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第9話 現実こそが唯一悪

〜ケイト編〜

 全てが上手く回っている、とケイトは思った。ネットで調べてみると、殺されたソフィアは全米銃協会(NGA)の重鎮の娘、ジェームズは銃製造メーカー・クロッグ社に勤める人物だった。銃規制強化法案で世論が揺れるこの時期に、“規制反対派の代表的人物の娘と、銃メーカーの人間が銃で殺された”衝撃の事実は、大きな追い風になるだろう。大学に通っている頃、実家の近くの高校で銃乱射事件があり、そこへ通っていた妹のサラも巻き込まれた。勝手に狂った同じ学校の男子生徒が犯人だった。自分とは違って明るく、誰からも好かれていたサラ。妹ではなく自分が死んだ方がよかったとさえ思ったことも一度や二度ではない。そしてケイトは大学の在学中から、銃の規制キャンペーンに参加するようになり、意外と自分に企画や実行の能力があり人が付いてくることに驚いた。大学を卒業するとNGO団体に数年所属。しかし、社会的に影響力を与えられる人物にならなければ、銃を所持して武装することに賛成する人々の意識を変えることは到底無理だと痛感した。それからツテでロビー活動の企業に入社し、全米屈指の大企業と政治家の金の流れの間に入った。サラを失ったあとのような、純粋な気持ちだけ活動することなど到底不可能で、感情を押し込めてやりたくない仕事をこなした。それがサラのように突然死んでしまう人間や、癒しようのない傷を抱えた遺族をつくらない唯一の方法だと考えることにした。自分の感情を犠牲にしても、誰かを救うことができればいいと、ケイトは思うようになっていた。

人の世が狂ってしまったのはいつからだろう。他人への無償の親切が流行らなくなったのはいつからだろう。銃が誕生したからではないか。笑顔で家から出た人間が一瞬で死んでしまう。なんの理由もなくだ。そんなことが許されるはずはない。気づかないうちに涙が頬を伝っていた。拭うふりをしても誰も見てくれる人はいない。サラは、ソフィアとジェームズの死を利用しようとしている自分をどう思うだろうか。ケイトは精神安定剤をアルコールで流し込んだ。

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