小さな恋人
長い長い歳月が
流れました。
ジョンは私の知らないうちに
結婚してしまった。
さらに長い月日が経ちました。
幸いこの家の主人は
私を売る事はなく
捨てる事もありませんでした。
ピンポン
ある日玄関のチャイムが
明るく鳴りました。
(誰だろう)
『こんにちは!』
若い女性がこの家に入って来ました。
『いらっしゃい。』
ご主人がお迎え。
その女性の後に玄関に入ってきたのは
誰でしょう。
そう
私の恋人だった
ジョンでした。
その感激には
思わず泣くに泣けない。
そう 私は一台のピアノ
スタンウェイのピアノ
泣きたくったって
泣けはしない。
でも それだけじゃ無い。
それだけじゃ無かったんです。
ジョンは可愛い男の子を抱いていました。
(ジョン あなたパパになったの!)
私は泣きたかったが涙も出ない。
その時 ジョンは
戯れに 男の子を
彼の座っていた 黒い演奏用の椅子に
腰掛けさせました。
『ド ドドドドド ドミソ
レミファ
ソシレ』
『ちょっと音が』彼女が言いました。
ド ドドドドド ドミソ
ド ドドドドド ドミソ
ミミミミミ ミミミド
あっはっは
ほほほっ
あっはっは
みんな笑いました。
そうです。
私の新しい恋人が見つかりました。
小さな恋人!