エピローグ
初投稿です。完結を目指して頑張ります。
───落ちる…
落ちていく───
どこまでか……
底が 分からなくなるほど……
───深く、深く落ちていく
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あの日、立花鈴乃は大学が終わり、日が沈み始めた頃、家に向かって歩いて帰っていた。
その日は昼過ぎから雨が降っており、講義の終わり時間が近付くにつれ、その雨足は激しくなっていった。
帰る頃には道路は冠水し、ちらほらと姿の見える学生達もしばらくの間、帰るか、もう少し様子を見るか悩んでいるようだった。
今のうちに帰るか悩むけど…待っていても雨はひどくなってきちゃったし。こんな雨じゃもう研究室にも誰もいないだろうな。びしょびしょに濡れるけど、諦めて帰ろう……。どうせ15分も歩いたら、家に着くんだし。
家に着いたら、この間買った入浴剤使ってお風呂入ろう。
家まで徒歩15分。3年前に一人暮らしを始めてから、何度も通っている道。
そこを一人、憂鬱になっていく気持ちを感じながら、ふくらはぎの中程まで水に浸かりながら歩いていた。
でもやっぱり雨…ひどいな。靴はとっくに浸水して足が気持ち悪いし、道路も水浸しだし…。泥水だから、足元もよく見えないな…。
足首丈のカーキのチノパンも、白いレースのブラウスも裾の方は水を吸って肌に張り付く。
せめてもの救いは、この間買ったパンプスではなく、朝、天気予報を見てスニーカーを選んだことだった。
バシャバシャと水を蹴って、あまり役に立っていない傘をさしながら歩き、あと5分ほどで家に着くところまできた。
大学を出る前、慌ててビニール袋に詰めた参考書やノートは果たして濡れていないだろうか。かなり怪しい。
足元を気にしながら歩いていた。
そのはずなのに、突然。
「うわっ……!いっ…!!」
冠水した道路でたまたま蓋の空いていたマンホールを踏んでしまい、中へ落ちていく。
150cmと周りと比較してもかなり背が低い分類に入り、かつ華奢な身体では、マンホールに嵌って引っかかるわけでもない。
ただただ…中へと深く落ちていった────
短めだったかもしれません。