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怪異の道  作者: 秋月煉
1/3

久しぶりの新作です。楽しんで頂けたら幸いですが、怖がって貰えますでしょうか・・・?

こちらは、企画参加作品ですが、秋月の別作品『霊感探偵』に出てくるキャラクターが出てきますが、単体でもお読みいただけます。

ではでは、ゆっくりとお楽しみ下さいませ・・・・・。


「実は・・・」


こんな、自分でもよく分かっていない、そんな事を、私は今、目の前にいる人達に説明しようとしている。でも、私自身、あの出来事がどうしても夢だとは思えず、藁にもすがる気持ちで、ここに居る。


「まぁ、緊張為さらずに、さぁ、お茶でもどうぞ」


目の前に居る、爆発したような、独特なヘアーの中年の男性は、何処か憎めないような人で、緊張でガチガチの私に、香り高い緑茶を勧められた。遠慮がちに、高そうな茶器を持ち上げ、一口、喉を湿らせた。思わず、盛大なため息が出てしまう。


「ありがとうございます・・・実は、ちょっと自分でも分からない、不思議な事があって、それで相談した知り合いから、此方を紹介されたんです」


「えぇ、矢上くんから、報告を受けていますよ」


矢上というのは、私の小学生からの同級生である。とても仲が良くて、他の数人とよく、一緒に遊んだものだ。その中でも、頼りになるのが、矢上くんであり、こちら側に詳しい人だから、私は迷いなく彼に相談した。


「そうでしたか・・・実は三日前、バイトの帰り道に、本当に不思議な体験をしたんです」


◇◇◇◇◇


私のバイト先は、学校の近くだから、帰りにバイトをしてから帰宅している。途中、駅から駅までを徒歩で歩いていく場所がある。近い路線で、違う鉄道が走っているからなのだが、駅で乗り継ぎすると、遠回りになるため、歩いていくのだ。

普段から、迷った事が無いこの道で、私は気付いたら、全く知らない場所を歩いていたのだ。


「あれ? どこよ、ここ!?」


慌ててスマホを出したけど、まさかの圏外表示に、パニックになる。間違いなく、いつもと同じ道を歩いていた。だから、間違うはずがないのに・・・・・。辺りはポツリポツリと、頼りない街灯があるだけの、一本道。左右には今時は珍しい、田んぼが広がっている。いつの間に・・・。

私が電車で外を見るのは、昼間だけだが、駅の近くにこんな広い田んぼがあったなんて、記憶にない。とにかく、来た道を戻ってみる。

ーーーーーあれ? 間違いなく、戻ってるはずなのに、景色が変わった感じがしない・・・。

背筋がゾクゾクと泡立ち、嫌な感じがしめてくる。怖くなって、また、来た道を戻った。怖くて、段々と足が早くなって、最終的に全力で走ってた。呼吸が荒くなってくるけど、怖くて無理矢理走り続けた。でも、やっぱり限界は来て、とうとう足を止めて、辺りを見たら、やっぱり景色は変わらなかった。

・・・・・どうしよう。

途方に暮れ、バックをギュッと抱き締めたら、ふと、バックに見えないように付けた、御守りの存在を思い出した。バックから、御守りを出して、右手でギュッと握り締める。

どうか、怖い物から守られますように!

まだ、怖くてたまらなくて、他にも持っていた、水晶のブレスレットーーーーー出し忘れたやつーーーーーを、右手につけて、財布にいれてた、金運守りに、手帳に付けた恋愛守りまで、引っ張り出して、そちらは左手に持つ。明らかにおかしいのだが、今は怖くてたまらないのだ。

辺りは暗いまま、時間だけが過ぎていく。聞こえる音も、虫の鳴き声だけ・・・。

そんな時間に、ふと、遠くから、車の音がした。間違いなく、車のライトで、思わず見入ってしまう。真っ暗な中、ポツリポツリとある街灯よりも、何故か車が来て、妙に安心したのだ。近付いて来た車は、軽ワゴンで闇夜に浮かび上がる白。そして何故か、車が私の横に止まった・・・。

思わず、警戒したけど、運転席に居たのは、若い女性で、心配そうに此方を見ていた。着ているのが、ラフな動きやすい物だったから、近所の人になのかもしれない。


「こんな暗い中で、どうかされましたか?」


怖くてたまらなかった私は、久しぶりに自分以外の人の言葉を聞いて、警戒よりも、安心が勝った。


「・・・あの、お恥ずかしながら、迷子になりまして」


「あら、大変・・・ここ、携帯繋がらないのよ、大変だったでしょう? 何処から来たの?」


明るい女性に聞かれ、素直に来た駅と向かう駅を答えた。


「そこまでなら、車で途中まで送ってあげるわ」


茶目っ気たっぷりに答えた彼女は、親切にも車の向きまで変えて、私を後ろの座席に招いてくれた。


「ごめんなさいね、助手席に荷物沢山あるのよ、狭いけど許してね」


ちょっと荷物はあったものの、狭くは感じなかった。思わず、ホッとしてしまう。恐怖が少し消えた気がしたのだ。車の中は、暗いので良く分からなかったが、バックミラーのところに、御守りがあるのが見えた。何だか、それを見たら、本当に守られてる感じがして、今度こそ深く息を吸える気がした。


