4話よちょう
ーー願わくば、今この時を止められますように。
それから、食器を片付けて歯を磨いて、リビングでテレビをみてゆったりとした時を過ごした。
「ゆう、そろそろ出る時間じゃないか?」
「んーそうだね。」
時計を確認すれば、もうそろそろいい時間だった。
黒い手提げかばんを取って、お弁当を作ってくれている母に声をかける。
「お母さん、お弁当出来た?」
「ええ。出来てるよ。」
肯定が返ってきたので、父と共にキッチンに向かうと、そこには…
……3つのお弁当が置かれていた。
ひゅっと喉の奥が鳴った気がした。そして隣からも。
青いハンカチに包まれた大きめのお弁当箱ーー父のもの。
水色のハンカチに包まれた背の高いお弁当箱ーー僕のもの。
赤いハンカチに包まれた小柄のお弁当箱ーーーーー……………
「これは隆くんのね。で、こっちがゆうくんの。それで…………」
母は僕達の驚愕には気づかず、お弁当箱をそれぞれに渡してくる。
(あ…だめ。僕が動かないと。止めないとっ。)
頭は無駄に回るくせに、体は凍りついたように動かない。
母が赤いお弁当を手に取る。
「それで、これは……これ、は………?」
(だめ。だめ。だめだめだめだめっ。)
ーーーーー壊れてしまう。