正しき少女のクロニクル
突然だが、「私は未来から来た」と言われて信じる人間がいるだろうか?
答えは否だ。
なぜならば、タイムマシンがあるとはにわかに信じがたいし、そんなものは漫画やアニメの世界でしかない。
もし未来から過去に行ったらその時代の自分に当選番号を教え宝くじを買わせ一等を狙うし、未来で主流になっているビジネスを過去の自分に教えたりして億万長者になるだろう。
だが目の前の女はそんなあり得ないことを言ってきているのだ。
銀髪で短髪、そして小柄。上下黒のスーツ着て、黒のネクタイを付けている。
容姿はなかなかといったところであろう。驚くことに大柄の男を抱えている。その男はぐったりとしており、まさしく狩人にかられた熊のようだ。
「は、はい…?」
「まぁ私は必要以上にエレメントに干渉する権限は与えられていないし、君のような少年の言うことを信じる大人はいないだろうから処理する必要はないかな」
何だか訳の分からないことを言っている。だがそれ以上に今の状況が全く分からず頭を恐怖が支配している。学校の先生の言う通り、何をしているのか気になっても危なそうな人についていく、危なそうな場所に行くのは危険が伴うということであろう。ほんと気を付けよ。次があるなら。
「しかし、迷彩をしているのにばれるとは驚きだよ。まるでエラーみたいな奴だな」
何かを脱ぐような動作をした後、男を地面に降ろす。その顔は驚きを隠せないと表情だけで語っていた。女にとっても僕に見つかるのは想定外だったのであろう。
「そ、それよりも未来から来たっていうのは……」
「それはいずれまた!」
恐る恐る聞いてみたが回答はない。そして彼女は、先程の表情が噓みたいに晴れやかに答える。正直、未来から来たとかいう女とは噓でも本当でも関わりたくない。
そう告げると女は一瞬で背後へまわる。このことを電光石火の早業というのだろう。直後、空間が歪み、意識が闇に落ちていく。
次に目を覚ました時には女は消え、その場に取り残されていた。