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今でもずっと死にたいあなたへ  作者: 世界の大やん
3章 2人目 余命2カ月の不治の病の女
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気楽ちゃん⑩

こちら側の世界とあちら側の世界の国境沿いで何か大切な魂の欠片を失くした少年が居た。


私の中の根底にあったこっち側の人間だけ恵まれていないというある種の劣等感は吹き飛んだ。


境界なんて関係ない。


何処の世界でも辛さは、悲しさは同じ様にあるんだ。


そんな簡単な事に気付かずに私は自分が世界で一番不幸な人間だと思っていた。


尋常では無いその少年の魂の叫びにたじろぐことも出来ない。余りに異様な光景だった。


義姉もただ立ちすくんでいる。


やがて少年は前も見ずに走り出し影へと消えていく。


庭に配置されている常備灯がやや薄暗くなった私を照らし、自分の持ち場を思い出したようにスポットライトを向ける。


それでも私は動けなかった。


義姉はフェンスを越え雛鳥を見る。全く動いていない。掬い上げると微かに鳴き声を漏らす。


「まだ生きている。先生を呼んで来て!」


銃口から放たれた弾の様に私は走り出す。不思議だ、こんな風に走れる身体では無い筈なのだ本来は。


だが一刻、痛みも苦しさも忘れていた。


これで救える命が有るかもしれない。こんな私でも救える命が、人によっては見ない振りするような命でも私達にとっては人間もそれ以外も関係なく死んで欲しくは無いのだ。誰よりも死に近いからこそ命の重さを知っている。


そしてここでこの雛を見捨てる事は、学校のクラスメイトが私の事を無かった事にしているのを肯定する様で嫌だった。すれ違う人が私の顔を見て目を逸らして逃げていくのと変わらない。


誰かの助けを受けたら、次は私が助けるのだ。私自身が義姉によって助けられた。




<廃病院>


「確かに僕の子供の頃の話と似ている」


不運な男は信じられないと顔を伏せる。


「でもそれだけでは僕と思えない」


「ウチと貴方は多分同じ年齢だと思うよ。17歳でしょ君」


「そうだけど何故分かった」


「名札が落ちてたんだ。○○君。君の名前は〇〇君って言うんじゃない?」


「そうだよ、、、こんな事が、、、雛は、雛はどうなったんだ?」


「うん。雛鳥は私と義姉ちゃんが助けたよ」


「生きていたのか!良かった・・・それで君達が飼っていた訳か」


「ううん違うよ」


「何で。命の重さを知っているんじゃなかったのか。」


「最後まで聞いて。私達は雛を助けた後、良くなるまで看病した。餌を与えて折れた翼に添え木をして、2週間もすると動けるようになった。ピィーピィー周りから苦情が出る位に元気になった。雑菌とかあるから外で面倒を見ていたんだけどね。そしたらさヤケに近くまで来る鳥が来たんだ。直ぐにピンと来たよ」


「まさか親鳥が迎えに来たのか、、、今更」


憎悪の顔を見せる男を全く気に介せず


「雛鳥は分かるんだねやっぱり。親鳥が来てくれる事が。そして心配で心配で仕方無かったんだ。だから探しに来たんだよ。何処かで鳴いてるんじゃないか。動けないまま横たわってるんじゃないか。」


「そんなのは憶測だ。勝手に人間がそう思ってるだけだ。」


「そうかもしれないけど、そしたら君の見捨てたと言うのも憶測だよ。親鳥は来たんだから。だから私達は返してあげたんだ。元の巣に。母と父の所に」


「違う。良くなったから来たのかもしれない。助かった所を、他の誰かの力でまともに育った所をいい所取りして、それまでの事なんて無かったかのように振舞うんだ。」


「でも雛鳥はそのお陰でちゃんと巣立てたんだよ。巣立つ所見たからさ一緒に」


「そんなの。そんなこと、、、でも雛は助かったのか。僕はちゃんと確認もその後も見ていなかった。相手の気持ちを知ろうともしなかった。」



私が13歳になる頃、立派に成長したツバメは私と義姉が見える所まで来ると、歪にフラフラとしながらも大きな空へと旅立った。


妹と私の容態が急変した。自分の身体は自分が一番分かる。死ぬ時が来た。

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