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古代の医療

生存報告的な話です。

 殺すことの反対は生かすこと、だとすれば戦争の反対は医療と言えるかもしれない。

古代戦において戦傷がどのように治療されていたのか理解することは、戦術や戦略を立てる上で頭の片隅に置いておくべきことだろう。


 戦場で負う傷のことを専門用語で『軍創』と呼ぶ。軍創は細分化すれば、骨折や挫創、刺創、切創、割創なども含む。(創というのは傷の意)

 古代の医療なんて対したことがない、どうせ止血して終わりだろう。などというのは甘い認識である。実際のところはそれ以上に……ひどい。全てではないが、ひどい。古代から中世まで特出した進歩もなかったので、古代から中世までの外科医療はひどいの一言に集約された。

古代、中世の戦闘は武器による直接の致死率こそ比較的低いが、治療のまずさによる致死率は極めて高かったのだ。


 まず一般的な止血の方法が今とは異なっている。軽いケガなら放置するが、ケガがあまりに重症で血が止まらなかった場合は焼くのだ。傷口の細胞を破壊することで物理的に血の流出を止める。

 これは大抵の場合、四肢を切断した切断面に対して行われた。四肢切断(アンピュテーション)というと恐ろしく聞こえるかもしれないが、意外にも近世まで一般的な治療方法であった。そして有効性もあった。

 四肢のどこかにひどい怪我を負った場合、病原菌の侵入、血液の減少によって人間は容易に死に至る。縫う程度では止められない出血や、内出血著しい骨折や打撲の場合は四肢切断が生存率を飛躍的に高めたのだ。

 今でこそ最後の手段だが、当時は一般的な(とはいえ痛いので嫌われている)治療手段であった。

 とまぁ、ここまでは古代医療の良い面である。実際に命が助かる場合もあった。ギリシャから四肢切断が広まったことで、

基本的な外科医術が広まった。止血方法が焼くことじゃなくなるのも二千年以上後の話だ。


 では何が古代医療を悲惨だとする理由になるのか。それは『瀉血(しゃけつ)』という愚かな治療方法が原因だ。


 瀉血(しゃけつ)とは古代メソポタミア、エジプト、ギリシャそれぞれの文明で古くから行われてきた健康法の一種だ。

昔から病気や体調不良は、血液過剰か体内に溜まった老廃物が原因だとされてきた。また改善には食事の改善や運動、発汗に嘔吐が効果的だとされていた。

瀉血もこの延長で行われた行為だ。膿の自然排出によって体内から有害なものを取り除こうというものである。とどのつまり『傷口を化膿させる』ことか治療だと考えたということだ。

肺炎を患った患者の胸をわざと化膿させるなどといった愚行が古代から中世にかけて繰り返された。

なお、傷口の化膿(とそれによる膿)は必然ではあるが治療快方の兆しではない。ということが一般化するのは十九世紀になってからである。


 傷口を焼くことについてももう少し詳しく解説しておこう。傷口に焼き(ごて)(カウンテリー)を押し当てて、創面組織を死滅させる行為を焼灼止血法と呼ぶ。

四肢切断後の止血法及び感染症予防を目的としていた。もっとも当時は感染症の原因は分からなかったが、一応傷口を洗うべきだという発想はあった。16世紀に主要血管の結索方法(血管を結んでの止血法)が生み出されるまで、四肢切断後の治療はこれが一般的だった。

なお現代においても、ガン除去後の処置として電気焼灼や薬品による化学焼灼が行われている。もちろん四肢切断などには既に使われていない……先進国の場合は。


古代医学史の権威といえばヒポクラテスやガレノスがいる。しかし彼らは瀉血を奨励してしまったために、医学の発展を千五百年停滞させた。という汚名も着せられている。


このようなわけで、古代では傷が浅かったのに危険治療で命を落とす場合も多かった。

こんな中で信頼できる野戦病院があれば、戦う兵たちの指揮はさぞ高まったことだろう。

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