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今でもずっと死にたいあなたへ  作者: 世界の大やん
4章 3人目 引きこもり女は来ない明日を夢見る
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陰気ちゃんー終

外に飛び出していた。あんなに怖い世界だったのに、内も外も変わらなかったから。


逃げ出していた。これまでと同じ様に。


嫌な事から、見たくない事から、分かり合えない人間から、そして自分自身から。


もう駄目だ。私なんてこの世で一番価値が無いモノなんだ。


誰からも本当の意味では愛されていない事を知ってしまった。


愛して。愛して。誰か私を愛して。



駄目だもう。死ぬべきだ。何も残っちゃいない。


何も考えたくない。考えるのが怖い。


人の気持ちが理解できない。このままだと何かとんでもない過ちを起こす事になる。


何をしてでも奪う人間に!殺して、、、いや、、、駄目だ


盗んで?騙して?攫って?壊して?脅して?


手に入れる?何を?


お金。


それが幸せ?


幸せってどうやって手に入るの?


もう幸せは手に入らないのかもしれない。


何か自分の中で大切だったモノが無くなっている。


生きていたくない。


こんな自分を知りたくなかった。


こんな気持ちになりたくなかった。



幸せの質量は決まっていてそれは一定の数なのかもしれない。


つまり誰かが幸せなら、誰かが必ず不幸になる。


自分が幸せになるには誰かを不幸にするしかない。


二匹の獣がそうだったように。


それが社会で生きるという事なのか?


皆はそれを割り切っていて、その上で笑っているのか。


若しくは気付いていないのか。いや恐らくは見ない様にしているだけだ。


簡単に調べようとすれば出てくるだろう。今こうして平和に過ごしていても同じ地球、同じ時間に人と人とが殺し合っている。


生きるという事は奪う事なのかもしれない。


そんな社会で私は生きていく事は出来ない。でも死にたくない。


一人で自殺を選ぶ事も出来ない弱い自分はより弱い人間を・・・出来ない。それだけはしたくない。


せめてこの身が汚れようとも心だけは清く正しく生きていたい。



涙は流れるままに、魂は吐き出てしまった


「もうどうなってもいいや」


私は駅の端で少しでも人が良さそうな男を見つけてその男に全てを委ねた。



*****************




「これが私の人生です。空っぽ過ぎてこれが人生だなんて大層な事は言えないですけど、ご清聴ありがとうございました」


先程まで口喧嘩していた気楽女に急に抱き締められた。


「どどど、どうしたんですか?急に」


「ウチにはこんな事しか出来ん。辛いなぁ、、、辛いよなぁ何でウチラなんやろな。こんな事しか出来なくてごめんね。本当にごめん」


此処に来れて良かった。これだけでも私は救われた。


「あれ私何で・・・」


笑顔は作れている。でも目からは


「うぐっ!うわぁあああああああんー」


初めて人の目が気になる事も無く泣き叫んでいる。


「私の人生は何も無くて、特別な思い出も無くて、人の為にも成れなくて、こんな人生を変えなくちゃいけないと何度も思って」


痛い位に抱き締められる。


「そう思っても自分に自信が無くて、何をしてもダメで、生きているだけで人に迷惑を掛けて、今もこうやって皆さんに迷惑を掛けている。」


「もういい。アンタの事はウチが認める。だからさっきの事は本当にごめん。ウチが、、、私が勝手に貴方の事を値踏みしてた」


「そんな事無いです。貴方も、その前の貴方も本当に辛い思いをしていたと思いますから、それでも立派に生きてて私とは違う。だから怒っても仕方ないと」


「もうっ!また怒るで!」


気楽女は陰気女の口を塞ぐ。


「ボクは空っぽの人生だなんて思わないですよ。」


赤目女が目を逸らさずに陰気女を見ている。陰気女も外す事は無い。


「貴方はそれほど辛い目に遭っても真っ直ぐに生きて来た。それは簡単な事じゃない。貴方の気高き心は尊敬に値します。その気高き心のまま死ねる事を、、、ボクは正直、羨ましく思っています」


珍しく赤目は余裕の無い表情を見せる。


「そんなモノじゃないです。けどそう言って貰えたら少しだけ救われた気がします」


初めて仲間と一緒に集まって、同じ目的に外れる事なく向かっている。


「私は幸せだぁ」ポツリと呟く。


「キミは本当に凄い人間だよ!僕にはとてもそんな選択を出来なかった。君は強い人間だよ」


丸い男が尊敬の眼差しを向ける。




ここには辛い思いをした人間しか居ない。


分かっては居るが何故、境遇も性別も、感情も違う筈なのにこんなにも心が痛むのだろう。


この痛みこそが人間なのだろう。


後頭部のたんこぶの痛みも薄れてきた。


人間だけが自殺を選んでしまうほどに繊細な動物なのだ。


それでも疑いは掛けていた。


この人は実際に行動に移せている。自殺前の予兆の一つとして酷く攻撃的になるというモノがある。


死が身近にある軍隊等では殉死する事を厭わなくなるという傾向が見られる。


自分の命を顧みずに他者や社会に攻撃する事があるのだ。それは元の性格は関係しなく我が国でも自分の意志で自爆特攻を繰り返した史実がある。


彼女の中で母に裏切られた時に強く願ったモノは何だったのだろう?


それは例え醜くとも生きる事を肯定させたかったのかもしれない。


話の最後も曖昧だった。


駅で男と会ってからはどうなったのかが語られていない。何故、話さなかったのか?


「君に聞きたい事がある」


陰気女は私を信頼した目で見ている。

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