鍛練ですか?
子守り男子と灯火の女神の使徒に頬を張られたので初心に返ることにしました…
place:王都バルバニエスタ:シェルニエスト邸
「はぁ、はぁ、驚かせないでくれ」
「…畏まりました、では、次回からはより近くから声をおかけすることにいたします」
「ああ、いや、そういうことじゃなくて…はぁ、もういいや」
心底何が言いたいのか分からないとでも言いたげなその表情に潤は軽く頭痛を覚え、ため息とともにもやもやを吐き出した。
「では、打ち合わせのお時間まで後2時間程ございますが、いかがいたしましょうか?」
「どこかぶらぶらして、鍛練でもしようかなと思っていたんだけど…ドアを開けてくれないか?」
「……成る程、そういうことでしたらご案内させて頂きます、修練場でよろしいですね」
「ああ、頼むよ」
潤の言葉に侍女…カルナというらしい…は頷き、何もないかのようにドアを開き歩きだした。
「うわぁ、ゲーム的処理だとしてもムカつく……」
◆◇◆◇◆◇
place:王都バルバニエスタ:シェルニエスト邸:修練場
「こちらが当家の所有する修練場となります、人形などはいかがいたしましょうか?」
「いや、要らないよ、型を確かめるだけだから」
カルナの問いに答え、ガラガラの修練場へ一歩踏み出す、右手に[迦具土]、左手に[焔]、紅と紫の刃を構え、息を整える。
「ふっ」
思い描くのはかつて相棒とした二刀とその動き、モーションアシストを切っても同じように動けるように、ブラフとしても通用するように、ただひたすらに振るったその動き、薄紅が閃き、薄紫が踊る、基本の型から始まる一連の流れ、更にそこから派生して足捌きを織り交ぜ舞い踊るように自由自在に移動する。
くるりくるり、くるくるり、回り、閃き、暴風と化し、最後に切り払いと共に立ち止まった場所は中央、薄れかけていた記憶を取り戻し、基本から派生、果てはオリジナルまで、一通り培った剣術を確かめた潤は振り返ってカルナに話しかけた。
「お待たせ、そろそろ良い頃合いだと思うんだけど、案内は頼めるかい?」
「…………」
「…おうい?カルナさん?」
「……は、はいっ、申し訳ありません、すぐにご案内を」
やけにあわてふためくカルナの後について、今回のクエストの打ち合わせがあるというその場所へ向かって歩く、その身に纏う装備は[迦具土]1つ、一般的な斥候としてイメージされる武装とそう大差は無かった。
◆◇◆◇◆◇
place:王都バルバニエスタ:シェルニエスト邸:軍議室
「だからっ、いっそ強襲してしまうのが手っ取り早いに決まっているだろう!」
「そんな事で民心が稼げるとは思わないな、暗躍によって不正を見つけ出すのが先だ」
「そんなもの後からいくらでも出てくるだろう、それよりも先に王位を奪われる方が問題だ」
喧喧囂囂と議論が交わされるその空気は、およそ他人を招き入れるようなものではなく…
「失礼いたします、閏様、こちらに」
……侍女様にはそのようなことは関係が無いようだ…
ところでなんで終わらないんだろう…




