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1日目

作者本人がフクロウ好きという理由で始めた異世界召喚話です(フクロウ贔屓してます)。

羽根が生えたイケメンが登場する機会は大変少ないです。


 目の前にメンフクロウがいた。

 いや、違う。

 メンフクロウのお面を被った人かな。


 私、立花あかねは、私を間近で見つめてくるお面の男の素顔を見るために顔を引っ張ってみた。


「痛い痛い。痛いよ賢者様」

「取れない!」


 不思議なことにお面は取れなかった。

 それどころか嘴からしっかりと音声が聞き取れた。なんて高性能なマスクだろう。ちょっと欲しいかも。

 ハロウィンに使ったらウケそう。L○FTとかに売ってるかな。


 私は(何故だか分からないけれど)メンフクロウに姫抱っこされていた。

 少女漫画ならときめく展開なんだけど、私が気にしたのは、最近増量傾向にあった体重で腕が辛くないかな〜という心配と、相手がメンフクロウのお面被ってると少女漫画どころかホラーだな〜ってこと。


 そもそも、何で私こんなところにいるの?

 

「生憎、首は回っても取れることはありません」

「回るの!?」


 余計にホラーが増した。

 最近のお面って高性能だね。




 私はどこにでもいる一般人です。

 英語のテンプレみたいな言い回しだけど、本当にそう。

 平均的な成績(それでもいいなって言われることもあるけど)、平均的な容姿(可愛いよってお世辞言ってくれるみんな、ありがとう)、平均的な学歴(日本って有難い国だよね)。

 どれを取っても平均値に当てはまる。


 唯一、他にはない特徴があるとすれば、趣味が地味なことかな。あと、変な特異体質を持ってます。


 私の趣味は野鳥観察。

 合コンで言えばドン引きされるし、同年代に同じ趣味の人はいない。

 休日に電車で森林や新緑多い公園に行っては、野生の鳥を観察することが趣味だったりする。

 だって、私の唯一の長所? とも言える特異体質が活躍する場面なんだもの。


 私の特異体質、それは……! 


 やけに鳥類に好かれること! である。


 動物園に行けば、名前も覚えていない長ったらしい鳥に熱愛行為で羽根を広げられたり。

 ちなみに小さい頃にそれを見て、威嚇されたと思って大泣きした。

 家の前のゴミをカラスが漁ることはない。

 でもキラキラする物を玄関に置いていかれるので、近所の子供達には有名だ。キンピカの家だろって。


 そして野鳥観察は、わざわざ双眼鏡を持たなくても近くに寄ってきてくれるから、とっても見やすい。

 野鳥観察仲間のゲンさんは、「あかねちゃんがいるとすぐに発見できるからありがたいねえ」なんて言ってくれるの。なので私もその時ばかりはちょっぴり鼻が高い。


 今日も野鳥を見にとある山の麓に来たばかりだった。

 それがどうして体が人間、顔メンフクロウに姫抱っこされているのだろう。


「賢者様。落ち着いて頂けますか? 説明をする機会を頂きたい」


 やけに良い低音ボイスなメンフクロウが話す。その瞳で見つめられても残念ながら胸キュンはしない。

 でも抱きしめている手の羽毛はとっても気持ちが良い。

 羽毛っていいよね……どんな鳥でもやっぱり触ると気持ちが良いの。猫とか犬とかも可愛くて大好きだけど、やっぱり鳥が一番好き。


「説明ですか」

 現実逃避しちゃいそうな羽の温もりをちゃっかり堪能しつつ聞いてみた。


「はい。何故貴方が猿人類の世界から、鳥人類の世界へと導かれたか、ですね」


 鳥人類。

 聞いたこともない言葉だった。


「貴方が住む世界は猿人類と呼ばれる種が進化を遂げて今に至っているでしょう? 私の住む世界では鳥人類が進化を遂げているのです」

「あの、そもそも世界が違うということが理解できないのですが」

「そこは、まあ、説明すると長いので割愛します」


 割愛するんかい。

 大事なところだと思うんだけど。


「それでですね。本来干渉してはならないものなのですが、実は私達の住む世界で恐ろしい種族との縄張り争いが行われそうでして」

「縄張り争いですか」


 よく野鳥でもギャーギャーと威嚇している姿を思い出した。

 しかし次の言葉でそのイメージは崩れ去った。


「そちらの世界で言う戦争ですね」

「おおごとじゃないですか!」


 このメンフクロウ、真面目なのかふざけているのか判断がつかない。

 顔がメンフクロウなだけに余計分からない。でもググッと目を更に細めた気がするので、多分からかっている気がする。

 それはそれでちょっと可愛いから悔しい。


「私達の世界も何種かの人類に分かれています。私は猛禽類。他にも鷹類、キジカモ類とか様々なのですが。まあ、賢者様の世界に例えるなら国ごとに肌の色や髪質が違うでしょう? それと一緒です」

