小話2
「勇者の資……。 すみません、お忙しいところお呼びしてしまって。 今お時間大丈夫ですか?」
「えっ?」
…………。
…………。
「ごほんっ。 勇者の資格を持つ者よ、よくぞ我が召喚にこたえてくれました。 世界は混沌に包まれて、死の危機にさらされています。 どうか、この世界を救ってください」
「…………どういうこと?」
よかったわ。
どうやら、別の時間軸から呼んでしまったみたいね。
二回も失敗の後始末をお願いするのは、恥ずかしいからちょうどいいわ。
ちょっと小さいけど、将来的にはあんな風になるんだもの、大丈夫よね。
「すべての元凶である、魔王ハデスを打ち滅ぼしてください。 魔王は人間の恨み辛み妬みが限界まで膨れ上がった時にそれを解消するためのシステムでしたが。 意識を持ってしまい暴走しています。このままでは世界が危ないのです」
なんかテンプレになってきたけど、一応一回目だしいいよね。
うん、このまま行こう。
私の威厳を保たなきゃね。
「魔王をたおせばいいの?」
「はい。ただ魔王は強大です。 容易く倒せるような相手ではありません。 私が加護を与えますので力をつけ、仲間を集めてください」
うん、いい感じに進んでる。
この次が肝心ね、たしか魔法は使えると言っていたわね。
ちょっと奮発して用意した『勇者の剣』これでいける!
「加護は何がもらえますか?」
きたきたきたっ!
前回はここで失敗したからね。
いくわよっ!
「あなたには加護として『勇者の剣』を授けます。 この、私の授けた『勇者の剣』を使って魔王ハデスを倒してください」
大事なことなので二回言いました。
「『勇者の剣』はなにができるんですか?」
魔法は使えるみたいだけど、見た感じまだ魔力もそこまで高くは無い。
ここでしっかりアピールできればっ!
「この『勇者の剣』を振るうことで、斬撃を飛ばす事ができます。 さらに、『勇者の剣』を天へ掲げることで雷撃を落とす事ができます。 あなたの魔力ではまだそこまで威力は出ませんが、魔力を鍛えることで威力を発揮するでしょう」
決まった!
これで、この子が世界を旅して起こる、成長物語が見れるわ。
他の人間が召喚できれば簡単に送り込めるのに、ついてないわね。
あとは、送るだけね。
憑依させるとまた突っ込まれるかもしれないし、妥協も必要ね。
「『勇者の剣』を授けます。 どうかこの世界を救ってください」
「質問いいですか?」
ぐっ、だがこの子にまだ力は無いはず。
「なんでしょう?」
「行先をきめることはできるのでしょうか?」
大丈夫。
この質問に対するしゅ、しゅみれーしょんはできている。
「ごめんなさい、送れる場所は一か所しかないの」
これでよしっ!
一番遠いところを設定してあるから、大丈夫なはず。
「最後に魔王の居る座標はわかりますか?」
「ん? 座標? たしか、北緯35度、東経136度だったはずよ」
思わず答えてしまったけど教えても大丈夫よね。
たしか1度ずれるだけでも数十キロは誤差がでるはず。
遠距離から狙撃するだけの魔力もない。
大丈夫よ!
「十分です。送ってください」
「あっあれ? 『勇者の剣』はどうするの?」
「結構です」
「でっでも、どうするの、武器ももってないし。 無いとこまるよ?」
「これがあるので大丈夫です」
「…………なにこれ」
「大陸弾道ミサイルです。すでに座標は入れてあるので、周囲100キロ圏内を焼き尽くす事が出来ます」
「…………」
「安心してください、核弾頭ではないです。 世界に優しい成分でできています」
とある魔王城。
んっ?
「何か飛ん」
また一つ、世界が救われた。