「大丈夫です、こちらこそ助かります、暗いし怖いしで、本当に困っていたので」


車はスムーズに、来た道を通り過ぎていく。歩くと、かなりかかった距離が、あっという間に過ぎていく。ものの10分程で、暗い道の先に、町の灯りが見えて来た。先程の苦労は、何だったのか・・・。


「此処まででいいかしら? ごめんなさいね、私も仕事があるから、でも、真っ直ぐに行けば、突き当たりで知ってる道に出るわよ!」


彼女が下ろしてくれたのは、高い塀が左右に伸びる場所で、どうやら町の灯りは、この塀に邪魔をされ、道の微妙な緩いカーブによって、遠くからは見えなかったらしい。確かに、これでは分からなくなるはずである。


「いえ、明るい場所に送って下さっただけでも、ありがたいです、ありがとうございます!!」


本当はちょっとまだ怖いけれど、明るいから、何とか我慢出来そうである。彼女は車をUターンさせて、また来た道を行くらしい。ご丁寧に窓を開けて、手を振ってくれた。好い人である。


「ありがとうございました!」


丁寧にお礼をして、明るい方へ歩き始めた時、急に右腕を思いっきり掴まれた。痛みを覚える程で、ビックリしてそちらを見ても、真っ黒い影があるだけで、“何も居なかった”。


「えっ!? な、何っ!??」


意味が分からず、必死で振りほどこうとしても、取れなくて、もう、パニックである。と、暴れていたら、急に変な声? 叫び声みたいな物が、身近な場所から聞こえて、そのまま手が自由になる。たたらを踏んだけど、何も見えないから、怖くて仕方なかった。


「大丈夫!?」


さっきの車の女性用の方だ。何かあったと、降りて来てくれたらしい。車のライトは前を向いているため、遠くの光がうっすらと辺りの輪郭を見せているだけだ。彼女もハッキリとは見えなかったけど、明らかに先程とは雰囲気が違ったように思う。


「な、何とか・・・一体・・・」


彼女が来た事で、今更だけど、掴まれた右腕から悪寒が走って、震えが止まらなかった。思い出した御守りを、必死に握るけど、手が小刻みに震えている。

私の気持ちなんてお構い無しに、また、変な音がする。真っ暗な闇の中、何かが動いて、何かが起きている。

もう、意味がわからない!


「すばしっこいわね・・・」


焦ったような彼女の声に被せるかのように、更に近くでまた、変な音がした。体がビリビリするような、そんな音に、彼女の焦った声で呼ばれた気がしたけれど、私の意識はフェードアウトしたのだった。


◇◇◇◇◇


「気付いたら、駅近くの神社の境内でした」


その後は、終電3本前くらいに間に合い、トラブル無く帰宅し、親には叱られた物の、その日は何事もなく就寝したのだった。


「ふむ、何かあったんですね?」


目の前に居る、爆発したような髪型の、哀愁漂う男性に聞かれ、私は素直に頷いた。あの時の恐怖を思いだし、体が震え出す。


「次の日の朝、気付いたんです」


寝るときに怖くて、御守りや水晶のブレスレットも着けたまま寝たのだ。塩で簡単なお清めまでした。なのに、朝に着替えている時に気付いた。

隠すように着た長袖の袖を、捲り上げる。


「うーん、これは・・・」


明らかに顔色が変わった男性に、不安感が増した。そんな私に気付いたら、直ぐに安心するように笑顔になったけど、今更だと思う。


「すいません、直ぐに担当者を着けますから、安心して下さいね!」


その後は、てきぱきと書類を何枚か書いてから、担当者だという、三人の女性を紹介された。矢上君は、外されたのが意外だった。


「初めまして、今回担当します、榊原です」


最初に挨拶されたのは、ビシッとブランド物のスーツで決めた、美しい若い女性だった。


「椎名です、宜しくお願いします」


次に挨拶したのは、可愛らしい今時ふんわり女性だった。服装も、可愛らしい女性らしいものだ。


「神戸です、宜しくお願いします」


最後に挨拶したのは、年若い少女で、髪を三つ編みにして後ろに流していた。眼鏡をしていて、ザ、文学少女って感じだろうか。服装は動きやすいものだ。

彼女達が、私の担当者だという。

次回は、7月12日に更新します。

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