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閉校式前日

母校が無くなるというので、ひさしぶりに里帰りをした。

狂ったように鳴く蛙の鳴き声は、昔は心地よく思えたが、数年ぶりとなるととてもうるさく感じた。

東京から高速道路で長野方面へ向かい3時間、松本で降りてさらにそこからは山道を行く。

今は道路も整備されていて、冬季は閉鎖されるが、春なら特段問題はなかった。

車でわずか8時間ばかりで付く距離の故郷だが、私が里帰りをしなかったのは、私の高校卒業と同時に父も母もこの村を離れたことにあるだろう。祖父母はとうの昔に亡くなっている。

泊る場所もないが、元の家は空き家になっているらしく、区長の計らいで元の家に泊めてもらえる事になった。

水は井戸があるし、電気はディーゼルがある。トイレはボットン便所だが、ひさしぶりのその臭いがたまらく不快だった。この不快な臭いをかぐことで、私は故郷に帰ってきてしまったのだなと強く実感した。

ここ10年で人口はかなり減った。春から秋にかけてはまだ人は住んでいるが、冬場は10件も残らない。みんな里へ降りる。ゆっくりゆるやかに老人が死んで、若者が外へ出て、残った若者も歳をとって老人になる、そうやって村が滅びるのを待つだけの場所だった。


だが去年、劇的な変化が起こった。

この村を通る高速道路ができ、サービスエリアができた。もっとも準備は私が小学校に入る前から始まっていたのだが。

トイレと自動販売機しかない粗末なものだが、高速バスが毎日10便以上往復することとなり、交通の便がいっきに上がった。

それに伴い、今まで存続していた小学校中学校と高校は閉校する運びとなった。

児童生徒たちはこの4月から毎日高速バスに乗って山を下り、スクールバスに乗り換えて、市内の公立小学校や中学校に通うことになる。

今までは小1から高3まで同じ校舎だったのだが、それが6・3・3に分かれ、同い年の子供と一緒に学ぶ事に違和感を覚えることだろう。

私も高校を卒業するまで同い年の友達などいた事がなかった。

一つ年上の先輩……。

そういえば彼女は今、どうしているのか?

彼女は、明日の閉校式に来るのだろうか?



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