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流れ落ちた色彩の世界で  作者: 海野そら
5/23

1-2 目覚めると

3話目。数話、連続投稿です。

 

「ガハッ…!!ゲホッ!ゲッ…ガホッ…!!」


 青の国「ヴィリディ」のサクリス・ヴィリディ山の中腹、ルセア・アントラム洞窟の奥にあるパピリオ・ラキュム湖の湖畔。


 半身が湖に浸かり、まさに打ち上げられた状態。鈴乃はそこで目覚めた。


 水を多く飲んでいたため、喉が焼けたように痛んだ。激しく咳き込む中で、意識がはっきりしてきた。


 ここは…一体…。大学帰りに大雨の中、歩いていた…それで……その後…?……ああ、穴に落ちたんだ。



 水に浸かった身体は冷たくなっており、僅かに痛んだ。どうにか身体を動かし、湖から這い上がった。そして地面に横になった。


「ハアハア………フー…。ゲホッ…」


 息を整え、周囲を見渡すとそこは、淡い色の花々と岩肌に張り付く光る苔。そうして自分が打ち上げられていた湖。そしてドーム状の天井に空いた穴から零れ落ちてくる白糸のような滝。




 改めて感じる。



「ここは…一体…どこ…?」




 濡れた髪や服を絞りながら何があったのか、ここが何処なのか考える。



 あの時、たしか…何かを踏み外したように落ちたような……。ああ、大雨だったし、冠水していたからマンホールか排水溝の蓋でも開いていた…?そこに…落ちた?下水道に?



 だけど…絶対に下水道の出口でもその途中でも無いのはわかる。こんなに幻想的な場所が……まさか、ね。踏み外してどこかに落ちた後、思い出せるのは…息が出来なくて苦しくて、どこにも出られなくて…。そういえば意識を失う前に、すごく明るく光ったような…そんな…気がした。まあ意識飛ばした時ってそんなものかもしれないけど。




「ほんと…びしょびしょだ。早く乾いてくれないと風邪でも引きそう…。それに誰もいない…。」



 湖のそばは水が落ちる音しかしない。動物がいるような音も、もちろん人の声も…。



(溺れてから、どのくらい経ったんだろう…。)


 愛用していた時計は水の中に投げ出されても、外れることはなかった。ソーラー電池の水に強いタイプの腕時計であったため、その針は動いていた。


 時計を確認すると、18時17分を示していた。講義が終わった時刻は16時過ぎ。そこからおよそ2時間程、時間が経っていたようだ。


 だが、その時間が正しいのか…外の見えないこの状況では確認することなど出来なかった。




 溺れた時に水を飲んでいたからか、何度も咳が出た。少し落ち着いてきた頃、あることに気づいた。


「え…?!髪の色…!なんで…!?」


 元々、胸元まであった地毛でも焦げ茶色だった髪の毛が、根元の方が紺色で毛先に向かって濃い青のような瑠璃色に変化していた。


 まさか落ちた時の水に何か変なものでも混ざってた?うわあ……湿疹出来ないといいなあ…。


 そんなことを考えながら、ため息をつく。




 周囲を見渡し、淡い色の花々を見る。するとどこからか、群青色と白縹色のアゲハチョウのような美しい蝶が数羽ヒラヒラと飛んでくる。



「わ……すごく…綺麗な蝶。何ていう蝶かな、見たことない…。」



 しばらく何もかも忘れたように蝶を見つめていた。そこでハッと気付く。


「そうだ…!そんな、蝶に見蕩れてる場合じゃなかった!」




 とりあえず周囲に何があるのか確認をする。


 似たものは見たことがあるけど、同じものは知らないなあ…。白い花はカモミール…?いやイワギク…?似てるけどどちらも違う。一部透けているような色合いの花って…。それに青いのはサクラソウに似てる。私が知っているのは白いのとピンクのやつだけど。それに淡いピンクの花はスズランっぽいなあ…。



 未だどこか分からないが、鈴乃が通っている大学の専攻は環境学。僅かばかり植物の知識はある。スズランは毒を持っており、サクラソウはよく分からないが、キクはお刺身に添えられていたり、カモミールはハーブティーになる。


 スズランはたしか毒だし、サクラソウはわかんない…キクっぽい植物ならきっと…食べられる……。まあ、同じ植物とは思えないけど…もしもここから出られなかったら…その時はこのキクっぽいものを食べよう。



 湖の奥は行き止まりになっているが、手前側、水が流れ出る方向には、川を渡ると人が横に3人は並んで歩ける程度の幅の通路がある。

 その通路には湖の側にも生えている光る苔があるようで、うっすらと明るい。


「うーん…少し休んだら小川を渡って通路を進んでみよう。どこかに…落ちた時に持っていた荷物があると嬉しいんだけど…。」


 まず、湖の水が流れ出る小川を確認してみようと考えた。




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