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今でもずっと死にたいあなたへ  作者: 世界の大やん
3章 2人目 余命2カ月の不治の病の女
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気楽ちゃん⑧

私は何故生きているのだろう。


誰よりも生きたいというかこのまま死にたくは無いという気持ちは確かにある。


でもそれはこのまま病気に負ける自分が嫌だったんだ。どちらかと言うと、負の気持ちを生きる理由にしていた。


だからどうしても気持ちが途切れてしまう事が有るのだ。


ずっと生き抜いてやるという気持ちはもちろんある。


だが人間生きていく上でやはり幸せが生きる為の第一原動力だと考えてしまう。幸せは問答無用で生きる力をくれるし、心の余裕は人を穏やかにする。


どちらも無かった。


私は自分の思い付きで皆を集めた事を後悔していた。皆の気持ちを知ってしまったから、言葉とは裏腹に割り切るには私は幼かった。




気が付くと私は自分で手首を引っ掻いて死のうとしていた。


私の場合はそれに対して処置をしない限り死ぬことが出来る。


血が一度にたくさん出ると、不思議な感じがする。


心臓の音がやけに大きくなり、他の音が全く入らない様な超集中状態でまるで地球の重力が強くなったように体の動きは遅くなりゆっくりと時が流れるになる。


こうしている間にも鮮血はシーツを染めていく。時間が遅くなっている訳では決して無いのだ。


シーツが一通り血を吸い死の模様を描くと、病気で不味い私の血を吐き出すかのように端から血の滴を吐き出す。


そして私の身体から抜けた血は水溜まりになり、やがて張力を崩し一筋の川となり、どんどん遠ざかっていく。



「頑張ったなぁ・・・とっても綺麗」


思わず口に出る。


私の最後の言葉はこれで終わりそうだ。臨終の言葉なんて考えてはいなかった。


でも勝手に言葉は出てくる。その人の本音が死ぬ前には必ず出てくるのだ。


だから私の事を天使だなんて、好きだなんて、最後まで怖がったり、安心したり、悔しがったり、どの言葉も真理だった。


私は自分が思っていたより弱かったのだ。想いを継ぐことは出来ない。


何だかんだ自殺しようとするのは初めてだった。


今までは瀬戸際で何とか堪えていたからだ。恵まれていると思う。


私の事を第一に考えてくれる家族がいる。でもそんなの関係なく、心の闇は確実に私を蝕んでいる。家族の支えとか誰がどれだけ癒してくれるとかではない、私自身が死を望んでしまう時間が確かに有るのだ。もうそれ以外を考えられない様なまるで麻薬のようだ。



「それで良いんか?」


「・・・」


無視した。うるさいお前に何が分かる。


「アンタがその選択をしたくなるんは分かる。けどなあ残されたウチはどうなるん?ウチが最後の時に思い出してでも欲しいんか。キッツイのは自分だけやないで。気持ちは分かるけどなあ」


「ほっといてよ!結局自分の気持ちを救えるのは自分だけなのよ。縋って描いて叶えて虐げられて絶望した私の心を救えるのは私だけ、私がやるしかない」


ああこの人は優しいなあ。その選択をしてまで、私が死ぬ事を選んだ時辛いのは自分なのに。


「アホ言うなや!医者は何故ウチらを助けるんや?死んでいったアイツ等は誰か一人でも自分で死を選んだか?家族はアンタを見捨てたか?」


全部図星だ。返す言葉も無い。悪い事をした時に叱られた幼稚園児の様に”わんわん”と泣き出す。


「泣きたいなら泣け。それが生きてる証拠や。ウチはアンタの自殺を止める。それでええか?」


一言頷くと彼女はシーツを破り、私の上腕部を強めに縛る。そしてナースコールをする。


100m走の後の様に息を切らした看護師が来て私の状況を見て応急処置を施す。


医者の目が変わり必ず助けると言う気持ちが伝わって来る。


似非関西弁のお姉さんは私に生き方を教えてくれたし、命の恩人でもあった。今の私が有るのはこの人のお陰だ。


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