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目立つだけの悪 5

 二人が戦っている間に、龍樹は小鳥のことを心配しながら、小柄のナイフ使いの男と、太く大きい力の強そうな無手の男を相手に攻撃を躱し続けていた。あまりの連撃に魔法を使う暇もない。


 二人で攻撃しているというのに、全く彼に攻撃が当たらないということに太い方がイライラとし始めていた。いくら攻撃しても軽く躱されているような余裕を感じていた。その余裕を崩すために二人で攻撃しているというのに、攻撃が当たらない。ナイフ使いのナイフ捌きは棒けしゃの中でも、玄人といえるほどの技術があるはずなのに、その攻撃さえも当たらないのだ。


「逃げ回りやがって。いや、そうか。反撃できないんだろ。躱すことでいっぱいいっぱなんだろ?」


「そうだな。こうして喋る余裕がある程度には手いっぱいだな。それより、威勢のいいことを言っていたみたいだが、全然攻撃してこないな」


 挑発には挑発をぶつけ、相手が怒ればそこから起点にして倒してやろうと思ったが、相手もその簡単な挑発には乗ってこないようで、それどころか、先ほどよりも落ち着ているように見えた。


 そして、相手の動きを見ながら、彼はある思い込みをしていたことに気が付いた。この世界では魔法を自在に操ることができるからこそ、魔法で戦わないといけないと考えていた。その思い込みに今、彼は気が付いたのだ。そもそも、彼は異世界に来る前は、独学というか、我流の格闘術モドキを使っていたのだ。この異世界に来てから、その技術を使うことがなく、魔法で戦ってきたのだから、前の世界のように戦うという選択肢が思い浮かばなかったのは当然と言えるかもしれない。彼は無理に魔法を使うのをやめて、両手を多少高く持ち上げる。その何を使うのか迷っているような弱そうな構えを見て、太い男は笑った。


「なんだ、その構えは。躱すのも限界か? それでどうやって戦おうってか? 無駄だ無駄。まだ躱していた方が生き残る可能性があるってもんだ!」


 太い男がナイフ使いよりも前に出て、彼をまっすぐに殴りつけようとした。かなりの勢いがあるようで、既に風を切る音が彼の耳にも届いていた。その素早いはずのパンチを、彼は軽く回避して、相手の腕の下に自身の肩を入れた。そのまま肩を持ち上げて体を回転させながら、相手の腕を両手で引っ張る。相手の勢いを、利用して相手の体を浮かせて、さらに腕を引っ張り、相手を地面に叩きつけた。


 綺麗な一本背負いが決まり、相手は受け身もできずに、地面に背中を叩きつけた。その衝撃が相手の口から咳を出させて、何度も咳をしていた。その間に、ナイフ使いが彼の近くに移動していて、彼に小回りを混ぜた素早いナイフ捌きで、彼を攻撃していた。しかし、彼は躱したナイフを持つ相手の手の甲の辺りに手を置いて、相手のナイフを持つ手を弾く。弾かれた手はもちろん、すぐに戻すことはできない。その間は相手の体はがら空きだ。その体のみぞおちの辺りに掌底を軽くぶつける。相手が怯んだのを確認する前に、続けて、下から顎を狙って拳を当てる。今度は軽くではなく、思い切り下から突き上げたものだ。その攻撃を受ければ、人間である以上、怯まないはずはない。相手の視界はグワンと揺れていて、彼が目の前にいるというのに、視界を正しく認識できない。それで、彼が近づいてきているのがなんとなくわかり、ナイフを適当に振り回す。適当に振り回したナイフが彼に当たるはずもなく、今度は相手のナイフを握る腕を取り、背負い投げをした。知らない技を受けた相手は自身の体がぐるりと回るような感覚の中で混乱した。背中に受ける衝撃で空気が出ていく。ナイフを握った腕がひねられて、体が勝手に回転して、腹が下になる。そのままさらに腕をひねられて、背中に手の甲が付いていた。ナイフを握り続けることはできずに、彼は自身の背中にナイフを落としてしまった。


 ナイフ使いを抑えている間に、無手の男が起き上がって彼に向かってきていた。視界の中でそれが見えて、彼はナイフ使いが落としたナイフを拾い上げた。下に組み伏した男の顔を蹴り飛ばした。その瞬間、ナイフ使いは意識を手放した。ナイフ使いの体が弛緩したのを見て、気絶したことを確認してから、無手の男の方へと向き直った。


「なんだよ、いきなり。やっぱり、手加減してたってか? ずいぶん、なめたマネするじゃねぇか」


「ああ、いや、手を抜いてたわけじゃない。魔法だけで戦おうとしていただけだ。そんな、思い込みをしていただけだ」


 それは自室ではあるが、魔術師は前衛がいる場合のみ、魔法のみで戦うことができるのだが、魔術師でも一人で戦う場合は、剣や杖など他の武器を組み合わせて戦うのだ。そもそも、魔術師は一人で戦う状況にならないように戦うのだ。それを彼は、一人で攻撃方法を魔法のみと縛って戦っていたというのだ。相手が弱いからこそ、その手加減がで来たのだと言っているも同然だった。

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