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ベルシャイン王子 2

 小鳥はベルシャインが謝りたいという話を聞きながらも、彼女はのんきに食事をしていた。さすがの王様も苦笑いで、彼女の空気の読めなさというか、読まなさというか、つまりは図太い性格であることを再確認させられていた。小鳥はスープを一匙飲むと、彼女は王様の方を向いた。彼と視線を合わせるのは無理なことだったが、それでもその態度は彼女にとっては誠実なものだった。それが彼女の精一杯なのだ。


「王様、その、王子様にあってもいいよ」


「こ、小鳥、大丈夫か?」


 彼女の声は確かなもので、彼女は堂々としているように見えた。しかし、龍樹から見れば、その手が震えているのが見えているし、そもそも彼女がそういうことが苦手、ましてや相手が男となれば、彼女は会うことすら嫌がる女の子だ。父親ですら、目を見て話すことができないというのに、初対面と変わらない王子様と会うことができるのかと多少不安になった。しかし、ベルシャインが彼女に会って、謝りたいと思っているなら、それを通すべきだとも思っているのも事実だ。これから、王宮でしばらくお世話になるとすれば、王子様と絶対に合わないというわけにはいかないだろう。


「うん。大丈夫、だと思う。それにお兄ちゃんがついてくれてるし、私は大丈夫だよ、たぶん」


 中々、あいまいな返事ではあるが、そもそも彼女ははっきりしない性格でもある。その中でも前向きに考えているようなら、彼女の意見を否定することはないだろう。それに、彼女の言う通り、彼女が一人で王子様に合うわけではない。ならば、相手がいきなり彼女に近づいたり、危害を加えようとしなければ問題ないだろう。ベルシャインだけではなく、おそらく王様も一緒にいるはずだ。そうなれば、下手なことはしてこないだろう。


「ありがとう。聖女様、それでベルシャインは許可がもらえるなら、明日の夕食後に会いたいと言っているのだが、急すぎるだろうか。もし、もう少し後がいいなら、そうさせてほしいが、いかがだろうか」


 王様はその言葉を龍樹にも話しているつもりだった。そして、彼が返事をするものと思っていたが、そうではなかった。小鳥が龍樹の方へと視線を動かしたのを見て、彼女は王様の顔に視線を向けた。視線が合っているわけではないが、王様の顔を見て返事をした。


「大丈夫です。明日でも、大丈夫、です」


 彼女は一瞬の間に考えた。それは明日にしなければ、それ以降はずっと心の準備がといって、王子様に合うのを拒否し続けそうだったからだ。彼女は苦手なことも嫌なことからも逃げることが基本的な手段になってしまっている。怖いことも不安なことからも義兄が守ってしまうから、彼女には逃げる癖がついていた。しかし、彼女もそれではだめだとも思っている。それは、義兄離れしたいしたいというわけではなく、彼と肩を並べて、一緒に生きていきたいからだ。助けられるだけではなく、彼女も彼を助けたいと常々思っていた。


(せっかく、異世界に来たんだし。お兄ちゃん以外は私のこと知らない。なら、ここからお兄ちゃんのために頑張りたい……)


 決意はあるが、彼女のそれはまだまだ小さい。彼女出なければ、当たり前のことだ。ただ、謝罪の場を設けるだけ。大人ならそれを拒否する奴はいないだろう。子供でも謝る相手から逃げるような奴はいないだろう。だが、彼女にとってはそれだけでも心の準備や決意が必要なのだ。その心の弱さは明らかに義兄の過保護さにある。


「そうか、さすがは聖女様。ありがとう。では、明日の夕食後に、私の息子を連れてくるとしよう。明日はよろしく頼みます」


 王様は軽く頭を下げて、食事に戻る。それを王様の話の終わりの合図になり、龍樹も食事を再開する。小鳥だけは食事の手を止めていなかったため、食事を再開するというわけではなかったが、スプーンを持つ手が微かに震えていた。




 翌日、セレナルとの授業が始まった。昨日と授業の内容は似たようなものだが、より高度な魔気の特性の話だった。例えば、火の魔気が温度の変化で、その形を全く反対に変えること。つまりは、温度が高くなれば燃えて、温度が低くなれば凍る。氷塊を作る魔法は火の魔気によって引き起こされているというわけだ。土の魔気はその場に留まる性質があり、風の魔気はその反対の性質を持つ。だから、風の魔気を集めて操作すると、電気を起こすことができるが、魔術師でもなければ、その拡散する性質を制御できずに、電気があらぬ方向に走るようだ。ちなみに、この世界で、あらゆるものが地面を下にしているのは土の魔気が集まったゆえの性質らしい。水の魔気は流す性質を持っているため、一方向に移動しやすいという性質があるらしい。


 二人の世界が科学を根本に、様々な現象を解明しているように、この世界の根本は魔気というわけだ。魔気の性質を解明していけば、二人の元の世界のように便利なものができてくるのかもしれない。

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