悪魔討伐の後に 1
悪魔は龍樹の魔法によって消滅した。最後に残ったのはルビーのような宝石だけ。彼の魔法の衝撃に地面を転がっていたようだが、その勢いも止まった。宝石の中は淡く光っている。彼はそれが何かわからなかったが、ベルシャインが駆け寄ってきた。
「それはおそらく、あの悪魔のコアです。伝承の中でも胸の中の赤い宝石が弱点といわれていますから。それを割れば、二度とあの悪魔が復活することはないはずです」
「なら、壊そうか」
龍樹は宝石に土の魔気を利用した棘のようなものを出現させて、宝石の真ん中にその棘を突き刺した。宝石の中の淡い光が、外に漏れ出来て、粒子になって消滅した。宝石も粉々に砕けて、地面に転がった。
「これで、終わりだな。強い悪魔だと思ったが、油断してくれていて助かったな。最初から本気で来られてたら、負けてたかもしれないが」
「そんなわけないよ。お兄ちゃんが負けるなんてことは絶対にないもん」
全て終わったのを見届けていた小鳥が彼の近くまで来ていた。そして、彼に抱き着いてそういった。彼はその頭に手を置いていた。さすがに彼も悪魔との戦いで疲労を感じていた。人間を相手にしていた時とは全く違った。その反応速度も攻撃速度も別物で、自分が油断していればすぐに攻撃を受けていたことは間違いないだろう。だが、小鳥が近くにいるというのなら油断するわけにはいかないのだ。自分と彼女を守るためには油断なんてしている場合ではない。
「……龍樹、感謝します。この悪魔を倒してくれたことを」
ベルシャインは腰を直角に曲げて、頭を下げた。騎士たちもそれを見て、膝をついて、頭を下げた。ベアトリスとファベルもいつの間にか頭を下げていた。
「あのまま、あの悪魔が暴れ続けていれば、国はなくなっていただろうし、他の地域の人間も殺していたはずです。この国だけではなく、この辺りの地域を救ってくださったこと、どれだけ感謝しても足りません」
龍樹にとっては小鳥を守るための行動でしかなく、そのための行動で何かいいことがあっても悪いことがあっても、彼は干渉しないことにしているのだが、彼らの感謝だけは受けようと感じていた。それは彼らへの少しでも恩返しができたかもしれないと持ったからだ。この国に来てから、ずっと面倒を見てもらっていたのだから当然だろう。
「いや、俺もこの国が亡んだら困るから。俺も小鳥も生活する場所がないと生きていけないからな」
「いえ、それでも感謝します」
「もういいって。それより、被害出てないか確認した方がいいんじゃないの?」
彼は小鳥以外からの感謝を素直に受け取ることができなかった。そのため、語気を強めに行ったが、内心は照れているだけだった。それがわかっているのは彼にくっついている小鳥だけだ。
「なんと、やはり付き人様というべきか。あの古い悪魔を撃退するどころか、倒してしまうとは。これで、あの古い悪魔に怯える必要がなくなるということか」
王様の執務室で、王は悪魔の撃破について立ち上がりながら喜んでいた。今までこの世界の人間は誰もできなかった偉業を成し遂げたのだ。あの伝承に恐怖するものは一人もいなくなるということになる。いや、今この瞬間からあの伝承には続きができるというわけだ。
「再びギブラッドのような組織も出てこないというわけだな。これは、本当に喜ばしいことだ」
王は自身が王様という立場でなければ、飛んで跳ねて駆け回って喜びたいところだったが、目の前に報告してくれた偵察隊の者がいるため、そういうことはできなかった。しかし、偵察隊の者もその事実を見た瞬間にすぐに王へと報告に来ていた。その足取りは、喜びがあふれているもので、彼はノックもせずに執務室に入ってしまったほどだった。
小鳥と龍樹は、自室に戻ってきていた。ファベルに案内されて、とりあえず、部屋の中で休むことにした。この世界に来てから一番、疲れた戦闘ではあったため、少し休むことにした。小鳥がずっと龍樹にくっついたままで、その状態のまま彼はベッドに座って息を吐きだした。小鳥が彼にくっついているは、彼が勝つと信じていても、それは心配しないということではない。今までで一番強い相手であることは彼女もわかっていた。その姿を見て、彼が死ぬというわけではなく、遠くに行ってしまうような、自分と引き離されてしまうような気がしてしまったのだ。その想像だけで寂しくなってしまった彼女は、龍樹から離れようとしなかった。彼は小鳥の体温を感じながら、眠気に誘われていた。瞼が下がってくる中、小鳥が笑った顔が映っていた。そのまま、彼の体は傾いて、ベッドに横になった。小鳥は彼にくっついたまま、一緒に横になった。




