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ストリングトーンの虹へ向けて  作者: 夜霧ランプ
第八章~何時か聞いた君の~
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6.無作法な視線

 複数の魔神が「エデンの境界」の東側に立ち、指示を待っている。

 城に居るカーラは、サクヤから受け取った魔力構造を読み込み、サブターナの左手と非接触に手を合わせて構造を意識転写した。

 サブターナの朱緋色の瞳が魔力を帯びて輝き、その魔力は城の中央の中庭から、境界線に居る魔神達に届く。魔神達は、守護の術で「エデン」を外部から隔離する、目に見えない防壁を作った。


 その頃、ジークの疑似形態(シャドウ)は「黙読の間」で検査を受けていた。ジークの体の再現度はかなり高く、左腕の神経の反応や、右腕の金属的機器の動きの反映等も正確だ。

 彼の体は右腕、左の膝下、右の膝上までが、人間の体そっくりの機械になっており、脳と内臓の一部も無機的なものに入れ替えられている。

「脳以外の、機械化されてる部分は全部取り外し可能だ。左腕はあんまりいじらないでくれ。生身なんで、他の所と同じように扱われると、多少痛いんでね」

 流石に、検査の時までふざけている様子はなかったが、機械化部分をほとんど取り外されているその姿は、ある種のジョークのように見えた。


 城の外への魔力の伝達を終えたサブターナは、ふと視線を上に向けた。城の内部や城壁より高い所を見ている。丁度、青い空が見える天頂を。

「何かが見てる」と、サブターナは口走った。それを聞いたカーラは、片手に魔力を宿し、サブターナの額に手を当てた。少女にしか分からない視線が、何処から来ているのかを読み取る。

 読み取るものを読み取ってから、「一度、建物に入ろう」と提案し、カーラは宙を見つめ続けようとしているサブターナを城の中に引っ張って行った。

 城の廊下を進み、教師のアナンの姿を探した。幾つかの間を通り抜け、思考の間とは別の、希少図書管理室に来た。そこで、鹿と人間を混ぜたような姿の女性は司書に本のある場所を聞いている。

 カーラとサブターナは、そっとアナンに近づき、耳打ちをする。

「誰かが、私達を観てたみたいなの。丁度……ユニソーム達みたいな視線で」と、サブターナ。

「視線の主は、この世界の者じゃない」と、カーラも囁く。「なんて言うんだろう。まだ、視線の主は此処に来てない。ええっと……光の速さって言うのと同じ速度で、視線だけが届いてる」

 アナンはそれを聞いて、窓のほうに歩いた。硝子の埋め込まれている窓を見上げれば、鈍く濁った青空が見える。

「サブターナ」と、アナンは囁き声をかけてきた。「それは、間違いないの?」

 問いかけられた少女は、黙って頷く。

 アナンは言う。

「カーラ。ハンナを通じて、外部に連絡を」と。

「それより、ジークさんに話したほうが良いと思う」と、カーラは提案した。「ハンナに教えても、結局は龍族の情報網に頼る事になるから」

 伝言ゲームになるより、その方が確実かと意見を整え、アナンは少女二名を従えて、黙読の間に移動した。


「霊気と魔力は併用可能なんですね」

 ジークを調べていた医学者の魔神が、黙読の間の外で言う。

「『向こう側のエネルギー』の無効化も、あの器が作っている形状の安定と似させられれば可能でしょうか」

 それを聞いていた、少し偉そうな魔神が言う。

「安定させてから、どのように有効化できるかが次の課題だ。その時にも、我々と人間、両方に無害な状態にしなければならない」

「物質的に形状を与える方法はどうでしょう」と、ある魔神が言い出す。「気体状ではなく、液体や固体に変換して、触れたりしなければ影響を起こさない物質に変換するんです」

 その意見を聞いて、さっきの少し偉そうな魔神が答える。

「それも一理ある。東の国の術で『霊符』と言うものが存在する。術を仕込んだ紙と言う媒体に霊気を含ませる方法だ。それを応用できないかと、術中にずっと考えていた」

 そんな事を話し合っている彼等の所に、蹄と踵を鳴らしながら、アナンと少女達が到着する。

「被験者との会話は可能かしら?」と、アナンは聞く。

「現在、分解したパーツを修復中です」と、魔神の一人が言う。

「パーツを修復?」と、アナンは眉間に皴を寄せて聞き返す。

「あの人物の体は、ほとんどが機械的物質で出来ているんです。あの霊体のような器は、機械部分の質感や機能も反映していました。それを調べるためにパーツを分解したので、その修復中です」

 説明されて、アナンは目を瞬かせた。

「霊力と魔力の固定方法だけを調べるべきね。余計な知識は手に入れないほうが良い」

「何故ですか?」と、医学者である魔神が聞いてくる。「彼の体の作りを応用すれば、とても高性能の『義手』や『義足』が作れます」

「欲を出せば、被験者を元に戻せなくなる」と、アナンはぴしゃりと言い、会議を打ち切らせる。「それより、被験者と直接話したいの。彼が黙読の間を出られるのは何時?」

「三十分後くらいでしょうか」と、魔神の一名が応じた。


 研究者達が体のパーツを直して不器用に接続させたものを、ジークは疑似形態(シャドウ)の機能を使って復元し、脱がせられていた衣服を瞬間的に「着なおし」た。

 魔神達の手の仕草で、外に出る事を促される。どうやら、この部屋では喋ってはならないらしい。分解されている時のジークのお喋りが許可されたのは、分解のために必要だったからだろう。


「光の速さで視線を送って来れるもの」と、ジークは聞いた話を復唱した。「光の速さねぇ……。なんてーか、俺はそんなに詳しくないけど、『流転の泉』から、また何か来るのかも知れんな」

「『王の目』の文は、全て燃やしたはず」と、アナンは口にする。

「どんな風に燃やしたんだ?」と、ジーク。

「危険でしたが……。削除エネルギーを放つ炎を作り、封印をかけながら処分しました」と、アナンは答える。「その時の術の影響で、数名の魔神が負傷し、今も治療中です」

「尊い犠牲をありがとさん」と、ジークは軽口を叩き、「その『王の目』って言うのは、具体的には何なんだ?」と訊ねる。

 そこから、アナンは文に刻まれたユニソーム達の術と、王の目と呼ばれるものは、赤い縦長の瞳孔と金色に光る虹彩を持つ、目のように見える銀河系団である事を説明した。

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