。彼が影だと思っていたものは、人だった黒い衣装を着た人だ。見た目からでも明らかに暗殺者とわかる格好をしていた。


「チッ!」


 影は大きな舌打ちをして、腰に手をやった。その状態で影は一瞬で距離を詰めてきた。ベルシャインは相手の攻撃を受けようと剣を力強く構えた。相手の得物が見えないが、彼は影に負けるつもりなど毛頭ない。


 相手の腕が動くのが見えた。ベルシャインは相手の攻撃が来るであろう場所に剣を構えた。相手の腕が伸びるような動きで、彼が構えた剣の内側に相手の剣が来ていた。彼は自身の剣を引いても意味がないとすぐに判断して、相手の剣が振り下ろされても攻撃範囲に入らないように思い切り後ろに飛ぶ。一度だけではなく、二度ほど地面を蹴って、相手との距離をとった。しかし、それでも相手は暗殺者だ。技術が真っ当なものではない。人を瞬時に殺すための技術を習得しているのだ。騎士の守るための剣とは系統が違うのだ。


 彼の顔には浅く切り傷がついていて、彼の服は縦に切れ目がついてしまっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