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彼女からの手紙 6通目

――正解だよ。私ね、昼休みはずっと寝ていたけど、放課後は図書室で、君が読んだ本を読んでいたんだよ。毎日ね。気付かなかったでしょう?

――次は「日本三大奇書。『黒死館殺人事件』『虚無への供物』ともう一冊は?」


知らなかった。つぎの手紙はどこだ。


――正解だよ。君は昼休みずっと司書室にいたけど、放課後は部活だったもんね。

――次は簡単。「ラベンダーの香りでタイムスリップ」


ミステリーを外してきた。


――正解だよ。私は放課後、図書室にずっといたんだよ。毎日毎日、君が読んだ本を読んでいた。たまに君より先読みして、君より先に犯人を知ってたこともあるんだよ?

――次は覚えてるかな?「御式内と呼ばれる秘術。明治の時代、柔道に青春をかけた男たちの物語」


少し手間取った。


――正解だよ。君とはあんなに一緒にいたのに、ほとんど何もしゃべらなかったね。

――私が親の離婚でこっちに来たのに、それも聞かないでいてくれたね。ありがとう。

――次は「カフェオレ色の頭の推理作家が、桜舞い散る村に向かう話」


なんだ?この本は思い出せない。探偵を思い出すのに手間取った。なんとか正解の探偵を見つけると、今度はそのシリーズの中で桜の村の話を探すのにもまた手間取った。

式の開始は近づいている。まだまだ手紙が終わる様子はない。


――正解だよ。

――ちなみにこの手紙は全部で100枚あります。最後まで見つけられるかな?

――次は「楠本頼子は、柚木加菜子が本当に好きだった」


手元にあるのは、10枚。まだまだ先は長い。


――正解だよ。ところで、中学3年生の時、寝ている私にキスしたでしょ?

――私、気づいていたんだよ。


心臓がまた強くドクンとなった。


――次は「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」


この本は覚えている。だけど、次を探せない。

あの時、寝ている彼女にキスした事にバレていた?

心臓の鼓動が速くなる。

5分ぐらいはその場を動けなかった。


校内放送のくぐもった声が閉校式開始30分前を告げた。

とても100通を式の開始までに見つけられそうにない。

私は今までの11枚の手紙をポケットにしまい、体育館へ向かった。




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