「私としてはキジと鷹じゃ全然違うんですけど……」

「一緒ですよ。人類皆兄弟」


 私の世界の言葉をあえて流用するあたり、流石森の賢者と呼ばれるだけある。

 フクロウって賢い象徴でよく使われてるもんね。

 よく学習ドリルとかの端っこに豆知識とか言ってるキャラクターって大体フクロウ。日本だとミミズクが多いけど。

 実際はメンフクロウがずる賢かったりするよって、

フクロウカフェのお兄さんが言ってたな〜(※個性によります)。


「そもそも、どうして私が賢者なんですか」


 賢者といえばフクロウ、ミミズクにこそ相応しい名称。はっきり言って私より目の前の彼の方が絶対似合う。


「貴方は、貴方の世界で生きる鳥類を沢山見て、知識を得ているとの啓示があったのです。貴方の世界で言う神からね」

「神様がいるんですか?」

「いますよ。貴方の世界では他宗教だそうですが、私達の世界では一神のみで、あとは種族ごとに信仰手段が違うだけですね」

「鳥の宗教……え、ちょっと待って」


 情報量多すぎる。

 とりあえず聞きたいことを一点に絞った。


「私をこの世界? に喚び出したのが神様……?」

「ええ、神です」

「ちょっとその神様に会えませんか? 羽ちぎっていいですか?」

「まあまあまあ」


 本気でおしかけてやりたいところだけれど、メンフクロウは私を穏やかに宥める。


「お怒りはご最もですけど主を殴っても羽を毟っても何も変わりませんから。それに、お役目が終わりましたらちゃあんとお帰ししますから」

「本当ですか!? どこかの小説みたいに来ることは出来ても帰れない、なんて設定じゃないんですか!?」

「そんな理不尽な話ありませんよ。わざわざ貴方様にはお越し頂いているのです。丁重に扱い、丁重にお戻しするべきでしょう」


 ああ、神様!(この場合、どっちの神様に祈るべき?)

 とりあえずよく分からない世界に辿り着いちゃったけれど、帰れると聞いて心底安心しました。

 

 辺りを見渡せば、とっても高級そうな神殿作り。

 神殿の中に飾られる石像は、よくよく見れば顔が全部鳥類。あれはセキセイインコ。これは鷹。これはコンドル。様々な鳥の石像。


 どうやら、私の特異体質は、もしかしたらこんな時のために用意されていたのかもしれないなんて思ってしまう。


 せっかく好きな鳥に囲まれるんだ。(身体は人間だけど)

 だったらちゃんと、役目とかいうのを果たして家に帰ろう。


「何だか夢みたいですけど」

「現実ですよ。ほっぺた引っ張りましょうか?」

「結構です。とりあえず、頑張ってみようと思います」

「はい、よろしくお願いします」


 ニッコリと笑うメンフクロウ。

 あ、可愛い。

 そんな風に思う私は、やっぱり鳥が好き。

 そして、実は私の最推しはメンフクロウだったりするので。

 実は案外、この状況が楽しいのかもしれない。


 私を知ってる人がいうには、「あんたはいつも楽観主義すぎ」ってことらしい。

 とりあえず、頑張りますか!






ーーーーーーーーーーーーーーー


 今回、三度目の召喚にして、遂に目的たる賢者を召喚。

 名を尋ねればあかねと呼ぶ。

 

 一度目の召喚は、彼らの人種に合わせた顔立ちにて説得するも、正体を知り拒絶され還す。

 二度目の召喚は、正真正銘の姿にて説得するが混乱から会話にならず還す。

 三度目に至り、召喚は成功したと予測される。


 今後、如何によっては還さざることも出来ないことは言葉にせず、現状の改善に勤しむこととする。


 以上、報告を終了する。






お勧めの鳥類がいらっしゃいましたら是非コメントまで!

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[一言] やべぇ… 笑い飯の『鳥人』思い出しちゃった(笑)
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