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3分の1~あの夏を目指して~  作者: 一般人々
0章プロローグ
2/9

ターニングポイント1

事故から三年。


俺は地元の中学校に進学し一応野球部に入り野球をしていた。


野球が兄弟を繋ぐ唯一の繋がりと思えたからこそ今までやって来た。


そこにはやる気や目標というものはなく、ただ野球を続けていた。


しかし中学生最後の大会では県大会決勝まで勝ち進みはしたが3-2という僅差で負けてしまった...つくづく優勝という二文字を掴むことの出来ない人生だと思う。


部活は引退し、これからの進路をどうしようかと一人考えていた。


幸い頭はそれほど悪くはなかったので地元の高校に進むことは容易にできるだろうと思っていたので、そこまで深刻には考えてはいなかったが。


「あ、 慎二君ここにいたんだ。 田中先生が呼んでたよ」


これからの事を考えていると俺を呼ぶ声がし、振り返るとそこには黒髪が腰の所まである女の子がいた。

名前は横橋美子、中学生から一緒で野球部のマネージャーをしている。


そして、田中先生とは部の顧問である。


「おっ、 美子じゃん。 田中先生がどうしたって?」

「う~ん、 よくわかんないんだけど慎二君呼んでこいって言われたから呼びに来たんだよ。 応接室にいるって」

「わかったよ、 行ってみるね!」


応接室に行くと田中先生とどこかで見たことがある白髪の髪の男性がいた。


「慎二きたか。 こちらは風間純さんだ」


田中先生に紹介された風間さんは慎二に軽く頭を下げて礼をしたので、慎二も礼を返した。


(どこだっけか話したことはないんだけど見たことがある? ...どこでだ? 野球? テレビ!? あっ!)


「かざま...あ! もしかして白明高校の監督!?」

「今気づいたのかよ」

「ははは、 気付いてくれただけでも嬉しいですよ」


田中先生は呆れていたが、まさか目の前に東京の野球の名門の監督がいるとは思いもよらなかった。


「す、すいません。 俺気づかなくて」

「大丈夫ですよ」

「さっ、 慎二ここに座ってくれ」


そういわれて目の前の椅子に座ると田中先生と風間監督が対面する形でいる。


「さてここに呼ばれた理由はわかるか慎二?」

「多分ですけど」


まさかとは思う。

しかしどこかで期待している自分がいる。

どこか義務的な感じで野球をやって来てきた俺なのに期待している自分がいる。

二人を差し置いて自分だけがと思うのに期待している自分がいる。

ほんとは野球を目一杯やりたくて、やれる環境にいけるのではないかという期待している自分がいる。


「まあ、 こういう形ならわかるよな。 喜べ慎二白明高校からスポーツ推薦が来てるぞ! しかも監督じきじきにスカウトに来てくれたんだ。」

「っ!」

「慎二君はっきり言いましょう。 今白明高校では投手が足りません。 それも安定した先発投手がです。 私はあなたのピッチングを見て君は私が求めていた人材だと思いました。 どうでしょうか白明高校に来て甲子園を目指しボールを投げていただけませんか?」


やっぱりだ。

でもいいのだろうか...こんな中途半端か気持ちの俺に推薦なんて来て。

もっとやる気のあるやつはいるはずだ。

そう思うとすぐに行きたいですとは答えられなかった。


「お、俺は...」

「まあ、 すぐとは言いません。 ゆっくり考えて見て何かあればここに連絡を」


風間監督はそういい名刺を俺に渡して応接室から出ていった。


俺と田中先生は風間監督を見送り、徐に田中先生は俺に話かけてきた。


「慎二お前すごいな。 推薦はどうすんだ? 受けるのか?」

「親と相談して決めます。 さすがに一人で決めるのはまずいと思うので」

「それもそうか、 まあゆっくり考えて後悔のない結論を出せよ」

「はい、 ありがとうございます」


そういい家に帰り夜にお父さんが仕事から帰って来るのを待っていた。


∞∞∞***∞∞∞


「ただいま~」

「お帰りなさい。 お父さん少しいいかな?」

「ん? いいぞどうした?」


リビングに向かいお母さんにも話があると話して席についてもらった。


二人と向かい合う形で俺は今日の出来事を話始めた。


「なるほど、 それでお前自身はどうしたいんだ?」


話を聞きお父さんは真剣な目で俺に話してきた。


「正直な話野球を本気でやりたいならいけ。 本気でやる気がないのならいくな。 地元で十分だ。 ただ、本気ならこっちも本気で応援する」

「そうね。 慎二あなたの自由にしなさい。 でも後悔のないようにしないよ」


正直嬉しかった。

和兄、三木也を亡くして俺一人となって辛かったと思うのに、俺まで離れて暮らすかも知れないのに精一杯応援してくれるって言ってくれたことがとても嬉しかった。


「うんわかった。 ゆっくり考えてみて結論を出すよ」

「そうしなさい。 どんな決断をしても私達は全力で応援するからな」

「ありがと。 じゃあ部屋に戻るね」


部屋に戻りベットの上に横になりどうしようか考えていた。


(正直やっていけるか不安があるし、 やる気があるのかと言われるとどうだろうかという所がある。 でも挑戦してみたいなあ...)


「あ~駄目だ! 考えが纏まらない! うじうじ悩んでるならボールでも投げてよ」


庭には壁に貼り付けてある9分割のストライクゾーンのラインの入った板がありそこに投げ込んでいた。


「内角低めストレート!」


軽く準備体操をしたあと、右バッターを意識して投げ込み言葉を発した所に投げるという練習を20球、30球と投げ続けていた。


「ふう。 引退して練習量が減ったけどあんまり体が鈍ってなくてよかったよ」


次で60球目でラストというとこで振りかぶりど真ん中にストレートを投げた後。

『ビキッ!』


右肘に激しい鈍痛を感じ思わず顔をしかめてしまった。

この肘の痛みは聞いたことがあった。


「ははは... まさかな... そんなのやめてくれよ。 兄弟の次は野球かよ ...くそ! 俺から野球までも奪わないでくれよ!」


悲しい叫びに答えてくれる人は誰もいなく慎二は綺麗な月明かりがある天を仰いだ。

用語


白明高校→甲子園最多出場校の名門。多くのプロ野球選手などを輩出してきていて知名度は高い。

近年では名将風間監督のもと甲子園に春夏連続出場校の常連としてさらに有名である。


風間監督→現役では投打共に優秀な選手として甲子園に春夏合わせて4度出場している。

白明高校の監督となってからは自らの信じ、学んだ野球を教えている。

最近は投手の層が薄くなってきたと思い危機感を感じていた所にたまたま見た試合で慎二のピッチングを見てこの子は使えると思いスカウトに来た。

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