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商国ベルク建国記(仮名  作者: らーめんふくお
序章
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序章 商国ベルク建国記


「通貨は万物に対し平等に価値を、人には欲望と秩序を与えたが、幸福だけは平等には与えなかった。」

―ラルクマン=ベルクドット(ベルクドットⅠ世)



序章


783年の寒冷期を迎える第五季に、1台の馬車がベルク王国の王都オフィールの門を潜った

馬車は王城前にて停車し、中から一人の男が降りて王への謁見の為王座の間に向かった。



王座の間では、既に王と王妃が待っており、男は王の前で跪いて王に挨拶の口上を述べる


「国王並びに王妃様、この度は私の嘆願をお受けいただき誠に感謝いたします」

そう口上を述べる男は、気品ある服装で髪は長く後ろで束ね

それでいて白髪で真っ白に染まった50代後半の中老の男だった。


「よい、元気そうでなによりだなラーク、いつぶりか?」

年齢は50代前半と推測される、逞しい髭をこさえた男が玉座から尋ねる

後に千年国家と呼ばれたベルク王国の国王、ラルクマン=ベルクドットであった。

隣には王妃のオフィーリア=ベルクドットがにこやかな顔をしながら王座に腰かけ

のんきに中老の男に手を振っていた。


「両陛下に置かれましても、息災であるようで何よりでございます」

二人の顔を見て、懐かしそうな顔をしながら中老の男は続ける

「最後にお会いしたのは、戦勝の折国家樹立を宣言された式典でございます」

「なのでおよそ10年程度でしょう…あの頃に比べると互いに老けられましたな、王様」

王にラークと呼ばれる中老の男は続ける。


「それで…事前にお送りした嘆願書についてお目通しいただけましたでしょうか」

恐る恐るラークが尋ねる。


「ああ、お前の嘆願書は目を通した、まさか私達のなれそめまでもを書物にしたためたいとは…」

「お前でなければ罰を与える事まで考えねばならなかったがな!ハッハッハ!」

王様は笑い飛ばした


「その説は恐れ入ります…」

「此度の嘆願書の趣旨ですが、時が過ぎるにつれ国民の中には王の偉業を知らずに生まれ死に行く者や移民旅等が多くなります故、我が国の”建国記”を編纂することにより末永く続くであろうベルクの歴史に不変たる伝説を刻む為、偉大なる両陛下が何を考え、何を成したのかを…」

中老の男は熱く語るが、王は話を遮り言葉を返した


「よいよい、趣旨は理解した、それに偉大でいえばお前もそうだろう、友よ」

「あの日、お前がいなければ私たちは22年前にの垂れ死んでいたのだから」

王様は話を続けた。


「まあよい、では話るとするが…それには初めから話す必要があるな…」

王は逞しい髭をさすりながら、何かを考えながらに天井を見上げた。

そして何かを思いついたようなしたり顔を浮かべ、ラークに尋ねた

「ラーク、この話はとても長くなるからな、代筆の従者を呼べるか?部屋を用意しよう」


「と、いいますと?」

やはりか!という顔をしながらラークは尋ねる


「当面は帰さないってことだよ、取り合えず話は明日にしよう、今日は宴だ!久しぶりに酒でも交わしながら話そうぞ!!」

王は、久々に顔を合わせる友を前に、普段の公務では見せない笑顔を浮かべ嬉しそうに話す。


「はは、、、予想はしておりました…それでは出版まで口外を絶対にしない、飛び切り口の堅い私の倅を連れてきましたので、彼に代筆させましょう。」

ラークは苦笑いして答えた


「おお、あの小さな子供か…名を何と言ったか?」

「メルクといいます、今年で20になります」

「そうかそうか、では倅も呼ぶといい!」


王はそう言うと手を叩き、横に控えていた大臣に宴の手配を指示を出す。

大臣は「お体に障るので酒は程々に!」と言いながら王の間を後にし、準備にかかった。



その日の晩は大いに賑わい、次々に並ぶ空の酒瓶に大臣はあきれて首を振っていた。

その宴は夜通し続き、食堂では明け方まで笑い声が響いた。



 ◆



翌日正午、王とラーク、倅のラルクは王の書斎に通され、話が始まった。

「私はおそらく王様や王妃様と一番長いですが、私ではなく息子に伝えるつもりでお願いしたい」

ラークは、途中で話が飛ばないよう予めそう伝えた。


「そうかラーク、私の口からお前の武勇伝を息子に聞かせたいということか!」

昨夜の酒のせいか上機嫌な王はにやけながら言うと


「そ…そんなつもりではないですよ、王様も人が悪い!」

ラークは即座に否定した、顔を赤らめるあたり全く違うわけでもなさそうだ。




少し間を置き、刹那の静寂が訪れると王は語り始めた

「これから話す事は、実は王妃との秘密事でな…王妃と話し許可を取ってきた」

「それはタイミング次第ではこの国ラルク、そして私、ラルクマン=ベルクドットの名に影響を及ぼすような内容でな…」


固唾をのむ音がした、羽ペンを片手に聞き入るメルクだろう。


「俺がお前と出会う前、今は都市サイモンがある場所にとある都市国家があった」

「そこでは、オフィーリア王妃はその国の姫君、俺はは一介の王直属の近衛騎士だった」

一人称から威厳が剥がれて語るその男は、民衆の前に立つベルクドット=ラルクマンではなく

ベルクという一人の男として、懐かしむように、そしてどこか悲しい顔をしながら話していた。



「そう、あれは今日みたいに肌寒く、木枯らしの吹く…乾燥故か木々も庭園も、それはそれはよく燃える日だった」


そうつぶやくと、ベルクはこれまでの経歴について語り始めたのだった…

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