第9話 神の禁じ手
「この程度のストレス……気にしていたら、常務は務まらん!」
幕ノ内常務は扇のように開いた名刺から、1枚選び、投げる。
ターン、幕ノ内常務。
「大手電子機器メーカー。ソノー 社長 前年度、売り上げ 8,000,000円」
「社長名刺だと!?」
前沢課長は、クマが出来た目を、大きく見開き、おののいた。
「社長名刺。ここでトップクラスの手札を引くとは」
幕ノ内常務は、せせら笑い言う。
「おいおい、これくらいで驚かれては困るよ……」
常務はもう一枚、名刺を選び、再びフィールドに投げ放つ。
「コネなら、君より私のほうが多いのだよ。だから今の地位に付いたんだ! コネカード!」
サポートにより、更に名刺を引く。
「大手自動車メーカー、ホンバ、社長! 前年度の売り上げは15,000,000円!」
肩書きを聞いた、前沢課長の血の気が引き、動悸が激しくなる。
「な、何ぃ!? 日本、最大手の自動車メーカー社長と、知り合いだと!?」
ダメだ、息切れがする。
煙草を止めたと言うのに、呼吸が苦しい。
しっかりしろ! 名刺の攻撃以外で、ストレスダメージを受ける訳にはいかない。
だが、時、すでにに遅し。
課長のライフポイントはストレスにより削られる。
前沢課長
動悸、息切れにより、1,000のストレスダメージを受けた。
課長のライフポイント - ストレスダメージ = 課長、残りライフポイント
2,700,000 - 1,000 = 2,699,000
し、しまった!? 自分で自分の首を絞めるとは……日頃から健康には気を付けていたというのに……。
幕ノ内常務の手札が、フィールドに揃う。
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幕ノ内常務 残りライフポイント 7,100,000
エイト&L 重役 前年度 売り上げ 6,000,000円
ソノー 社長 前年度、売り上げ 8,000,000円
ホンバ 社長 前年度、売り上げ 15,000,000円
四田銀行 サポート名刺
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負けじと、幕ノ内常務の名刺も、続々とスーツを着た、中高年が召喚される。
幕ノ内常務は、自身の名刺を顔に寄せ、じっくり手札を眺める。
扇のように開く名刺で、口元を隠し、不適な笑みを見せた。
「ふふふ……これで、終わりだと思ったら、心臓は保たんぞ? サポートカード。リーマンショックカードをフィールドに配置」
人差し指と中指で、名刺を掴み、投げる――――――――。
「リ、リーマンショックだっと!?」
リーマンショックが、心臓に与えるショックは、計り知れない。