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流れ落ちた色彩の世界で  作者: 海野そら
6/23

1-3 散策の先に見つけたものは

投稿難しい…。

 

 ひとまず流れ着いた地点から見えている、湖から流れ出ている小川へ向かった。

 近いように見えていたが、意外と距離がある。


 仕方ないと諦めて、足元を気にしつつ、ゆっくりと歩いていった。


 流れ着いたところから、だいたい3分ちょっとか…。



 小川も湖も澄んだ水が流れていた。

 そのため、底が良く見えた。


 魚や小さな生き物は見えない。

 何となくキラキラした石が川底に落ちている。


 花畑から水面までは緩やかな坂となっていた。

 近寄ってみると、川岸にも青みがかった石や薄紅色の石、淡いグリーン、明るい黄色の小石がまばらに落ちていた。

 

 しゃがみこんで、川を覗き込んでみる。


 うーん、生き物はいなさそう。それに何だろう、宝石のような石が川岸にも川底にも落ちてる。



 川幅は3メートル程。だが、その中央付近が深く見えた。流れはそこまで速くないが、流される危険を考えるとわざわざ渡ることは躊躇われた。


(仕方ない…。まわろう。そうしないと出れないしなあ…。)


「よし!一周しよう!仕方ない!」


 気合いを入れ直し、未だ乾ききっていない靴と服を鬱陶しく思いながら通路を目指して、歩き出した。




 小川から少し歩くと、光る苔のくっついた直径2mくらいの岩があった。

 青白く光る苔を不思議に感じながら、その岩を眺めていると、その岩陰に銀色の花を見つけた。

 屈んでよく見ると、淡く光っているようにも見えるその銀色の花は、シラネアオイに似た姿形をしていた。


 私が知っているシラネアオイは…淡い紫とピンクを合わせたような色だったけど、こんな、銀色の花は…初めて見た。花の形はよく似ているのに…。



 1本手折っていきたいと思うが、それは何故かしてはいけないような気がした。

 忘れないように、じっくり観察してから立ち上がり、また歩き出した。






 小川のおおよそ反対側まで歩いてきた。

 大体15分ほど、遠いような近いような距離だと感じた。



 ふと視界の端に何かが見えた。よく見ると茶色の合皮で出来た傘の柄が出ていた。


「あれは…!私の傘!」


 傘は水の中に開いた状態で、柄を上に沈んでいたが、何とか手が届く距離だった。


 水に落ちないように気をつけながら、手を伸ばす。


「よっ……!届いたー!」


 無事に傘を取り、簡単に振って水気を落とす。

 淡い色合いのカラフルで小さな花が描かれている可愛らしい傘。今年の春に買ったお気に入りだ。

 骨が曲がったり、穴が空いていないことを確認して、傘を閉じ、畳んだ。


 でも…マンホールとか排水溝の穴に落ちたとしたら…開いた傘なんて通らないよね…?なのに…どうしてここに…?


 傘が一緒に落ちてきた不思議を感じながら、とりあえずそれを左手に掛け、また歩き出した。





 歩いている花畑は変わらず薄紅色と淡い青、そして白の花が入り交じっていた。

 そして、時折その花から群青色と薄縹色のアゲハチョウがヒラヒラと飛び立っていた。


 その光景を眺めながら、そして時折、湖に目をやりながら歩いていた。



 すると、湖の中に愛用していた肩掛けでブラウンのバッグが見つかった。


「うわー…。思いっきり沈んでる…。」



 湖の中に沈んでいるバッグをどうにか湖に入らずに取れないか考えた。

 そこで傘を逆に持ち、柄でバッグの肩紐を引っ掛けることにした。


 水際で四つん這いになり、傘を持った手を伸ばす。バッグに引っ掛けようとするが中々難しい。数回トライして、ようやく。


「よし…!掛かった!」


 ゆっくり慎重に、バッグが落ちないように引き上げる。

 水面近くまで傘で引っ張り、手で持ち上げる。

 バッグに水が入ってまい、重たい。



 湖の岸辺から少し離れ、バッグを開ける。

 バッグの中には財布、愛用の猫柄ポーチ、雨避けにビニール袋に入れた参考書とノート、プリント、水筒、某有名のど飴、小腹を満たせるチョコバー3本が入っていた。


「チョコバーだ…!売店で買っておいて良かった!非常食だ〜!」


 心配なく食べられる食料が少量とはいえ見つかり、安堵感を感じた。水筒の中には、朝、家で入れたお茶が半分ほど入っていた。それを飲み、のど飴をひとつ口に入れた。


 飴を舌で転がしながら、バッグの中の水を出来るだけ切る。


 ビニール袋から参考書とノート、プリントを取り出す。どれも濡れて、特にノートやプリントは文字が滲んで読めなくなっていた。

 なんとか参考書だけは紙質の違いか、湿気ってヨレヨレになっていたが文字を読むことは出来た。


 水を切った荷物をまたバッグにしまい、再度出口まで歩き始めた。



 歩きながら考える。


 やっぱり……ここって日本ではなさそう。花も蝶もおかしいし、こんな洞窟?があれば絶対に見つかって話題になってる…。



 間もなく出口の通路という所、四角に切り取られたように一部が苔に覆われていない岩を見つけた。

 周囲の岩とは明らかに異なり、そして人の手が加わった痕跡がある。


 近寄って、確認してみるとそこには不思議な文字で、短く何かが記されていた。



 こういう時、ファンタジーものだと触れば文字が読めたり…するよね?ちょっと、試してみる、か。


 そう思い、文字に触れる。

 すると、文字の意味が分かるような気がした。




 おおー…ファンタジー……。






 そこで、文章を確認してみる。




 ─────────────────────


  マディアの流れが 乱れる時


  蒼き山 輝く滝の奥

  その洞窟を進み 蝶の泉に


  澪筋を 水を通じ

  水とともに流れ落ちる 落ち人が来る




 次代が来た時、少しでも道標になれば。

  「私は次代の落ち人です。」

 母国語で言えば、私の日記を託そう。

 


  アカネ・ヨシノ

  726年 アークタス

  青の国「ヴィリディ」にて


 ─────────────────────





 ファンタジー感溢れた文章だな、これは。でもまあ、前にも似たような人がいたってこと…?そして…アカネ・ヨシノ…よしのあかねさん?日本人?


 そして、岩に記されているとおり、日本語で口に出して言ってみる。



「私は次代の落ち人です。」





 ───特に何か起こった様子はない



「…え?こう、ピカーって光るとか、謎の映像が出るとか、ない…?」



 何か変わったところがないかと、辺りを見回す。すると、岩の手前、花の中に一冊の本のような日記と小さな袋が落ちていた。


 物音もなく、急に現れたような…。まあ、夢見すぎか。あかねさん?もそんなに頑張れないよなー。




 そう思いながら、岩の近くに座り、濡れた荷物を広げ、まず日記を広げた。






続きます。よろしくお願いします。

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