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目立つだけの悪 4

 ハルエラたちが戦っている横で、ベルシャインが鎌使いの手長の男と戦っていた。彼は何とか、相手の攻撃を抑え続けているが、明らかに彼の力量が足りず、彼が攻撃を挟む隙を見つけられなかった。それでも、彼は鎌に剣をぶつけて、弾き続けていた。手に多少し痺れを感じているが、それでも、剣を握る手を離すことはできないのだ。


「いい加減にしてくれよ。これだけやれば、わかるだろ? 王子サマの実力じゃ、足りないってなっ」


 相手がついに、両手で同時に鎌を彼に当てようとしていた。それでも彼は鎌を抑えた。相手の鎌が彼の剣に引っかかっている。それでも、力で彼は押し負けているわけではない。彼は相手の鎌を押して、剣を振り上げた。一歩だけ、力強く踏み込んで、剣を下に振るう。まっすぐに振り下ろされた剣は相手の体を傷つけた。しかし、それが深手にはならない。あくまで、少量の血が流れる程度だった。そして、彼が相手の近くに移動してしまっていた。敵の鎌の先端が彼に向かって、振り下ろされようとしていた。彼は相手の横を抜けて、攻撃を回避する。


 彼が踏み込んだところで、戦いの流れが変わったのを彼は感じていた。相手の後ろに回り、振り返りざまに相手の背中を切りつける。しかし、相手も何もせずに相手の攻撃を受けるようなことはなく、彼の攻撃を簡単によける。そして、相手も彼の方に振り返ると同時に腕を横に振るい、鎌の先端を彼に突き立てようとしていた。彼はその攻撃を身を低くして躱して、剣の先端を突き出して相手の腹を狙う。それでも、相手は体を引いて、ぎりぎり剣を回避できる位置まで下がる。距離を取られると、相手の方が有利になることは、先ほどと同じことになることは簡単に予想できたので、彼は相手に攻撃される前に距離を詰める。今度は一歩ではなく、二歩前に出ながら、剣を腰のあたりで前に突き出すように構え、二歩目を踏み出すと同時に剣を前に突き出した。彼の剣は相手の腹の辺りに突き出した。しかし、その剣が敵に当たらないことを彼は、自身の超能力で知っていた。剣をずらしてもその未来は変わらず、相手は剣をずらしたのと同じくらいに体を動かすのだ。


「それで少しはやったつもりか? 王子サマは、王宮で大人しくしておけばいいんだよっ!」


 彼の攻撃はさらに激しくなる。彼は変わったはずの流れが無理やり、相手の方へと引き戻されているのを感じていた。何とか相手の鎌さばきについていくが、消耗は明らかにベルシャインの方が大きい。体力的にも技術的にも相手の方が上なのだ。相手の動きにかろうじて、付いていけているのは、彼には超能力があるからだ。未来を見ることができなければ、最初の段階で負けているだろう。そもそも、戦うという選択肢はなかったはずだ。


「ほんっとにしつこいな!」


 相手の大ぶりな攻撃が彼の剣を弾き、腕が持っていかれているが、それでも手を離すことはなく、無理やり腕を正面に持ってきて、相手の次の攻撃をぎりぎりでさばいている。剣がぶつけられないときは、体を動かして、何とか回避する。相手の攻撃を先に知ることができるからこそ、そういう動きができているのは間違いない。だが、未来を知ることができるとは言っても、彼には決定的な実力差がある。それは、超能力で補えるほどの差ではなかった。


 ベルシャインは息が切れ始めていた。そろそろ、腕も限界だ。剣から手が離れないのは、気合いではなく、握りすぎて、手がその形に固定されているからだと思える。もはや、前のめりに倒れて、この状況から解放されたいと思う自分がいることも字買うしている。だが、それでも、倒れるわけにはいかないのだ。龍樹と肩を並べて、戦えるほどに強くならなくてはいけない。彼に信頼されるくらいには強くなければならない。その矜持だけが、彼をその場に立たせていた。


 そのタフさに相手は、嫌気を通り越して、恐怖すらわいてくる。後、どれだけ攻撃すれば、相手が倒れるのか。それすらわからない。相手の鎌を叩きつける攻撃にも不安が乗り、衝撃も小さくなっていた。


「どうしたんですか。先ほどより、弱い攻撃を打つなんて、貴方も体力切れですか」


 体力が切れているのはベルシャインも同じはずなのに、有利であるのは自分であるはずなのにと考えているが、それでも目の前のただのガキに勝てるイメージがなくなっていく。どんな攻撃を叩きこんでも倒れない。そんな敵を相手にして勝てるイメージがある人間は一人もいないだろう。一度感じた不安はそうそう消えることはない。攻撃が弱まったところで、彼は相手の大きくなった隙を付いて、相手の腹部めがけて剣を横に振るった。すっと、素直に剣が相手の腹を切る。血がドロリと出て、相手は後ろに下がって、膝をついた。


「なんだと……? 躱しきれなかった、だと」


 相手はそれ以上動くことはできなかった。

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