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小悪ですら 2

 学園内で、不良グループではなく、外部の人間が起こした事件のせいで、学園はしばらくは休みになってしまった。学園長だけではなく、二度、それも続けてこういうことが起こってしまっては、またこういう事件がすぐに起きないとも限らない。学園がすぐに再開するということもなさそうだが、学園には王様も含む、いつものメンバーが呼ばれていた。


「大変、申し上げにくいのですが、聖女様と付き人様には、学園から退学していただきたいのです。先のような事件がまた起こらないとも限りません。これ以上、他の生徒に危機が近づくのを止めたいのです。貴方たちが悪いとは微塵も思っていません。しかし、こういう施設である以上は、大勢を守るための選択をしなくてはいけないのです。わかっていただけますでしょうか」


 小鳥は残念そうな顔をしていたが、今回は自分が狙われていることを薄々理解していた。また、似たようなことが起きるかもしれないといわれると、自分がここに残りたいと強くは言えない。龍樹はどうにか、彼女とまた学園に来ることができればいいのに、と考えたが、今回のようなことが起きて、今度も小鳥を守りきることができないかもしれないと考えると、王宮で守られていた方が安心だと感じていた。そうなれば、退学だと言われれば従うのが最善だろう。


 ベルシャインもベアトリスも、彼らを擁護していたが、王が二人を止めた。ベルシャインが珍しく、王と視線をぶつけて睨んでいたが、王が目をつぶり、ゆっくりと首を左右に振ると、歯を食いしばりながらうつむいてしまった。ベアトリスはそんな彼の背中に手を置いて、彼の心を慰める。


「本当に申し訳ありません。こちらが受け入れたというのに、退学という結果にしててしまいましたこと、まことに申し訳ありませんでした」


「よい。私のわがままを聞いてくれたのだろう。気に病むことはない。この学園を引き続き頼む」


「……ありがとうございます」


 学園長は本心から悔しいと思っていた。二人は授業を受けて、知識を深めたり、技術を高めたりしていたはずだ。それなのに、退学という結果にしかならなかったことが、未だに納得していない。彼の感情でいえば、二人に味方だ。しかし、彼は学園長。この学園の全てを任されている人物だ。他の生徒に危害加わる可能性があるならば、どうしてもそれに対処しなければいけない。感情と責任がぶつかりあっている。




 それから、学園長から言い渡された通り、龍樹と小鳥は学園から去り、王宮に戻った。ファベルも学生から侍従に戻り、普段の生活に戻っていた。二人のことを思えば、学園で楽しく過ごしてほしいと思ってはいるが、彼女の責任の重さを知っている。感情だけで話すことはできない。


 他の者が納得してなくとも、二人はいつも通り、王宮を歩いていた。ほとんど人とすれ違わず、すれ違っても挨拶をされるだけで、それ以上の雑談をすることもない。ベルシャインもベアトリスも学園。もちろん、フリューやハルエラは学園が終わったとしても、この王宮には来るはずがない。毎日、顔を合わせて、多少会話してくれるのは、ファベルくらいだった。




 学園では、二人が去ったことによって、静かで平和な学園に戻ったように見えた。ほぼ同時期に事件が二つ起こり、その解決をした後なのだから、静かになるのも当然だが、一般生徒はどうしてもそうは考えない。二つの目立つ事象があるときには必ず繋がりがあると考えてしまうだろう。酷い考えでは、あの事件を起こした真の黒幕があの二人じゃないかとまで言われてしまっている。ベルシャインがその噂を聞いた時にはその生徒を問いただしたが、その行為に意味はなかった。結局は、その噂の出どころなど、探すこともできないだろう。頭では、それを理解しているが、二人が馬鹿にされたり、悪者だと言われてしまうとすぐに頭に血が上る。そういうときはベアトリスの方が冷静だった。


 しかし、学園を去った人の噂など十日ほどで収束していき、二十日もすれば二人の名前が聞こえてこなくなった。


「フリュー、大丈夫?」


 二人がいなくなった後、フリューは抜け殻のようになっていた。授業もしっかり受けて理解しているし、ハルエラとの会話もしっかりできている。しかし、その行動にはいつもの自信に溢れた態度ではなかった。それが二十日間も続いていて、毎日ハルエラに大丈夫と聞かれる毎日だ。ハルエラも小鳥が退学と聞いた時にはもっと仲良くなれる可能性を考えていたため、少し残念に思っていた。ハルエラでさえ、そう思っているのだから、それ以上に二人と仲良くなろうとしていたフリューにはさらに大きなショックがあるのかもしれないが、ここまで長い期間落ち込むとはハルエラも思っていなかった。

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