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聖女の命を狙う者たち 2

 暗殺者の行動を十分に観察したため、彼はそろそろ相手を消そうと考えていた。彼は掌を相手に向けた。彼の手には小さな光の玉が作られていた。そして、それが暗殺者に向かって一直線に伸びた。見てから回避するにはあまりに間に合わない速度の熱光線。


「っ」


 暗殺者は彼が何か攻撃してくると、予想していたため、彼の魔法が発動する前に横に飛んだのだ。相手のフードが揺れて、その視線が彼の魔法が通った軌道を見ていた。


 あまりに一瞬すぎる攻撃。だが、それは脅威以外の何物でもない。防御の魔法を極めた魔術師はそれ以外の魔法はほとんど使えないというのはほとんどだ。反対に攻撃するための魔法を極めた魔術師は防御がおろそかになるのが当然だった。そして、魔術師以外でも両方の魔法を強力な状態で使いこなす魔術師は規格外というよりは、おとぎ話の英雄ですらない。あまりに強すぎるためにおとぎ話の中ですか語られないのだ。この国では、彼の能力は想像の先の先にあるものだった。


 暗殺者はそれでも戦意を消失することはできなかった。ここで彼をどうにかしなくてはいけないのだから。


「くっ」


 相手に二本目の熱光線が飛んでくる。それでも相手は回避したが、彼の動きについていくマントに穴が開いた。布一枚ではその魔法を防ぐことはできない。


 暗殺者はもはや、何をしても勝てないことを知った。どんなことが起こったとしても自分が勝つ可能性は零パーセント。諦める以外の選択肢をとることは意味がない。


「だが……」


 暗殺者は短剣を片方地面に落として、マントの中に手を突っ込んでいた。相手の動きに警戒しつつも、彼は既に自身の勝利を確信していた。この国の暗殺者が最後にどんな手段を使うのか、興味もある。


 彼の思考など知るはずもなく、暗殺者は彼に一瞬で接近した。


「こいつで死ね!」


 相手の低い声が彼の耳に入った。そして、彼の正面で何かが光輝いたていた。そこらにある魔気が引っ張られているのか、ヒューというような音が彼の耳にも聞こえた。そして、輝きがひと際強くなったところで、衝撃が部屋全体に広がった。


 まばゆい光とすさまじい衝撃が二人のいた部屋を襲った。光はしばらく残り、衝撃は部屋中を動き回る。爆発を使った暗殺者もその衝撃に飲まれて、体はバラバラどころではなく、体の一片も血の一滴も残らず消失していた。


 光も衝撃もなくなり、多少誇りが舞う部屋の中、それだけの衝撃があったというのに、部屋の中は何も変わっていなかった。


(相手は……、もういない、か)


 さすがにあの光と衝撃の中で生き残ることはできなかったのを、彼は光の中の影で見ていた。体が光に飲まれて、相手の体が消滅していく姿をじっと見ていた。いや、見ていることしかできなかった。相手を助けようなんて一つ思っていないし、それよりも自分の手で相手に止めを刺せなかったことが心残りだった。


 彼が部屋の中で一人立っていると、彼のいる部屋の扉が叩かれた。


「大丈夫ですかっ!」


 夜には似合わない大きな声だ。その声はファベルのものに似ているが、彼女が大声を出す光景を想像できなかった。


「すみません、開きますっ」


 外からその声が聞こえると、扉が思い切り開いた。ファベルが来た時点で、透明な防壁の魔法は解除している。そのため、ドアは何の抵抗もなく開いたのだ。部屋の中に入ってきたのはファベルだった。しかし、その見た目は完璧なメイドではなかった。髪はところどころはねていて、彼女が来てる服装もスカートの長いメイド服ではなく、彼女の体には少しぶかぶかな緩い服を着ていた。


「あの、凄い光が見えて……、急いできたのですが、何があったのですか」


 ファベルの目には、二人のいる部屋には何も変化がないことはわかっていた。ベッドの上では聖女様が寝息を立てて眠っている。だが、龍樹は窓の近くに立って、殺気立っているのだ。たとえ、部屋には何も変化がなくとも、聖女が気持ちよさそうに寝ていようとも、彼の様子が何かあったと言っているようなものだった。


 部屋に入ってきたファベルの方を、殺気立ったままの龍樹の視線が射抜く。ファベルはいくら王宮の侍従だと言えども、その殺気に射竦められていた。


 彼はファベルを見ると、多少は冷静さを取り戻したのか、殺気が少しだけ収まっていた。それでもファベルの恐怖は消えることはない。彼の視線にさらされたときに死んだとそう思ったのだ。彼は本当にただの聖女の義兄の異世界人なのかわからない。


「……小鳥の命が狙われた。だから、戦ったんだが、最後は自爆したんだ。それだけだ」


 ファベルは彼の言うことを信じるしかない。彼を疑うという選択肢をとることが今はできない。彼を肯定しなければ、殺される。未だ残る殺気がそういっている気がしてならないのだ。


「メイドさん、来てくれてありがとな。でも、もう部屋に戻って眠った方がいい。今夜のことは明日にでも話すから」


 ファベルは、はい、と弱弱しく答えると龍樹と小鳥の部屋から出て行った。

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