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第4話 ルール・オブ・デュエル

 現れたのは、澄ました顔の中年のオヤジ。

 

 顔じゅうに走る、深く刻まれたシワは、現代社会の荒波に揉まれ、河川にえぐられたことにより出来た、無数の谷底に見える。 

 紺色のスーツを着込む、この中年男の瞳に、魂の輝きは感じられない。

 まるで、その場に置かれた、等身大人形のようだ。


 現代の勤め人なのだから、目に生気が感じられないのは、仕方ないとして。

 突然、得体の知れぬ世界に来て、平静でいられる人間はいない。

 恐らく、この人物は不思議な力により、作られた幻だろう。

 異世界に満ちる、魔の力か。精霊が授けた、霊的、力か。人を象った幻の造形は、生身の人間その物に見える。


 前沢課長は、深く息を吸い、観戦するオーディエンスにも、聞こえるよう、声を響かせた。

 「大手電機メーカー、モットシャープ。営業二課、課長カードをフィールドに配置! モットシャープは、前年度の売り上げが2,500,000円だ!」

 

 *****

  

 トラバーユの決闘は、ターン制で進む。

 お互いのライフポイントは、10,000,000から始まり、相手の攻撃でライフポイントを消って行く。


 まず、名刺を1枚選び、攻撃かサポートかの行動を選択する。

 攻撃を選べば、その、1ターンで行動が終了し、サポートを選べば、フィールドに名刺を最大で5枚、置くことが出来る。


 そして、この決闘の攻撃は、より高い役職に就いている、肩書きが勝ち、相手へのダメージは、名刺に属する企業の、前年度の売り上げで決まる。

 

 先攻の攻撃名刺が、後攻の役職に負けた場合、先攻の名刺が与えるダメージは半減する。

 

 どちらか先に、ライフポイントが0になった者が負けとなる。


 名刺による、異世界での効果は、現実世界で起きた、前年度、以前の経済トピックスを元に、効力が反映される。

 

 不正が発覚した場合、ライフポイントに関係無く失格となり、違反したデュエリストは負けとなる。

 

 *****

 

 前沢課長が、選出した名刺の人物を見て、幕ノ内常務は感心しながら言う。


 「ほぉ~、モットシャープさんには、私も世話になっておるよ。では後攻……参る!」


 後攻、幕ノ内常務。


 常務も同じく、ケースから名刺を5枚取り出す、1枚を人差し指と中指でつまみ出し、目の前に放る。 


 放った名刺が、地に落ちる手前で、力場により、地面のすれすれでピタリと止また。


 そして、不気味な紅い光りの柱が、天高く登る。

 それは、まるで、灼熱のマグマが立ち上がり、深紅の雷が、地面から湧き出ているようだった。


 紅い光柱が消えると、ダルマのようなシルエットが浮かんだ。


 いや、その表情自体も、ダルマのような威圧的な顔をしており、角刈りの髪に、スーツを着たダルマと、言い表すのが良いだろう。

 大きく見開いた、まん丸の目玉。への字に歪めた口元。


 前沢課長は、その貫禄に、幻とはいえ、思わず浅い会釈を送る。

 それを見た、幕ノ内常務は微笑ましく見守り、高らかに言う。


 「大手通販サイト、ユニゾン。専務カードを配置する。ユニゾンは、前年度の売り上げが、2,800,000円だ!」

 

 前沢課長は、現れた中年の幻に、目を見張る。


「専務カードだと!? いきなり課長職よりも上の名刺を出して来るとは……」


 名刺の肩書きを聞いた課長は、落ち着きなく、歯ぎしりをした。


 二つの幻は、互いに歩み寄っていく。

 その間、全く目を離さそうとしない。

 当たり前だ、取引の場で、先方から目を離すなど、言語道断。

 ビジネスマナーに反する。


 コロシアムの中央に来た、幻達は、1メートルのパーソナルスペースを空け、睨み合う。

 そして、互いに変化があった。

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