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今でもずっと死にたいあなたへ  作者: 世界の大やん
3章 2人目 余命2カ月の不治の病の女
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気楽ちゃん⑨

その人は普段はとてもおとなしい人だった。


何というか本人は天然なんて少しも自覚してないが、一緒に居ると何とも言えない不思議な時間が流れるのだ。天然と不思議ちゃんは多分同義語だと私は思う。



「あんな風に怒ったりもできるんですね。普段と違うので驚きました。」


感謝の意味を込めて後日挨拶に部屋に訪れる。


「おお。元気そうで良かったわぁ。ウチやって怒る時は怒るし、やる時はやるよ」


やる時とは?


「私は弱い自分が許せなかったし、自分がした事が良くない事で罪を犯したと感じました。」


「何でそう思ったん?」


「一度だけ死んでいった仲間の一人の家族が、あんな風にワガママを言う子じゃなかったと言っていたんです。」


「ふんふん。それで?」


「その人自身を変えてしまったのは私なのだと思います。」


「ちゃうやろ!」


厳しいツッコミが入る。


「最初にその人が変わったのはアンタのお陰やとは思うよ。せやかてその人自身が変

 わっていく自分を認めたからや。だから自身で決めた事やと思うし、ワガママの一

 つも言えない人生楽しいか?ウチは嫌やわぁー。はい。はい。仰る通りです・・・

 ってかぁ?」


独特のイントネーションがあるせいで良い事を言っていても不思議と笑ってしまう。


「何がおかしいんや?」


「いえ、○○さんは生まれは何処なんですか?」


「関西の方やで」


「関西の何処ですか?」


「うーんとそのアレや、なんやったっけなぁ」


「広島とかですか?」


「そうやねそのへんやね。」


「その本面白そうですね。”たわ”ないなぁ。見たいのに」


「たわない?」


「何してるんですか?”ぶちころがし”ますよ」


「ぶちころがす!?何されるんやウチ?」


「広島の人じゃないですね。”たう”は届かない。”ぶちころがす”はぶち殺すって意味

 です」


「怖っ!急に何でそんなこと言うのよ!あっ」


「ふふふ。あははははは」


「年上からかって楽しいかぁ」


「すいません最初から分かってましたから、色んな方言が混じっているので似非関西人なんですよ。イントネーションもおかしいし」


「練習中なんです。私は此処から出た事も無いですから」


お尻が大きいからか怒って後ろを向いた時にアヒルの様にお尻を振っている様に見え

 て可愛かった。


「何で関西弁なんです?」


「その方が人と打ち明け易いと思ったからです。本にも書いてあったし」


『人と仲良くなる為の関西弁ー第二の故郷大阪編』という本が置いてあるのが見え

る。


「私が方言に詳しくなかったら良かったですね。まぁ関西住みの人からしたらむず痒い上に関西人じゃないってすぐばれて何処の人か尋ねられると思いますが」


「大丈夫です。新大阪県に住んでるって言うから」


「それ、、、マジで言ってますか?」



人を和ませる天才だった。言葉遣い、所作、顔立ち、どれを取っても面白い人だったし、年上なのに親しみやすい人だった。


私にとってのもう一人の姉は難しい事を忘れさせ、どこかアニメーションの中に居るような夢心地にさせてくれる温かい人だった。


毎日の様に遊びに行った。この人といる事が幸せだった。



いつもの様に部屋を訪れる。


いない。


急に来る嫌な予感はトラウマでもあった。


ここではいつ死んでもおかしくない人しか居ない。だからここに居ないという事は・・・



「おーいこっちやでー」


ベッドの下から声が聞こえる。


「出れんくなった。助けて。」


手だけがひらひらと挨拶する。


「何やってるんですか本当に」


「たまには脅かしてやろうと思ってなぁ。どや?驚いたろ実際」


「ええ驚きましたよ。色んな意味で」


「そやろ?ドッキリ大成功やんなぁー」


雑に引きずり出す。


義姉は庭に行かないかと提案してくる。私は少し考えついて行くことにした。




相変わらず境界の先に幸せそうな笑顔がある。睨む訳では無いが自然とそんな顔になってしまう。


義姉の顔を覗く。同じ様に少し寂しい顔を見せた事に驚いた。いつも笑顔を絶やさない人なのに。


「ええ笑顔で遊んどるなぁ」


「そうですね」


「たまになセンチメンタルになんねん。ここを中心にあっち側とこっち側に分けられてる事が悲しくてなぁ。こんなフェンスは簡単に越えられるかもしれんけどそう言う事じゃないねんな。越えても向こう側の人間にはなれないねん。」


「私は2年間だけ嘘みたいに健康でしたからあちら側に居ましたよ。自分はいつまでもあっち側の人間になれると思っていました。」


「まぁ考えてもしゃあないなぁ!こっちはこっちで楽しくしようや。一緒になんか小説でも作ろか?」



義姉の言葉も耳に入らない様な、目を離せない光景がそこにはあった。


一人の少年が道路で大声で泣いていた。その先には落ちた雛鳥が音も立てずに横たわっている。


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