騎士&付き人VS古い悪魔 5
「もはや、貴方は私たち悪魔にとっても脅威というわけですか。この体が勝手に動くほどの脅威とは初めて会いました。貴方は本当に幸運ですね。私の全力で貴方の相手をしましょう」
悪魔が体を丸めたと思えば、その体を大きく広げた。その瞬間、相手の体から角が生えた。捻じれた角が天を向いていた。手は人間のそれではなく、明らかに魔獣が持つような鋭い爪のついた骨ばった手になり、その腕は今にも服を破りそうなほど服が張っていて、足に関しては既にふくらはぎの辺りはズボンが破けていた。その足は太くなっていて、足は既に人のそれではない。手と同じように爪が鋭くなっていた。
「この姿にさせたこと、人間ごときにここまでの力を使うとは思いませんでした。ですが、これで貴方に勝ち目は微塵もありませんよ。痛みを知りたくないというのなら、抵抗しないことですね」
彼の掌には様々な魔気が集まり、紫色に光る球が出現していた。
「これは、単純な魔気を集めたものです。そして、これから貴方を魔気へと還す魔法でもあります。この魔法を発射すれば、それだけで貴方を殺すことができるというわけです。この魔法を天使以外に使うのは初めてですので、死後に天使と会ったら教えてあげなさい!」
彼の言葉と共に、その球体が彼の使う熱光線より太く、怪しく光る光が放射された。それを回避できるほどの距離もなく、彼はその光に包まれた。光の中の彼の影も消えて、周りから見れば彼が無事ではないことは理解できただろう。そもそも、その魔法は明かに即死するくらいの威力だというのはすぐにわかった。しかし、彼の影が消えても、よく見れば、光は彼の後ろには届いていない。そのおかげで、王宮は傷一つもついていないのだ。
「この魔法も効かないのですか。そんな馬鹿な。そんなはずはない。いや、しかし、どれだけの保有している魔気の差があるというのか。私も貴方もそこまで大きな差はないはずです! もう一度、食らいなさいっ!」
悪魔の声が大きくなってきていた。そして、二回目の光の放射が彼を襲うが、二度目も同じように光の放射が彼に届くことはなかった。彼は光の魔法が来るとわかった時点で、彼は水の魔気を使って自身の目の前に水の壁を作った。その水面に波を起こして、乱反射するようにしたのだ。彼の世界の科学の原理と違ったのは、乱反射した相手の光は反射した時点で、消滅したところだろう。悪魔の使った光の放射の魔法は四つの魔気が込められていて、そのバランスが反射したところで崩れた。そのため魔法はその形を維持できなくなっていたのだ。
「ならば、貴方の魔気が切れるまで打ち込むまで! この私より悪魔があるはずがないのです。この私より貴方が強いなんてことは絶対にっ! ないっ!」
彼は両手で、光の放射の魔法を彼に向かって飛ばす。明らかに人間が許容できるほどの魔気の量ではなく、その魔法を打つだけで周りの騎士たちは委縮している。あまりの魔気の迫力にその場から動けない。ベルシャインもベアトリスも、立っている場所から一歩二歩と後ろに下がる。ファベルも後ろに下がり、彼女が下がることで小鳥も一緒に後ろに下がることになった。しかし、その魔法も彼には全く効果がない。光の放射を何度も何度も彼に叩きつけているはずなのだが、彼の魔気が減る様子はなく、まるで無限とも思えるほどの魔気を使っているかのように戦っている。悪魔の視界の中で、彼の魔気の量は全く変わらなかったのだ。それは彼にとっては恐怖でしかない。ゴールが全く見えない。その状況は、悪魔が生きてきて初めてのことだった。人間ならば、その程度の恐怖は日常の中にあり、その恐怖に慣れているからこそ、ゴールが見えなくとも走ることができるが、その恐怖に慣れていなければ、ゴールが見えなず、どれだけ走ればいいのかという恐怖は戦意を喪失させるだろう。
「貴方は何者なのですか。この、私の力が全く効かないなんて、そんなはずは……」
悪魔は光の放射もやめて、俯いていた。まさか、天使すら殺した魔法が人間に効かないとは悪魔は、いや、天使すら思わなかっただろう。それほどまでに強い相手が、人間にいるとは思わなかったのだ。
「……なるほど。私を殺すのは人間……。そういうことですか。進化の末にこうなるというのなら、確かに私には何もなすこともできませんね。あの人間の言うことが正しいとは思いませんでしたね……」
悪魔は既に戦意を喪失していた。だが、龍樹はそんな悪魔に追い打ちをかけた。
「悪いが、俺は人間の進化に末じゃない。俺は人間で見れば、まだまだ未熟なんだ」
「はは、冗談というわけではないようですね。これは、他の種族も勝てないはずですねぇー」
悪魔はその場に座り込んだ。そして、彼に戦意のない落ち着いた瞳を彼に向けていた。そんな悪魔に、彼は熱光線の魔法の太さをさらに太くした魔法を悪魔に向けて放った。その見た目は先ほどの悪魔の魔法を白色にしたものだった。




