乙女ゲームが始まらない？
初めての執筆、投稿になります。
大好きな悪役令嬢、乙女ゲームを題材にしました。
拙い文章ですがよろしくお願いします。
「我が家の天使ローズマリー。来週、お前の14歳の誕生日にカイン王子が我が家にいらっしゃるよ。ローズマリー、お父様が一緒だから緊張しなくても大丈夫」
わたくしの名前はローズマリー・サファイア。
キャンデリア王国のサファイア公爵家の一人娘でございます。
2年前、お母様が不治の病に倒れられてからというものお父様の溺愛に拍車が掛かりちょっと重い今日このごろでございます。
我が国では婚約者を15歳の学園入学前に決めることが多いのですが、「臥せっているマリエッタを少しでも安心させてあげましょう！」というお母様の親友である王妃様の鶴の一声で、王妃様のお生みになったカイン第一王子殿下と2年前に婚約の運びとなりました。
まだ社交界に出ることのないわたくしは14歳になった今日初めてカイン王子殿下お会いすることとなります。
カイン王子殿下は王妃様譲りの銀髪でとても美しいお姿だと聞いております。そして個人資産で孤児院の運営にも力を入れているという素晴らしいお方なのです。
わたくしは藍色の髪を侍女に編み込んでもらい、お父様から誕生日プレゼントにいただいたうす紫色のドレスに着替えその時を待ちました。
―――――――――――
「カイン王子殿下、ようこそいらっしゃいました」
父がそう言って、我がキャンデリア王国の第一王子であるカイン王子をにこやかに迎えております。
「殿下、こちらが娘のローズマリーです」
「はじめましてローズマリー嬢。僕の名前はカイン・キャンデリアだよ。ずっと君に逢いたかったよ」と優しいお声が聞こえます。
「カイン・キャンデリア第一王子殿下。初めて御拝謁いたします。キール・サファイア公爵が娘、ローズマリーでございます」
公爵家令嬢として恥ずかしくないカーテシーから顔をあげてカイン王子殿下と視線が重なり合った瞬間。
あれ、どこかで見たことのあるお顔がありますわ。
あれ、あれあれ？
カイン王子殿下の顔を見て「恋はピンクマーガレットと共に」という言葉が頭に浮かび、以前わたくしが黒髪黒目の女の子であった時の記憶が頭に浮かんでまいりました。
――――――――――――
その後のことはよく覚えていないけど、私が色々な記憶の蘇りにボーッとしている間にカイン王子殿下はお城へ帰ったらしい。
私は自室の天蓋のついたベッドに寝転んで頭が痛くなった。
ここ数時間で前世と思われる記憶をところどころ思い出したのだ。
ついでに前世での平民のような言葉遣いを思い出したのでうっかり口に出さないように気をつけなければ。
思い出したことで最重要なことは、この世界は私が前の世界でやっていた乙女ゲーム「恋はピンクマーガレットと共に」の世界そのものではないか！ということ。
「恋はピンクマーガレットと共に」は、ヒロインである男爵令嬢リリー・ファンドルが学園に入学し第一王子、第二王子、伯爵令息、騎士団長の息子、幼なじみの子爵令息といった攻略対象と紆余曲折を経て恋に落ちるという乙女ゲーム。
リリーは元々は平民で母親と花屋をやっていた。入学してからも花の知識を生かして花にまつわる事件を解決したり、花を使って攻略対象の好感度を上げていた。
エンディングでは最も好感度の高い攻略対象からの告白に、リリーが「私の心を貴方に」と言ってピンクマーガレットを渡すスチルが綺麗だった。
第一王子の婚約者としてヒロインの邪魔をするのがローズマリー・サファイア公爵令嬢。
ちなみにローズマリーはどのルートでも出てくる。婚約者以外に黒幕やスポンサー、従兄妹や親友の協力者という理由でも出てくる。基本的にはヒロインが気に食わないのだろう。
そして最後には罪の重さは違えど断罪される運命なのだ。
カイン王子ルートでは、次期王妃の肩書きばかり見ているローズマリーにカイン王子はうんざりしていた。そんなとき学園で王子としてではなく一人の人間として見てくれるヒロインに出会い心惹かれていく。そんなカイン王子に気がついたローズマリーは権力を振りかざしヒロインを学園から追いやろうと画策する。
ローズマリーは母親が亡くなり父親の重い愛情と期待に応えようとし、次期王妃の座を揺るがすような輩には容赦しない。
……ん？お母様亡くなってないよね。
あれ？お母様は今年になり全快してる。
今年、カイン王子殿下が出資されている薬学研究所が特効薬を発見したのだ。
特効薬のおかげでお母様は元の元気なお姿に戻られ、なんと今は第二子懐妊中である。
――――――――
なんだかんだとカイン王子の婚約者として1年間交流して、15歳になり学園に入学した。
学園は寮生活なので歳の離れたかわいいかわいい弟と離れるのが悲しすぎる。
そうそう、学園に入学してもピンクのフワフワツインテールのヒロインことリリーは現れない。
乙女ゲームは始まる気配がなく、攻略対象たちも婚約者との親交を深めている。特に事件も起こらず友人たちと過ごす学園生活は楽しい。
カイン王子は会えば甘い言葉を吐くし、どこの夜会にもエスコートは欠かさない。
ヒロインはどこに行ったのだろう？
もしかして私はこのまま幸せになっていいのかな。
